2-13. 水圧と浮力(1)
先生 空気は、小さな分子という粒子が飛び回ってぶつかるので圧力があった。では液体のときはどうだろう?
一弥 液体にも分子ってありますよね。
先生 そうだね。そして、液体を形作っている粒子は、気体よりも動きが遅いのだけれど、ぎっしり詰っている。
なので、水などの液体はなかなか大きな圧力を生み出すよ。
一弥 それが水圧というものですか?
先生 水のときは水圧、油を使えば油圧と言ったりするんだ。
柚莉亜 じゃあ、氷だと氷圧とかいうのかな……?それとも凍圧?
先生 いや、氷は別だよ。
氷は固体だよね。
固体は粒子が飛びまわっていなくて、塊になっているから、その場にじっとしているんだよ。
ということは、普通の物体と一緒。いろんな向きに圧力を加えたりしないんだ。
先生 さて、その水圧(油圧)。基本的な原理は気圧のときと一緒だから、どういった性質が挙げられるかな?
たとえば、水圧が物体の面に働いているとき、その向きは?
一弥 いろんな方向から力を受けて圧迫されてます。
先生 そして、それらの一粒一粒から受ける力を全部合わせた場合の向きは、力を受けている面に対してだとどうなるんだっけ?
柚莉亜 全部一つの方向に向いているから……。
柚莉亜 面に対して……あ、垂直だ!
先生 そのとおり。
先生 さて、その液体の圧力の大きさは、何によって決まるんだろう?
柚莉亜 わかんないです。
先生 それでは、実験してみようか。ペットボトルに同じ大きさの穴を開けてみた。
より勢いよく水がふき出したところが、より水圧が大きいということだよ。
先生 下に行くほど激しく噴出していた。……ということは、圧力がそれだけ大きかったということだね。
先生 なぜ下に行くほど水圧は大きくなったんだろう?
一弥 ペットボトルの上のほうに開けられている穴と、下のほうに開けられている穴とでは、水面から穴までの距離が違います。
そこに何かあるのではないでしょうか?
先生 とりあえず、次の説明を見てみよう。真ん中の部分の、水圧が発生する理由だよ。
先生 つまり、水圧が生じる理由は、『上のほうの水の重さで押しつけられているから』ということだと言えるわけだ。
柚莉亜 その重さが重ければ重いほど、水圧の力が強くなるってことなんですか?
先生 そう、『水圧を受けている面のある層』の『上にある水の重さ』が、水圧の大きさになるんだ。
先生 さらに詳しく言うと……下の図を見て欲しい。
水圧
先生 茶色で示された面がある。この面に働く水圧は、この面がある深さでは一定だね。
先生 さて、新しい量がまたひとつ。
量記号ρ(ロー:ギリシャ文字)で表される『密度』つまり、『1[m^3]あたりの質量は何kgか?』というのが関係してくる。
例えば、水だったら密度は1000[kg/m^3]になる。一辺が1mの立方体で、1tっていうことだよ。
柚莉亜 1t……。
先生 そして、重力のところで習った、1kgあたりの重さを表す文字『g(9.8……)』は、覚えているかな?
先生 ここで、液体の密度をρ、その面までの深さをhと置くと、1[m^2]当たりにかかる水の重さ、つまりその深さでの水圧は、 水圧[Pa]= で表すことが出来るね。
先生 この式を見てみると、便利なことに『水圧は深さに比例する』と言い換えられるよね。
先生 しかも、同じ深さの地点では、『どんな向きにも等しい大きさで力がかかる』という性質があるので、 上下左右、その高さの面全てに同じ大きさで、垂直に力がかかる。
柚莉亜 垂直?
先生 さっき確認したとおり、水圧はどの向きにも面に垂直でしょ。
一弥 ほら、いろいろな方向に向いていても、結局は全部合成すると、垂直に向いているといえるじゃないですか。
柚莉亜 そっかぁ。
先生 だから、横を向いていても、その大きさは同じ。そのときは中間の深さで計算すればいいね。
水圧
先生 また、下から上向きにも水圧は確かに働いている。
先生 これも、底に開いている穴の部分の、水面からの深さによって水圧の大きさが決まるよ。
柚莉亜 つまりは、深さが水圧を決めるための全てということになるんですね。
先生 ちなみに、水中の物体が受けているのは水圧だけでなく上にある空気も関係していることを注意してね。
先生 つまり、水の重さで水圧を受けているけれど、さらにその水の周りから大気圧がプラスアルファでかかっているということだね。
柚莉亜 じゃあ、水に入ったときにわたしたちが受ける力は、ただ水圧だけじゃなかったってことなんですね。
先生 うん、もともと地上で受けている気圧があるからね。
先生 さて、ここで質問。
QUESTION

ペットボトルに水をいれ、コップの中で逆さにした。
このとき、ペットボトルから水が出るのは止まるかな?

(1)止まらないで全て出てしまう。

(2)ペットボトル内とコップの水面が同じになるまで出て止まる。

(3)ペットボトルの口の高さで止まる。

(4)コップがから水があふれるギリギリのところで止まる。

柚莉亜 ペットボトルの水はずっと重力を受け続けているから、空になってしまうまで出ちゃうんじゃないかなぁ?
一弥 しかし、いずれはコップの水かさと、ペットボトルの口が接してしまいますよ?
柚莉亜 うーん。でも、ペットボトルの口から出る水の勢いが強ければ、 コップの水がペットボトルから溢れる水が押し返そうとする水圧を跳ね返して、まだまだ溢れ続けるんじゃないのかなぁ?
先生 じゃあ(1)なのかい?
一弥 いや、でもペットボトルの水もコップの水も、同じ水ですから、水圧に変わりはないと思います。
ですから、双方の水が接したとき、つまり水圧がせめぎあって、結果的に0となったときに止まるのではないでしょうか?
……つまり(3)だと思います。
先生 では実験してみようか!
先生 お、(3)のところで止まったね。でも水圧同士がせめぎ合う……というのは少し違うかな。理由を考えてみよう。
先生 ペットボトルの口まで水が来た瞬間、ペットボトルの中に空気が入れなくなる。
すると、図のように、コップの方の水面には、水面の高さの差の分の水圧がかかるんだ。
ペットボトルの中の水面と同じ高さにしよう』というようにね。
大気圧と水圧
先生 でも、この時、コップ側の水面には大気圧がかかっているペットボトル内の少しの空気は引き伸ばされていて、圧力は低い
……なので、ちょうど吸盤と同じようになっているわけだ。
先生 緑色に書かれた、水面全体を大気圧が強く押し付けるので、水面を上げようとする圧力は負けてしまうんだね。
先生 さて、この図みたいな状態で、さらに水面に逆さに立てられた容器に空気が全くない状態になっていたとき、 その容器内にはどれだけ水を入れることが出来ると思う?
柚莉亜 わかんないです……。
先生 外の容器の水面にかかる水圧が大気圧を超えた時、大気圧は水が上がってくるのを支えきれなくなってしまうよね。
だから、量というより問題なのは『立てている容器内の水面』と『外の容器の水面』との高さの差になってしまう。
先生 さて、水圧が1013hPaになるのは、この二つ水面の差がだいたいどのくらいの時かな? 計算してみよう。
柚莉亜 えっと……。
一弥 えーと、1013[hPa]を大体100000[Pa]くらいと考えて、これをさっきの式に当てはめればいいわけですから……。
100000[Pa]=1000[kg/m^3][*]深さ[m][*]約9.8
この約9.8は10として考えます。
一弥 ……ということで、h=10[m]じゃないでしょうか?
柚莉亜 あわわっ、一弥くん早い……。
先生 うん、正解だ。つまり、図にするとこんな感じ。
先生 そして、10mを越えるとどうなるかというと、立ててある容器の上の部分が真空(ちょっと水蒸気)になって、ぜったいそれ以上は高くならないんだよ。なかなか面白いでしょ。

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