3.2 必要条件

 この小節では,Grundy数が( y ⊕ (z+s))−sとなるチョコレートの必要条件の研究を行う.

定義 3.2   自然数の定数sと, gを以下の条件を満たす関数であるとする:
(i) g(t)∈ Z≥0 for t ∈ Z≥0.
(ii) gは単調増加.
(iii) CB(g,y,z)のGrundy数はGg({y,z})= (y ⊕ (z+s))−s.

定義3.2の関数gに対して, 関数 hが存在して, z ∈ Z≥0に対してg(z) = h(z+s)であって,

i = 0,1,2,...,h(s) に対して i ⊕ s = i + s,

かつCB(h,y,z)のGrundy数がGh({y,z})= (y ⊕ z)となることを示す.

補題 3.6   sを 自然数とし,関数hが定義3.2の条件を満たすとする. このとき i=0,1,2,...,g(0)に対して,i ⊕ s = i + sとなる.

証明. 最初に, i = 0,1,2,...,g(0)に対して

Gg({i,0})=i     (99)

であることを数学的帰納法を用いて証明を行う. Grundy数の定義より, Gg({0,0})=0. k = 0,1,2,...i−1に対してGg({k,0})=kかつ i ≤ g(0)であると仮定する. Grundy数の定義より, Gg({i,0})=mex({Gg({k,0}):k=0,1,2,...,i−1} =mex({0,1,2,...,i−1})=i. 定義 3.2の条件より, Gg({i,0})= (i ⊕ s)−sとなり,したがって等式(99)により ( i ⊕ s)−s = iが示される.

定理 3.2   sを自然数とし, gを定義3.2の条件を満たす関数とする. このとき,関数g−sを z ≥ sに対してg−s(z)=g(z−s), 0 ≤ z < sに対してg−s(z)=g(0)と定義する. Gg−s({y,z})を CB(g−s,y,z)のGrundy数とする. このとき, y ≤ g−s(z)を満たすy,z ∈ Z≥ 0に対してGg−s({y,z})= y ⊕ zとなる.

証明. Case (1) g−sの定義により, z ≤ sに対してg−s(z)=g(0)となり,したがって関数g−sはz ≤ sに対して定数値関数であるから,定義2.1の条件を満たす. これゆえ y ≤ g−s(z)かつz ≤ sとなるy,z ∈ Z≥ 0に対してGg−s({y,z})= y ⊕ zとなる.
Case (2) 次にy ≤ g−s(z+s)に対してGg−s({y,z+s})= y ⊕ (z+s)となることを証明する. 数学的帰納法で証明を行い, v ≤ y, w< z+sもしくはv < y, w ≤ z+sとなるv,w ∈ Z≥ 0においてGg−s({v,w})= v ⊕ wであると仮定する. 補題 3.6からi=0,1,2,...,g(0)に対して,i ⊕ s = i + sとなり, p=g(0),j = min(y,g(0))と考えて補題3.2を使うと, 次の関係( 100)を得る.

     
  集合 { min( y,g(0)) ⊕ w:w < s} は集合      
{0,1,2,...,s−1}と等しい.         (100)

定義 3.2より,

     
(y ⊕ (z+s))−s=Gg({y,z})=mex({Gg({v,z}):v<y} ⋃ {Gg({ min(y,g(w)),w}):w < z})        
=mex({(v ⊕ (z+s))−s:v<y} ⋃ { (min(y,g(w)) ⊕ (w+s))−s : w < z})        
=mex({(v ⊕ (z+s))−s:v<y} ⋃ { (min(y,g−s(w+s)) ⊕ (w+s))−s :s ≤ w+s < z+s}).          (101)

式101において,mexの中に入っている集合について考えていく.

     
  v<y に対して  (v ⊕ (z+s))−s = Gg({v,z}) ≥ 0        
  かつ                             
  s ≤ w+s < z+s  に対して ,  
  (min(y,g−s(w+s)) ⊕ (w+s))−s   
  = Gg({ min(y,g(w)),w}) ≥ 0  

したがって

     
  v<y  に対して  (v ⊕ (z+s)) ≥ s                 (102)
  かつ                     
  s ≤ w+s < z+s  に対して  
  (min(y,g−s(w+s)) ⊕ (w+s)) ≥ s.       (103)

帰納法の仮定により,

     
  Gg−s({y,z+s}) =mex({Gg−s({v,z+s}):v<y}          
  ⋃ {Gg−s({ min(y,g−s(w)),w}):w < s}  
  ⋃ {Gg−s({ min(y,g−s(w)),w}):s ≤ w < z+s})  

     
  =mex({v ⊕ (z+s):v<y} ⋃ { min(y,g−s(w)) ⊕ w:w < s}  
  ⋃ { min(y,g−s(w)) ⊕ w :s ≤ w < z+s}).      (104)

0 ≤ w < sに対してg−s(w)=g(0)であるので, 関係(100)により{ min(y,g−s(w)) ⊕ w:w < s} = { min(y,g(0)) ⊕ w:w < s}={0,1,2,...,s−1}は示される. 今から補題 3.3を使うにあたって,この補題におけるxに対応するものとして y ⊕ (z+s),{xk, k = 1,2,...,n}に対応するものとして, { v ⊕ (z+s):v<y} ∪ { min(y,g−s(w)) ⊕ w :s ≤ w < z+s}とすると,等式(101), (102)の不等式, (103)の不等式, 等式(104) によって補題3.3を使うことができ, Gg−s({y,z+s})=y ⊕ (z+s)は示される.

定理3.1及び定理3.2により以下の命題(i)及び(ii)はそれぞれ証明される.
( i) hをチョコレートCB(h,y,z)のGrundy数がGh({y,z}) = y ⊕ zとなる関数とする.このときsが条件(97)を満たし, hs(z)=h(z+s)となる場合においてチョコレートCB(hs,y,z)のGrundy数Ghs({y,z}) = (y ⊕ (z+s))−sとなる.
( ii) gをチョコレートCB(g,y,z)のGrundy数がGg({y,z}) = (y ⊕ (z+s))−sとなる関数とする. このときg−s(z)=h(z−s)とおくと,チョコレートCB(g−s,y,z)のGrundy数がGg−s({y,z}) = y ⊕ zとなる. ここでg=(g−s)sである.
故に, チョコレートCB(h,y,z)のGrundy数がGhs({y,z}) = (y ⊕ (z+s))−sとなる必要十分条件を得た.

次に関数h(z)=⌊ z/2k⌋における条件の例を示す. この様に, この関数において条件は非常に単純である.

系 3.1   自然数の定数kに対してh(z)=⌊ z/2k⌋とする. このとき
m = 0, 1, 2,...,2k−1  となる m,v ∈ Z≥ 0  に対して s = m2v      (105)
となることは, CB(hs,y,z)のGrundy数が(y⊕ (z+s)) −sに等しくなるための必要十分条件である. ただし,hs(z) = ⌊ z+s/2k⌋とする.

証明. 補題2.1より, 関数hは定義2.1の条件を満たす. 補題 3.1より,

i = 0,1,...,h(s) に対して  i ⊕ s = i+s

がなりたつための必要十分条件は

s=u × 2v  かつ  h(s) = ⌊ 
s
2k
⌋ < 2v 

となるu ∈ Z≥ 0が存在することであり, それは条件( 105)が正しいための必要十分条件である. したがって定理 3.1よりこの系の証明を終える.

[1]

S. Nakamura and R. Miyadera, Impartial Chocolate Bar Games, Integers Volume 15, 2015.

[2]

A.C.Robin, A poisoned chocolate problem, Problem corner, The Mathematical Gazette Vol. 73, No. 466 (Dec., 1989), pp. 341-343. An Answer for the above problem is in Vol. 74, No. 468, June 1990, pp. 171-173.

[3]

D.Zeilberger, Three-Rowed CHOMP, Adv. Applied Math Vol. 26 (2001), pp. 168-179.

[4]

M. H. Albert, R. J. Nowakowski and D. Wolfe, Lessons In Play, A K Peters, p-139.

[5]

A.N.Siegel, Combinatorial Game Theory (Graduate Studies in Mathematics), American Mathematical Society (2013).

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