ベラルーシの政治事情
まず初めに、ベラルーシとは、リトアニア、ポーランド、ウクライナ、ロシアなどに囲まれたヨーロッパの国です。この国は大統領制を用いた共和国という肩書きになっていますが、実際は「ヨーロッパ最後の独裁国家」と呼ばれるなど、現職のルカシェンコ大統領による政治体制に批判が集まっています。このページでは、そんなベラルーシの現状について触れていきます。
ルカシェンコ大統領は、1994年に大統領選に初当選し、以後5回の当選を重ね、25年以上たった今でも政権を握っています。オバマ前大統領やEUなど、世界各地から批判が集まる中、ルカシェンコ氏は自身の正当性を主張し続け、権力維持に尽力しています。
しかし、2020年8月9日に行われた大統領選挙では、ルカシェンコ氏が80.08%の得票率で当選し、対抗馬のスベトラーナ・ティハノフスカヤの10.09%に大差をつけて圧勝したことについて、不正選挙を訴え住民の反乱が始まりました。わずか2日後の8月11日に、ベラルーシの首都ミンスクにて抗議デモが開始し、16日には総勢約20万人を数える大規模デモに進展したとロイター通信が発信しています。このデモでは死者も発生し、数千人もの抗議者が逮捕されました。また、選挙に敗れたティハノフスカヤ氏は、政権に反する行動を行ったとしてリトアニアに事実上の国外追放を受けました。
政権側の治安当局による制圧によって徐々にデモの規模と頻度は低下していきますが、今年夏に再びベラルーシは注目を集めるイベントが起こりました。東京オリンピックに出場したベラルーシ代表のチマノウスカヤ選手が、大会終了後にポーランドに亡命しました。チマノウスカヤ選手は、コーチの指導に対する愚痴をSNS上で投稿したことにより、政府から帰国を命令され、身の危険を感じたため亡命したと主張しています。この行動に対してルカシェンコ氏は、記者会見でIOCに推薦を受けた反政府系の選手を出場させたところ、結果を出せなかったとして外国の政治思想を批判し、自身の正当性を訴えました。
この記者会見では、ルカシェンコ大統領は8時間にわたって自身の正当性を主張し続け、外国の内政干渉を批判しました。一見すると、彼の主張にも筋が通っているように見えますが、ルカシェンコ氏は政府への抗議デモについて、国の方針に反する者は許さない、また言論の自由によってこのような抗議デモが発生したと述べています。これはすなわち、民主主義の否定です。いかなる立場においても、各個人の主張が尊重されるという条件のもとにはじめて民主主義が成立するにもかかわらず、言論弾圧を明言するルカシェンコ政権の元にある現在のベラルーシは、民主主義国家とは言えません。そのような国が実施する大統領選挙の結果など、信憑性が無いのは当然のことです。本当にルカシェンコ氏が民主国家を目指しているのであれば、言論弾圧を停止し、反政府派の意見を真摯に受け止めるのが筋ではないでしょうか。このままでは、独裁政治と言わざるを得ません。
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