【印刷技術】
今では紙の原料といえば木材パルプですが、昔は亜麻布や木綿布のボロが使われていました。
やがて18世紀に入り本が広く読まれるようになり、新聞の刊行や週刊・月刊の雑誌の出版などにより紙の需要は増加したのですが、それを賄う量のボロを供給できなかったので、人々にボロに代わる製紙材料を求めました。
ボロ以外の原料を使用した紙を初めて製品化したのはドイツのF.G.ケラーでした。ケラーが発明したのは砕木パルプというもので、文字通り木材を粉々に砕いて作っていました。初めの砕木機は手動でしたが、のちに水力、次に機械力(蒸気機関など)と移り変わっていきました。また、1867年にはアメリカの化学者B.C.テイルマンにより化学反応を利用した亜硫酸パルプも発明されました。
この2つの技術は現在でも使われており、砕木パルプを使用した物が「機械的製造法」、亜硫酸パルプを使用したものを「科学的製造法」にあたります。木材パルプは
- 豊富にあり、安価に加工でき、再生可能資源である点
- 季節の影響をあまり受けない点
- 集荷、輸送、貯蔵が容易である点
- 紙の主成分であるセルロース(繊維素)を多量に含んでいて、効率がいい点
- 比較的簡単な方法でつくることができ、大量にしかも良質の紙を生産できる点
- 再利用可能な点
など多くの利点があり、現在でも使用されています。
また、19世紀の終わりには紙の製造に欠かせない「漉き」の技術が実用化されており、これと組み合わさることで製紙業は近代的な大工業となりえたのです。