労働契約法

制定の背景

労働契約法は労働契約についての基本的な規則を明確に定めていて、個別労働紛争を未然に防ぎ、労働者の保護・個別の労働関係の安定に繋げることを目的として2008年に施行されました。近年、日本では、労働紛争の対象が集団的なものから個別の労働関係へと移行しています。個別の労働関係におけるトラブルが多い要因として、日本の労働市場では就業形態が多様化し、成果主義が浸透してきていることが挙げられると考えられています。

労働契約法の改正

2012年8月10日と2013年4月1日の2回にわたり、主に有期契約労働者(派遣社員、パートタイマー、アルバイトなど)の契約について内容の改正が行われました。当時、有期契約労働者の約3割が計5年以上にわたって有期労働契約を繰り返し更新しているとされていました。そのような状況下で、雇止めの不安の解消・有期労働契約労働者への不当な労働条件の是正を行い、労働者が安心して働ける環境を整備することを目的として改正が行われました。

しかし、この改正は2015年に行われた労働派遣法改正とともに、使用者(企業側)による一方的な契約の破棄(雇止め)が行われることが懸念され、実際に雇止めが発生した事例も確認されました。どちらの法律も2018年が最初の対象年となったため、この問題は「2018年問題」と呼ばれることがあります。

※有期労働契約

1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のこと

主な改正内容

無期労働契約への転換

2013年4月1日以降に有期労働契約を更新し、さらに契約期間が通算5年を超えた場合は、労働者が企業側に無期労働契約への転換を申し出ることが可能になりました。つまり、2018年4月1日以降労働者は無期労働契約に契約を変更することができます。

「2018年問題」では、企業側が人件費などの増大を避けるために労働者側からの無期労働契約への転換の申し入れを受理せず、雇止めを行ったことが問題視されました。

「雇止め法理」の法定化

有期労働契約において、使用者(企業側)が契約の更新を拒否した際に契約期間が満了となり雇用が打ち切られることを「雇止め」と呼びます。改正以前から、労働者の立場を守るという視点に基づき、最高裁判所判例が一定の条件下における雇止めを無効とする判例上のルール(雇止め法理)を定めていました。改正では雇止め法理の適用範囲や内容は変更せず、雇止め法理を明確に労働契約法の条文に記すという変更点がありました。

不合理な労働条件の禁止

同じ使用者の下で労働契約を結んでいる有期契約労働者と無期契約労働者間で、契約期間に制限があるが故の不合理な労働条件の差異を生じさせることを禁じています。対象となる具体的な条件として、災害補償の有無・教育訓練・福利厚生などが挙げられます。

労働契約法と労働基準法

労働基準法は「強行法規」に値するため、違反行為に対しては何らかの罰則が適用されます。しかし労働契約法は「任意法規」であるため罰則はなく、労使トラブルなどは労働審判を介して解決にあたることを定めています。

まとめ

個別労働紛争を未然に防ぎ、労働者の保護・個別の労働関係の安定に繋げることを目的としている。
2012・13年に雇止めの不安の解消・有期労働契約労働者への不当な労働条件の是正を目的とした改正が行われた。