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漁獲制限による資源量の回復

石油や天然ガスなど資源は、普通、使えばなくなります。
しかし生物は子を産んで増えることができるので、生物資源は消費量を適切に保てば、持続的に利用することができるはずです。
ここでは、ミナミマグロを例に、漁獲制限の取り組みと資源量の回復の現状について考えてみましょう。



ミナミマグロ

ミナミマグロは、南半球の南緯50~30度付近の冷たい海に分布しているマグロです。クロマグロやタイセイヨウマグロと同じくトロが多いため、市場では高級品として扱われます。その需要を満たすため、海から多くのミナミマグロが獲られました。その結果、1950年代後半には、世界で年間8万トン以上の漁獲がありましたが、その後、急速に漁獲量が減少し、1980年代半ばには、保存管理措置を必要とする水準にあると国際的に認識されるようになりました (図)。その後もミナミマグロの資源量の減少は続き、1996年には、IUCNによって、CR (近絶滅種) に指定されました。

みなみまぐろ保存委員会 (CCSBT)

1985年、日本、オーストラリア、ニュージーランドの3か国は、ミナミマグロの資源保護を目的として、漁獲量を制限する取り組みを開始しました。この3か国の取り組みは、1994年に「みなみまぐろの保存のための条約」という形に拡大し、その事務局として、「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」がオーストラリアの首都キャンベラに設置されました。CCSBTは、その後加盟国を徐々に増やし、2022年時点では、8つの国と地域が加盟しています。
CCSBTは、ミナミマグロの資源量の調査と資源量に応じた漁獲枠を加盟国に割り当てることで、ミナミマグロの持続可能な水産資源としての利用を目指しています。
CCSBTについては、『 取り組み → 国際機関』で再び説明します。



ミナミマグロの資源量の回復

CCSBTによる漁獲割り当てによる漁獲制限が始まって以降、ミナミマグロの資源量の減少傾向には歯止めがかかりました。一方で、ミナミマグロの資源量については、まだまだ1980年代以前のレベルには達していないと思われます(図)。しかし、卵を産めるサイズの親魚 (産卵親魚) の個体数の増加が確認されています (図右上)。卵を産める親魚数の増加傾向を踏まえると、今後、ミナミマグロ全体の数も増加傾向に進むと期待されます。このため、最新の2021年のIUCNのレッドブックでは、CR (近絶滅種) からEN (絶滅危惧種) へと絶滅の危険性が低くなったと評価されました。




図. ミナミマグロの漁獲量及び産卵親魚指数の推移と資源量の回復


CCSBTによる国際的なルールの規制によって、ミナミマグロの減少傾向が抑えられ、漁獲量の影響の大きさを感じました。
また、絶滅の危惧の度合いは、親魚となる魚の数も判断材料になっていると知り、感心しました。



マグロクイズ (6)


ミナミマグロの絶滅の危険性が下がったと評価された理由は?(答えを選んでクリックしてみよう)

資源量が1950年代の水準に回復したから 不正解!

資源量が1950年代の水準に戻るまでには、もうしばらく時間が必要なようです。
卵を産める成魚の数が増えているから 正解!

卵を産める成魚が増えて子魚もふえることで、今後資源量全体が増えることが期待されています。
獲るのをやめたから 不正解!

漁獲量枠のルールを守ることで、継続して利用されています。


参考資料

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)
  https://www.ccsbt.org/ja

水産庁・国立研究開発法人 水産研究・教育機構「令和3年度国際漁業資源の現状」
  https://kokushi.fra.go.jp/index-2.html





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