3つ目は千利休、つまり安土桃山時代です。
千利休は織田信長や豊臣秀吉に仕えた茶人です。彼は茶道においてのおもてなしの精神を「利休七則」にまとめました。その中のいくつかを紹介します。
1.茶は服のように点て
これは相手が飲みやすいように適度な温度と量に調整する、という意味です。つまり、自分の求める茶ではなく、相手の状態によって薄めたり、冷ましたり、お菓子を食べる速度に合わせてお茶を点てたりするということです。
これに関して有名なおもてなしのエピソードに石田三成の「三椀の才」という「伝説のおもてなし」と称されるものがあります。
当時、長浜城城主であった羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が鷹狩りをしている際に、領地内にある観音寺に休憩されに行きました。その寺の小姓であった三成は、秀吉が汗だくになっているのを見て飲み物を用意しました。
まず1杯目は大きな器にたっぷり白湯をいれて出しました。
2杯目を要求されるとは、1杯目よりも少し熱いお湯を少し小さな器に入れて出しました。
3杯目を要求されると今度は、熱いお湯を小さな器に入れて出しました。
この三成の気のきく、相手を思いやる心に感心した秀吉は、三成を家来にすることにしました。
2.炭は湯の沸くように置き
これは段取りでは要となるポイントを押さえる、という意味です。つまり、どんなに優れた道具を揃えたとしても、お湯がちゃんと沸かなければお茶を出すことができません。そのため、湯を沸かすというのは、茶を点てるうえでとても重要である要素です。どのように炭を置けば良いお湯を沸かすことができるかを考え、入念に前もって準備することが大切だ、ということです。したがって、おもてなしする場合、準備することが大切であり、重要なポイントをしっかり押さえた上で実際にもてなすことが重要であるということです。
3.冬は暖に夏は涼しく
これは心地よさを作る、という意味です。エアコンやストーブがないこの時代、客が快適に感じる空間を作り出すことはとても難しいことでした。しかし、そんな中でどれだけ快適に過ごしていただくかが大切だ、ということです。相手のことを考えて場の環境を整えるのはおもてなしにおいても大切だと思います。
4.相客に心せよ
これはその場に居合わせた人全員が心地よく過ごせるように気を配る、という意味です。つまり、一部の客だけでなく、その茶席の場にいる全員に気を配り、客にその茶席が素晴らしいものだったと思ってもらえるように対応することが大切だ、ということです。
copyright © 2015 Heart of Hospitality All Rights Reserved.