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- ケルト民族とアイルランドの伝統音楽とは -
ケルト民族とは、紀元前1200年頃から、ヨーロッパ全体に広く分布していた民族のことだ。ケルト人の部族は、共通の言葉・習慣・宗教を持っていたが、それぞれがまとまることはなかった。また、経済の土台は牧畜と農耕にあり、都市は発達しなかった。起源前3世紀頃からローマ帝国によって西へ西へと追われ、アイルランド島に追いやられた。彼らが、現在のアイルランド人のルーツである。
ケルトの人々は自然を崇拝し、魂の不滅を信じていた。多くの伝説や物語が生まれたことからもわかる。ケルトの神話には大地の神や森の精、太陽の神、妖精の悪魔、守護神が数多く登場する。現在のアイルランドはキリスト教カトリックを信じる国である。4世紀頃にキリスト教が広まっていった。しかし、元々は日本人と同じように様々な神々を崇めていて、その考え方はケルト伝説と共にアイルランドに残っている。
アイルランド伝統音楽には、自然を愛する民族性や、隣国の英国から受けた支配、ポテト飢饉によるアメリカへの大量移民など、彼らの複雑な歴史の中で育まれてきたのである。
アイルランド伝統音楽(ケルティックミュージック)には二つのスタイルがある。声で歌うやり方(ヴォーカル曲)と、楽器のみで演奏するやり方(インステゥルメンタル)である。
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〜 ヴォーカル曲 〜
伝統歌はシャーン・ノスと呼ばれる古式唱法で歌われる。本来の伝統歌は無伴奏で歌うことが多いが、伴奏を伴う場合もある。歌詞は英語で書かれていることが多いが、アイルランド語で歌われることもある。
実際のところ、アイルランド国内では英語が主に話されている。ここでの、「アイルランド語」とは、古代のケルト語の流れを汲むゲール語のことである。このゲール語が話されている地域はアイルランド島の西端や北端や離島だけになってしまっている。英語に比べ抑揚が少ないことが特徴だ。
太古の英雄物語、移民の悲劇、英国支配に対する反抗歌などが存在する。
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〜 インストゥルメンタル(楽器のみ) 〜
アイルランドはヨーロッパ大陸から離れているため、西洋のクラシック音楽の影響を受けることもなく、アイルランド島独自のリズムやメロディが発展した。器楽曲の主要なものは「ジグ」や「リール」と呼ばれるダンス曲だ。にぎやかな演奏の中で、人々は踊りを楽しんできた。
♪ アイルランド伝統音楽を聴いてみよう
1 曲名 Reel in A
( アイルランドの大地を想像して作曲してみました。どうぞ聴いてください。)
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BY THE WAY 〜映画「タイタニック」に出てくるアイルランド音楽〜
映画「タイタニック」の中には、アイルランド音楽が出てきます。例えば、ポルカという種類の踊りの音楽で、「John Ryan's」という曲が演奏されます。愉快な曲が流れる中で、ローズとジャックが素朴な会話と楽しげな踊りを楽しむシーンが印象的です。もしも、「タイタニック」を観る機会がありましたら、是非アイルランドの音楽が使われていることに注意を払ってみてください。
さて、タイタニック号にはたくさんのアイルランド移民が乗っていました。アイルランドからの移民の多くがアメリカ合衆国を目指しました。この映画に登場する多くの労働者の姿はアイルランドから希望を求めてアメリカに移民しようとする人々の波なのです。
現在のアメリカ社会の中にはアイルランド系の人々がたくさん存在します。テキサス州ダラスで暗殺されたことが有名なジョン・F・ケネディーもアイルランド系の人です。彼らの多くがカトリックを信じています。アメリカの実権を握っているWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)とは違った集団がアイルランド系アメリカ人と言えます。アメリカに存在するマイノリティ集団としてはアフリカ系、ヒスパニック、オリエンタル(韓国、日本、中国)が存在します。
→アフリカ系アメリカ人の歴史
複数の種類の楽器が同じメロディを奏でる。テンポや曲調によってアイルランド伝統音楽といっても何種類もありますが、ポルカ、ジグ、リール、エアなどが特に知られている。
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アイルランド伝統音楽を聴いてみよう 2 曲名 JohnRhan's
( 映画「タイタニック」の中でも、アイルランド移民が船内で演奏しています。) |
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使われる楽器は、フィドル(ヴァイオリン)、ティン・ホイッスル(ブリキ製の縦笛)、イーリアン・パイプ(アイルランドのバグパイプ)、コンサーティーナ(アコーディオンの一種)などだ。決まったメロディを何度も繰り返し、色々な楽器が重なり合う。また、二つ以上の曲を連続して同じテンポで演奏したりもする。リズムを作る打楽器が、バゥロンです。これは、大きなタンバリンのような太鼓で、ヤギの皮が張られる。他には、スプーンズというスプーンを二つ一緒に持ち、それらをたたき合わせることで鳴らす楽器もある。このように、いわゆるクラシック音楽と違って一般の庶民、特にあまり豊かではない人々によって演奏されてきたアイリッシュ伝統音楽は、様々な特徴的な楽器が使われることがわかる。
→ ファレルさんによるティン・ホイッスルの説明
(映像)
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イラスト <
バグパイプ |
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フィドル (バイオリン) |
> イラスト <
フルート |
リズムを刻む楽器としてアコースティックギターやバンジョー、ブズーキという弦楽器が使われることもある。また、ピアノが演奏に参加することもあるが、伝統的なアイルランド音楽にピアノは合わないと考える人も多い。
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〜 ダンス 〜
アイルランド音楽と共に踊られるのがステップ・ダンスだ。このダンスは上半身を動かさず、硬い靴底で床を早いリズムに合わせて踏み鳴らす。ステップ・ダンスはアイルランド農民の唯一の娯楽であったと言われている。上半身は動かさないスタイルは、アイルランドを支配していた英国人に、窓から覗かれても分からないようにしたため、このスタイルになったとも言われています。
For More Information...
アイルランドのダンスについてもって知りたい方の為に、下記のような本やビデオを紹介します。
アイリッシュ・ダンスへの招待
著者 山下 理恵子 / 守安 功
発行所 株式会社音楽之友社
ISBN4-276-25081-1
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アイルランドの紹介から始まるこの本は、アイリッシュ・ダンスについて楽しみやすく書かれています。
日本国内でアイリッシュ・ダンスの愛好家になる事など、国内では最高の入門書でしょう。
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IRISH DANCE MADE EASY
REGO IRISH RECORDS & TAPES, INC. |
アイルランドで著名なインストラクターがビデオでアイッシュ・ダンスを教えてくる作品です。
簡単なステップを学ぶことができます。
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〜 他の音楽への影響 〜
アイルランド系移民の多くがアメリカ合衆国に渡った。彼らは英語を話せる者も少なく社会階層の底辺に置かれた。厳しい生活の中で唯一の楽しみとなっていた音楽は、故国への想いを歌った歌などがある。伝統音楽のギターやフィドル以外にバンジョーが加わりカントリー音楽の成立過程に大きな影響を与えた。
また、アイルランド系移民が持ち込んだ音楽が変化した「カントリーミュージック」と黒人奴隷達の音楽「ブルース」はお互いに影響をし合いながら発展していった。彼らの境遇はお互いに非WAPSとして苦しいものだった。特に、奴隷として人間として扱われていなかった黒人の生活はひどかった。これらの虐げられた人々の音楽が現在のアメリカや全世界の音楽に影響を与えていることは注目に値するだろう。
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