放射線の種類


一口に放射線といっても、さまざまな種類があります。
このサイトでは、一般的に知られているα線β線γ線中性子線の4種類を紹介します。
  

α線


α線は高速で飛ぶ「α粒子」の流れです。

陽子2個と中性子2個によって構成される粒子α粒子と言います。
α粒子には陽子が2個も含まれているのでα線は強いプラスの電気を帯びています。
そのため、α線は周囲の元素が持つ電子を引き離し、陰イオンに変える力があります。
つまり、α線は強い電離作用を持っているのです。(詳しくは『放射線の特性』へ)

α線は原子が「α崩壊」を起こしたときに放出されます。 (詳しくは『崩壊』へ)

また、α線の透過作用は低く、紙1枚で遮断することができます。
これは、α粒子自体が大きい粒子(陽子2個と中性子2個)なので、
物質の原子の隙間を通り抜けることができないからです。
そのため、外からα線を浴びても皮膚で守られるので人体に害はありません。
しかしα線は電離作用が強いため、α線を放出する物質を体内に取り込むと、
人体に強い影響を及ぼします。

α線を出すものの例としては、ウランやプルトニウム241以外のプルトニウムなどがあります。


  

β線


β線は高速で飛ぶ電子の流れです。
不安定な原子核の中で粒子に変化が起こり、高速の電子が飛び出したものです。
(詳しくは『崩壊』へ)

高速の電子の流れなので、β線はマイナスの電気を持つと同時に電離作用を持っています。
しかも、β線の透過作用はα線とγ線の中間くらいで、簡単に体内に侵入することができます。
つまり、β線は体内からでも体外からでも人体に影響を与えられるのです。
β線はアルミニウムなどの薄い金属板や、1cmほどのプラスチック板で遮蔽することができます。
(詳しくは『放射線の特性』へ)

β線を出すものとしては、ストロンチウム90やセシウム137などがあります。

ちなみに、人工的に電子を加速させてつくったβ線のことを「電子線」といいます。


  

γ線とX線


γ線は非常に波長が短い(エネルギーの大きい)電磁波です。
原子核は通常安定な存在ですが、余分にエネルギーを持つと不安定な状態になります。
この原子核は安定な状態になるために余分なエネルギーを原子核の外に放出します。
この時に放出される高エネルギーの波がγ線です。

γ線は透過作用が高く、コンクリートや鉛などの板でなければ遮断することはできません。
そのため、γ線を浴びると体の奥深くまで到達してしまいます。

病院などでよく聞くX線ですが、これはγ線とほぼ同じ波長の電磁波です。
この二つの違いは発生の仕方だけで、電磁波としてはX線=γ線だといえます。

  

中性子線


中性子線は高速で飛ぶ中性子の流れのことです。
原子炉の中でウラン燃料などが核分裂した際に放出されるなど、人工的なものから発生します。

中性子は電気的に中性なので中性子線は周囲の電気エネルギーに影響を受けません。
そのため中性子線の透過作用は非常に強く、遮断するのは難しいです。

中性子線のエネルギーを吸収するには、中性子と同じくらいの質量の物と衝突させる必要があります。
つまり、軽い原子核ほど中性子線を遮りやすいのです。
一番軽い原子核は水素の原子核で、陽子1個で構成されます。
そのため、水素や水素イオンを持つ物質ほど、中性子線を遮るのに有効です。
例として水やコンクリートなどがあげられます。
また中性子線は、当たった原子を放射性同位体に変えてしまうという性質があります。
透過作用が強く特殊な性質を持つ中性子線は危険ですが、反面、その性質を活かして様々なところで利用されてもいます。