介護の問題点


日本では長寿高齢化が進み、現在では4人に一人が高齢者という超高齢社会となりました。
介護者に対する被介護者の人手が不足していることは言うまでもありません。
ここで介護における一般的な問題を紹介します。

介 護保険制度

2000年に介護保険法施行されると同時に、介護保険制度が開始されました。介護サービスが身近のものとなりましたが、 その一方で

  • 介護費用の増大
  • 利用者負担の不均等
  • 介護士の負担の増大や介護の質の悪化
といった問題に直面しています。

さらに、高齢者の尊厳の問題という観点からも、 身体的、精神的な自立を促していく必要があります。

精神的な自立とは、 高齢者が自分自身で健康づくりに取り組み、自分の能力を活かして積極的に社会に参加できることです。

どのように介護士の負担を 軽減していくか、高齢者の尊厳を維持しつつ介護サービスをおこなっていくかが高齢者介護の課題となります。



施 設介護か?自宅介護か?

介護度の目安として要介護と要支援といった基準が設けられています。(表1)
要介護認定の申請を行えば、この介護度合いに基づいてケアマネージャーがケアプランを作成してくれます。

流れ

しかし実際に施設に入るかどうかはそれぞれのおかれている家庭環境や経済状況によって異なります。 つまり、施設介護、自宅介護のそれぞれにおいて本当に適切な介護が行われているのか再検討しなければなりません。


表1

自立(非該当) 自立した生活ができ、介護サービスによる支援の必要性はなし。
要支援1 日常生活に支障はないが、要介護状態とならないように一部支援が必要。
要支援2 歩行などに不安が見られ、排泄、入浴などに一部介助が必要だが、身体機能における改善の可能性がある。
要介護度1 立ち上がりが不安定で。杖歩行の場合がある。排泄、入浴などで部分的に一部介助を要する。
要介護度2 立ち上がりなどが自力では困難で、排泄、入浴など、常時、部分ないし全介助が必要。
要介護度3 立ち上がり、起き上がりが自力ではできず、車椅子を使用した生活スタイルも見られ、排泄、入浴、衣服の着脱など で部分的もしくは全介助が必要。
要介護度4 寝たきりに近い状態で、排泄、入浴、衣服の着脱など日常生活全般に全介助が必要。
要介護度5 日常生活全般に全介助が必要で、意思伝達も困難な状態。


老 老介護

老老介護とは65歳以上の高齢者が高齢者の介護をすることです。核家族化により家族が遠方に住んでいるためにそうせざるを得な いケースが多いです。平成28年の統計によると高齢者世帯は全世帯の27%、65歳以上の者のいる世帯は49%となっています。
グラフ1

自宅で介護を行う以上、認知症の高齢者が一人で出かけようとしたり徘徊することを防ぐために常に気を張らなければなりません。 つまり、介護を行っている高齢者がひと時も休めないという点に問題があります。

私たちのメンバーの1人は、実際に在宅介護を経験しました。これは老老介護の事例であり、これにおける問題点は、近年の一般的 な在宅介護での問題点と重なります。
詳しくは「オフィーリアさんの体験談」をご覧ください。


体験談にも実際に見られますが、在宅介護には次のような問題点があります。

  1. ひと時も休めない(特に老老介護において)
  2. 徘徊、一人で出かけようとする
担い手である家族に大きな負担 がかかる

一 人暮らしの高齢者

家族の支援がない、一人暮らしの高齢者はどうでしょうか。

要支援者には、定期的に介護保険サービスを受けながら身の回りの仕事をできるだけ自力でこなしている場合が多いです。しかし、こ のような一人暮らしの高齢者が増えている近年では、それに伴う事件も増えてきています。 特に、メンバーの体験談でも挙げられたような徘徊の問題が深刻化しています。現在、徘徊による行方不明者は一万人以上います。
(資料1.日経新聞)へ

外出先でさまざまなトラブルにあう可能性もあります。例えば10年前、徘徊中の男性が電車にはねられて亡くなり、遺族に賠償請求 を求めるという訴訟がありました。
(資料2.朝日新聞) へ


家族や介護職員に見守りには 限界があります。だからといってむやみな外出禁止は尊厳の問題に関わります。今、自宅介護における高齢者の“見守り”の あり方が問われているのです。



資料1(2017.6.15日本経済新聞)
認知症が原因で行方が分からなくなったとして、2016年に全国の警察に届け出があった行方不明者は前年比26.4%増の1万 5432人だったことが15日、警察庁のまとめで分かった。12年の統計開始から4年連続で増え、過去最多を更新し続けている。 警察や家族などによって98.8%は年内に所在が確認されており、早い段階の対応が重要になっている。

資料2(2016.3.1朝日新聞)
愛知県大府市で2007年、認知症で徘徊(はいかい)中の男性(当時91)が列車にはねられて死亡した事故をめぐり、JR東海が 家族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、介護する家族に賠償責 任があるかは生活状況などを総合的に考慮して決めるべきだとする初めての判断を示した。


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