近畿大学研究所見学
マグロの完全養殖は、どのように行われているのでしょうか?
早速見ていきましょう!
完全養殖
完全養殖とは、『 取り組み → 養殖とは』のページでも説明したように、養殖した成魚から採卵した卵をふ化させ、成魚に育てるというサイクルを半永久的に持続させる循環型の養殖のことです。
完全養殖は、天然資源を使用しないため、限られた天然資源を保護し回復させていくことが可能な手法です。 |
クロマグロの完全養殖研究の歴史
クロマグロの養殖プロジェクトは、前代未聞の難しい挑戦でした。 |
大島実験場の立地
大島実験場は、紀伊半島の南端部にあります。海の上にある道路が防波堤の役割を担っており、内湾になっています。そのため、10 mを超えるような巨大な波が来ない限り、台風の影響による被害も受けにくくなっています。水温が高く水質が良いため、マグロの養殖に適しています。
生簀
マグロの生簀には、 |
完全養殖の流れ
卵の回収
水温が25℃に近づくとマグロは産卵すると言われています。大島実験場では、6~8月が産卵のシーズンになります。4、5月に産卵を行う天然のマグロよりもやや遅くなります。生簀の中では、1尾のメスを数尾のオスが追いかけて円を描くように泳ぎながら産卵を行います。メスが放卵し、追いかけるオスが放精するため、水中で受精されます。卵は自然に水面に浮くので、ネットですくい回収するそうです。
幼魚の飼育
仔魚(孵化してヒレが完成するまでの魚の幼生)から幼魚(孵化から約20日後)の
沖出し
陸上水槽から海上の生簀に放養することです。ふ化後1ヶ月を過ぎた7月ごろに行われます。しかしこの工程でも、木・発泡スチロールの誤飲やストレスなどから沖出しした稚魚のうち30%が死んでしまうそうです。
成長とエサ
卵から稚魚、若魚
卵、稚魚、若魚への成長の様子です。 |
成魚
1歳(昨年の7月に沖だし)体重3 kg、体長 50 cm(人間の新生児と同じような大きさ) 一つの生簀の中で約1000匹存在している |
4歳体重70~80 kg、体長1.7 m(人間の成人男性と同じような大きさ) 近畿大学では、3~4歳のマグロをレストランなどに出荷している |
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近畿大学の養殖では、
マグロは、体重の3%くらいを1日で食べます。そのため、マグロの養殖には
近畿大学では、元々アジやイワシの冷凍したものをエサとしていたそうですが、現在は、管理の困難さや食中毒の発生、残餌による水質汚染などの問題から、稚魚を除いて配合飼料をマグロに与えています。
出荷
完全養殖クロマグロは、生まれてから3~4年で出荷されます。 |
生まれた卵から何割が出荷される?
卵から孵化した稚魚の内、約10%が「沖だし」に至ります。稚魚は環境の影響を受けやすく、共食いもするため、稚魚を育てるのはとても難しいそうです。稚魚を育てる工程の成功は、完全養殖の実現に繋がりました。
また、沖だしの工程後でも、木・発泡スチロールの誤飲やストレスなどから、その30%が減ってしまいます。その後も生簀への衝突死や台風などの影響により、少しずつ死んでしまう個体がいるそうです。実は、
最終的に、卵から出荷に至るのは、全体の1~2%だそうです。
マグロ以外の完全養殖
完全養殖が難しい魚で、近畿大学で今取り組んでいる魚には、ニホンウナギ(完全養殖は達成されているが、大量に生産することが難しい)、マアナゴ(資源量が減っているがまだ完全養殖は達成されていない)があるそうです。
ブリ、カンパチは、完全養殖は達成されているものの、養殖産業では野生の稚魚・幼魚の使用が多く、完全養殖に置き換わっていません。
近畿大学のマグロは全身トロ!?
近畿大学の養殖マグロは、 |
先生からのコメント
大島実験場を案内して頂いた近畿大学水産研究所大島実験場の阿川泰夫先生に、今後の持続可能な海についてのご意見をお聞きしました。
限りある水産資源を無駄なく消費し、また適切に養殖で増やしながら利用しなくてはなりません。飼育困難な魚類の養殖は成功しつつあります。しかし、ここ数年の海の状況は楽観視出来ません。これまでに無い高温海水が紀伊半島へ接岸し(稚魚、親魚にも悪影響で、温度によっては死滅します)、過去3年間ウイルスによる病害で多くのアコヤ貝が失われましたが、このような例は近年沢山有ります。 |
マグロクイズ (7)
マグロを県の魚に指定している県はどの県?(答えを選んでクリックしてみよう)
静岡県
不正解!県の魚には指定されていませんが、マグロの漁獲量は日本一です。
青森県
不正解!県の魚には指定されていませんが、大間のマグロが有名です。
和歌山県
正解!大島実験場がある和歌山県は、なんとマグロを県の魚に指定しています。
昭和62年に県民投票で決めたそうです。
参考資料
近畿大学水産研究所
https://www.flku.jp/info/ohsima/index.html
世界初!マグロの完全養殖
出版社:化学同人
著:林宏樹
究極のクロマグロ完全養殖物語
出版社:日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)
著:熊井英水
トコトンやさしい養殖の本
出版社:日刊工業新聞社
編:近畿大学水産研究所
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