解約

解約の種類

労働者による労働契約の一方的な解約」を辞職(退職)と呼びます。奴隷的拘束の禁止(日本国憲法第18条)や職業選択の自由(日本国憲法第22条)により憲法上の人権が保障されているため、「退職の自由は労働者の自由である」と民法において明記されています。

これに対して、労働者と使用者の双方の合意を経て労働契約を解約すること合意解約使用者による一方的な解約解雇に当たります。

辞職(退職)と合意解約の大きな違いとして、労働者が解約したいという意向を撤回できるか否かという点が挙げられます。前者は使用者に解約の意思が伝達されてしまうと撤回ができず、後者は使用者に解約の意思が伝わっても使用者側が承諾しない限り退職はできません

また、解雇は使用者が自由にできるわけではなく、誰もが納得できる理由が必要とされます。労働者の落ち度の内容、企業が被った損害の重大性、労働者の悪意の有無、やむを得ない事情があったのか否かなどを考慮して、最終的には裁判所が解雇が正当なものであるか判断します。

また、特定の事例においては解雇が法律で禁止されています。

労働基準法
・業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
・産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
・労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

労働組合法
・労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

男女雇用機会均等法
・労働者の性別を理由とする解雇
・女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇

育児・介護休業法
・労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

一方、雇用期間が定められていない契約をした正社員の場合は正社員側から解約を申し入れることも、使用者(企業側)が正社員を解約することもできるとされています。使用者が正社員を解約する(解雇する)場合は、解約前に2週間の予告期間を置くことで「解約の自由」が認められています。

よって、特に正社員に対する解約(解雇)の場合は、条件付きで使用者にも「解約の自由」が認められています。しかし、解雇は使用者より弱い立場にある労働者に与える経済的・社会的な打撃が大きいため、実際は法令による規定が定められ修正がなされています。

有期雇用契約について

アルバイト・パートなどの有期雇用契約については契約期間中の契約の拘束力を尊重するべきとされているため、基本的に契約期間中は使用者が労働者を解雇することはできません

ただし、労働者本人の病気賃金不払い家族の健康状態就業環境パワハラなどが存在した際は「やむを得ない事由」に該当すると認められ、直ちに解約することができます。

また、有期雇用契約については契約期間を過ぎると自動的に労働契約が終了します。しかし、3回以上契約が更新されている、あるいは1年以上継続勤務している労働者に対して契約を更新しない場合、使用者は労働者に対して30日前までの解約の予告が義務付けられています。

労働基準法と解約

労働基準法第15条では「予め使用者によって提示された労働条件が実際の労働環境と異なる場合、労働者は即時に契約を解約(辞職)できる」と定められています。

そのため、労働条件と実情が異なる場合、労働基準法第15条は民法627条の法的拘束力を無効化することができます。例えば、企業側が事前に提示した金額より低い賃金しか支払わない・勤務時間が不当に長いなどの場合は即座に退職することが可能となります。

まとめ

労働者による労働契約の一方的な解約を辞職(退職)と呼ぶ。
使用者による労働契約の一方的な解約を解雇と呼ぶ
特定の事例においては解雇が法律で禁じられている。
労働者と使用者の双方の合意を経て労働契約を解約することを合意解約と呼ぶ