本稿では、タール色素の歴史や、危険性がどのようにして明らかになって使用が制限されるようになったかを説明します。
古来、食品に色を付けるための着色料としては天然の動植物、あるいは天然の鉱物を由来とする色素が多く用いられていました。1850年頃になると化学合成染料であるタール色素が登場します。タール色素には色が付きやすい、色が見やすい・鮮やかである、均一に着色できる、安定している、コストがあまりかからないという特徴があり、その利便性が評価され急速に利用が広まりました。日本においては、1964年に24種類のタール系色素が認可されているなど、広く普及した着色料でした。しかしタール系色素の発がん性が指摘されるようになり、アメリカをはじめとするさまざまな国でタール系色素の使用が制限され始めたことを受け、日本でも1965年に赤色1,101号が、1966年に赤色4,5号、橙色1,2号、黄色1,2,3号が、1967~72年には緑色1,2号、赤色103号、紫色1号の使用が禁止されました。現在では12種類が認可されるにとどまっています。
そもそもタール色素は石油の精製過程で得られるものであり、それだけを聞くとすべてのタール色素が危険であるかに思えると思います。実際に危険と判断されたタール色素は前述したように使用が禁止されていますが、認可されているものに関しては、現状は安心して摂取してよいものと考えられます。注意しないといけないのは、タール色素の安全性が完全に保証されているわけではないということです
日本で認可されているタール色素の中には、海外では安全性が不透明であるとして、使用できないものも含まれています。食品添加物による健康被害は綿で首を絞めるようにゆっくりと影響を与えるものも存在します。タール色素が普及し、日常的に摂取してきた人の健康状態から、本当に健康被害がないかを検査する必要もあるといえそうです。