改憲への積極的な意見がある一方で、改憲をすることに根強く反発し、「護憲」といわれる、日本国憲法を改憲から「護る」動きがあるのも確かです。
どのような理由があって改憲に反対し、現行憲法を護ろうとするのか。
先ほどあげた9条、前文、96条の3つの焦点を軸に、考えていきたいと思います。
護憲を語る上で重要なのが、憲法9条と前文です。
この二つの項目に共通する点は何でしょうか。
それは日本の平和についてです。
戦後70年弱、日本は一度も戦争に介入せず、平和国家として高い評価を得ながら、世界をリードしてきました。
世界的に見ても、「平和憲法」と呼ばれる憲法は少なからず存在しますが、
その中でも「戦争を永久にせず、軍隊も永久に捨てる」としている憲法9条は珍しく、
2014年にはノーベル平和賞にもノミネートされました。
それほど世界的にもトップクラスの平和憲法として、世界から注目されているということです。
日本国憲法前文も、日本国民が平和を永久に祈願するという点で、日本の平和主義の中でも非常に重要な立場にあります。
しかし、改憲はその規制を緩和するわけですから、特殊な平和国家としての日本の地位もそれだけ下がってしまうことに繋がるのではないでしょうか。
普通、国というのは軍隊を持つものです。
そういう点で、日本はとても特殊な国であるといえます。
しかし、改憲をすれば日本は軍をもつことになります。
軍を持つという事は簡単ですが、軍を捨てるというのはなかなか大変です。
日本だって、取り返しのつかない経験をして、初めて軍を捨てたのですから。
この憲法9条自体、第二次世界大戦で多くの国民を失った反省から存在し続けているものです。
これは二度と繰り返してはならない悲惨な出来事であり、後世に伝えていかなければなりません。
そのような教訓と反省の象徴が憲法9条で、我々はこれをこれからも守っていかなければならない。
まして軍を設置するのは、そのような悲惨な出来事を再び起こしてしまうかもしれない、と護憲へと動く方々は説きます。
このように、護憲の動きには、再び軍を持つことによって、再び悲惨な出来事を繰り返してしまい、取り返しのつかないことになってしまうのではないかという危機感が根底にあるといえます。
もう一つの焦点としては96条です。
改憲派の方々は「硬性憲法である上に、総議員の2/3以上という数字が改憲への議論を敬遠させてしまっている」と説き、このうち自民党は、改憲草案で「総議員の過半数」と、ハードルを下げることによって、改憲への道を近づけることを図りました。
しかし、護憲派の方々はやはり「総議員の2/3以上」は妥当である、と説きます。
これはいったいなぜでしょうか。
そもそも日本国憲法は、改憲が簡単にできないように、厳重な段取りを踏まなければ改憲が出来なくなっている「硬性憲法」という種類の憲法で、その中でも特に改憲のハードルが高いと言われています。
これには、日本国憲法制定時に、憲法を簡単には改正できないように意図的に制定したことが関わっているといえます。
そしてそう制定した根底には、二度と憲法が国民を苦しめるようなことのないように、簡単に変えてはならないといった教訓が含まれているといえます。
確かに「総議員の」「2/3以上」という数字はほかの法案と比べてもはるかに厳しい水準です。しかし、もしハードルを下げすぎてしまったら、硬性憲法としての日本国憲法を、ひいては憲法が国民を苦しめてはならないというものを否定することにもなりかねない、という懸念が根強くあります。
・部分改憲か全面改憲か
また上にあげた焦点以外にも、憲法を「護」ろうとする意見はあります。
「改憲とは」のページで、「日本のように全面改憲をしようとする国は少ない」と説明しました。
全面改憲というのは、つまりその憲法の基本的な部分に対して不満があるということです。
世界的に見ても全面改憲を行った例は少なく、改憲のうち多くの例は条文をいくつか修正する部分改憲でした。
確かに日本国憲法には時代にそぐわない部分も有るかもしれませんが、戦争から日本を守ってきた日本国憲法を全否定するというのはいけないのではないか。これも、憲法を「護る」意見です。
憲法を改めるか護るかだけでなく、どう改めるかによっても意見の違いがあるのです。
このように、改憲を積極的に進める考えもあれば、憲法を護ろうという「護憲」という動きがあるということも分かっていただけたでしょうか。
そして改憲と護憲の意見がぶつかることによって、初めて議論というものが誕生します。
次の章では、改憲に対する様々な意見を紹介していこうと思います。
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