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マルハニチロ株式会社

マルハニチロ株式会社様に、海洋資源の保護について、メールにて質問させて頂きました。(回答日:2022年11月4日)

マルハニチロでは、2006年にMSC認証商品の取り扱いに向けた取り組みを開始し、現在ではホタテ、オーストラリアタイガー(エビ)、サバ、ベニザケ、スケソウダラなどを取り扱っています(2022年4月現在)。


写真は、マルハニチロのMSC認証のついた商品


Q1. 「海洋資源の保護」について、積極的に取り組んでいるのはどうしてですか?

企業価値を高め、サステナブルな経営を実践するためには、水産に限らず、資源を永続的に守り続けることが重要です。なかでも、海とともに生きてきた我々にとって、魚が獲れなくなることが最大の危機と捉えているからです。


Q2.現在、MSC認証商品として、何種類の商品がありますか?

マルハニチロでは、2006年にMSC認証商品の取り扱いに向けた取り組みを開始し、現在ではホタテ、オーストラリアタイガー (エビ)、ベニザケ、スケソウダラなどを取り扱っています(2022年4月現在)。2019年度実績では、グループ全体で扱ったMSC漁業認証でとられた水産物は40~50種程度、重量換算では約82万トンであり、これは同年当社グループが取扱った天然水産物量全体(約141万トン)の59%に該当します。最新の情報については、現在調査中です。

マルハニチロのMSC「海のエコラベル」を表示した家庭用冷凍食品などの取扱数量は、2021年度約1,195トンとなりました。


Q3.マグロに関する取り組みについて教えてください。

マルハニチロは2010年に民間企業として初めて太平洋クロマグロの完全養殖に成功し、徐々に流通量が増え、市場に出回るようになりました。
完全養殖とは、天然資源を利用せずに魚類を養殖(生産)する手法です。一般的には、クロマグロ養殖では幼魚を採捕し、​養殖場にて成魚まで育てて出荷します。​完全養殖では、​自分たちの養殖場で育てたクロマグロから採卵・孵化を行う事により、​養殖場内で生産&出荷のサイクルが完結する為、​「持続可能な水産業」の実現に向けた重要な取り組みと言えます。

非常に困難とされていた「クロマグロの完全養殖」ですが、​マルハニチロはいち早くこの課題にチャレンジし、​様々な壁を乗り越えながら完全養殖を​達成し、かつ商業出荷が可能なレベルまで引き上げました。​
また2021年度は570トン出荷し、2021年度よりさらなる生産効率化を図るべく、一時的に年間出荷量を縮小させ、生産技術開発に一層注注力する方針で進めています。


Q4. MSC認証商品について、漁業や生産のどのような点がMSC認証取得につながったと思いますか。

マルハニチロは、流通段階のMSC CoC認証を取得しています。2006年12月に旧ニチロで認証を取得して以来、認証規格の要件に適合した管理を継続し、MSC認証の製品の取扱いを拡大してきたことが、ライトツナフレークのMSC認証の製品化に繋がりました。


Q5. 海洋資源保護に対する取り組みやMSC認証商品等に関して、苦労している点等はありますか。

海洋資源保全を行うには、保全活動を推進すべき対象魚を明確にする必要があり、取扱い水産物の資源量の確認を行う必要があります。当社は2019年に取扱い水産物の資源量調査を行いましたが、天然水産物のうち、データが不十分で資源量が確認できないものが18%ありました。資源量を明らかにするためのデータ収集は簡単ではありませんが、今年度より「2030年までに資源量調査率100%」という目標を掲げ、海洋資源保護に対する取組みを推進しています。

MSC認証の課題の1つは、認証の知名度の低さです。少しずつ知名度が上がってきてはいますが、市場への浸透はまだまだスタートラインであると感じています。こうした知名度の低さに加え、認証品は非認証製品より価格が高いため、消費者にはなかなか購入しづらいものになっていると考えています。


Q6. 海洋資源保護に対する取り組みやMSC認証商品等への消費者の反響はありますか。

MSC(海洋管理協議会)が2020年1月から3月にかけて実施した、消費者を対象とする調査では、日本でのMSC「海のエコラベル」の認知度は15%で、2年前より4ポイント減ってしまいましたが、MSC「海のエコラベル」が海の持続可能性や認証に関するものだと理解している人の割合は28%から36%にアップし、日本での「海のエコラベル」の認知度は上昇しています。

弊社では、親子向け料理教室を実施したり、小中高校等の企業訪問を受け入れていますが、その時にはMSC認証、ASC認証について必ず伝えています。小中高校ではSDGsが指導要領に入るようになり、環境配慮型の商品がこれから先、少しずつ選択肢として上がるようになっていくのではと期待しています。


Q7. サステナブルな商品について、今後の展望や課題について教えてください。

⑴ マルハニチログループでは、MSC・ASC認証の水産物の取扱いを積極的に進めておりMSC「海のエコラベル」やASCロゴを表示した製品などを取扱っています。冷凍食品「Ocean Blue 白身&タルタルソース」は、マルハニチロが展開する「MSC認証」商品の1つです。2018年3月から全国発売しています。原料にアラスカ沖で漁獲された「MSC認証」を取得している漁業で漁獲されたスケトウダラを使用しています。国内冷凍食品メーカーが自社ブランドで、国内生産による、MSC「海のエコラベル」付き家庭用調理冷凍食品を発売したのは、マルハニチロが初となります。また、マルハニチロではMSC「海のエコラベル」等をより普及させることを狙いのひとつとして、認証水産物を使った料理教室の実施をしています。消費者がもっと積極的にサステナブルな商品を選ぶ世の中になるよう、企業側からも活動を広げていきます。


⑵ サーモンの陸上養殖について、他企業と一緒にチャレンジを開始しました。陸上養殖は採算性・エネルギーコスト・水質管理等の観点で難しい領域ですが、当社だけではなく、多岐にわたる事業を手掛ける三菱商事(株)と協力することで、サーモンの持続可能で安定的かつ効率的な生産体制の構築をめざしてまいります。2025 年度の稼働開始、2027年度の初出荷をめざします。


⑶ 魚類の筋肉細胞の培養技術の確立をめざし、細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー株式会社と水産練り製品業界でトップシェアを誇る一正蒲鉾株式会社の3社で、共同研究開発を推進しています。本取組みにより将来的に当社は、細胞培養技術によって作られた食品を消費者の皆さまの手の届く価格帯で提供することで、商業化生産を世界最速で実現し、持続可能な次世代の魚タンパクを提供することをめざしています。



マルハニチロ株式会社様、ご協力ありがとうございました。
MSC認証の獲得商品の販売や、マグロの完全養殖など海洋資源の保護に関する活動を積極的に行っていて、素晴らしいと思いました。



参考資料

マルハニチロ株式会社HP
  https://www.maruha-nichiro.co.jp/







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