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養殖とは

天然資源の増減に影響を受ける漁業と比べて、養殖は安定的に魚を生産することができることから、近年、世界中で盛んに行われています。世界の漁船漁業生産量は1980年代後半以降横ばい傾向となっていますが、養殖業生産量は急激に増加しています(詳しくは、 資源量 → 漁獲量を参照)。


養殖

広辞苑(岩波書店 第七版)によると、養殖とは「魚介・海藻などを生簀や籠・縄・池などを使って人工的に飼育すること。海水養殖ではタイ・ブリなどの魚類、カキ・真珠貝などの貝類、ノリ・ワカメなどの海藻類、クルマエビなどの甲殻類があり、淡水養殖では、コイ・ウナギ・ニジマス・アユなどがある。」と書かれています。

「養殖」というと、海で稚魚を捕まえて成魚に育てる「養殖」が一般的ですが、天然の卵や稚魚に頼らない「完全養殖」や、海で捕まえた幼魚や成魚を一時的に飼って太らせる「畜養」も「養殖」に含まれます。

日本では、マグロの養殖は、稚魚から成魚に育てる養殖が多く、完全養殖は全体の1割くらいです。200~ 800gサイズの天然種苗を 2~3年程度の長期間、30~80kgまで飼育して出荷します。一方、海外では畜養が主流であり、脂の乗っていない20~100kgの成魚を捕まえ、生簀で 2~ 6カ月程度の短期間飼育することで、マグロのトロ部分を増やし、市場価値を高めて出荷します。



完全養殖

養殖の中には「完全養殖」と呼ばれるものがあります。通常の養殖と完全養殖の一番の違いは「養殖される種苗の由来」です。通常の養殖では、天然の幼魚や成魚を自然界の海から捕獲して大きく育てます。一方、完全養殖では、養殖で飼育している成魚が産卵した卵を孵化させ、その人工種苗を育てます。
つまり、養殖された成魚が産卵し、その卵から生まれた稚魚を成魚にする持続可能なサイクルを作ることが完全養殖です。完全養殖では天然の幼魚や成魚を捕獲しないので、天然資源を減少させることなく、安定した魚の生産が可能になります。

マグロ(クロマグロ)の完全養殖は、2002年、近畿大学で初めて成功しました。マグロの完全養殖は、減少が懸念されているマグロ資源に影響を与えずに、マグロの供給を可能にする技術として期待を集めています。

マグロの完全養殖の研究が行われている近畿大学水産研究所大島実験場を見学させていただきました(詳しくは、 取り組み → 近畿大学研究所見学を参照)。



完全養殖の流れ




養殖は、安定的な魚の供給を可能にするとともに、天然資源を保護することもできる方法です。完全養殖では、天然資源に影響を与えずに魚を生産することができ、稚魚から成魚に成長させる養殖も、自然界よりも高い割合で稚魚を成魚まで育てることができるため天然資源の保護に役立っている可能性があります。どのような種苗を用いて養殖したのかにより天然資源への影響が異なるので、消費者は、養殖の方法にも関心を持って養殖魚を購入することが必要だと考えます。



参考資料

マグロの大研究
  出版社:PHP研究所
  著:河野博

トコトンやさしい養殖の本
  出版社:日刊工業新聞社
  編:近畿大学水産研究所





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