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■ジョバンニにとっての仕事とは
■活版所の意味
■ジョバンニのおじぎ
■ジョバンニにとっての仕事とは
ジョバンニは活版所で仕事をすることで、お金を得ている。活版所で働く人々に、礼儀正しくお辞儀をしながら、彼は小さなピンセットで、粟粒ほどの活字をひろっていく。子どもの、ジョバンニにとって、「何べんも眼を拭いながら」活字をひろう行ためは、労力的に大変なことである。第一章ではジョバンニ自身が、「このごろぼくが、朝にも午后にも仕事がつらく」と言い、第三章ではお母さんが「ジョバンニ、お仕事がひどかったろう」と言っていることからも、仕事のつらさが覗える。彼は、仕事があるために教室でも眠く、午後には友達と遊ぶこともできず、家に早く帰ることもできない。しかし、大変であっても、彼にとってこの仕事は大切な役割を果たしている。
この章の最後は「さっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。ジョバンニは俄かに顔いろがよくなって」「元気よく口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと一目散に走りだしました。」という部分で結ばれている。つまり、家族のために、お母さんのためにパンと角砂糖を買うことができることは、つらい仕事以上に、ジョバンニにとって大きな喜びを与えているのである。
■活版所の意味
なぜ、ジョバンニは活版所で働いているのだろうか。なぜ新聞配達の仕事ではなく、活版所での仕事がこの話で描写されているのだろうか。
その理由は、活版所が銀河と共通する部分があるからではないか。昼なのに電燈のついている室内や、粟粒ぐらいの活字は、銀河に散らばる星と似ている。また、この話において、電燈や、白、青といった単語はよく出てくる描写である。活版所で、だぶだぶの白いシャツを着た人や、青い胸あてをした人など、服の色の描写は賢治が意図的に記したのではないだろうか。
■ジョバンニのおじぎ
・・・家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上りますと、
・・・ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子に座った人の所へ行っておじぎをしました。
・・・さっきの卓子の人へ持って来ました。その人は黙ってそれを受け取って微かにうなずきました。
ジョバンニはおじぎをすると扉をあけてさっきの計算台のところに来ました。するとさっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。ジョバンニは俄かに顔いろがよくなって威勢よくおじぎをすると台の下に置いた鞄をもっておもてへ飛びだしました。それから元気よく口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと一目散に走りだしました。
ジョバンニは活版処にはいった時、入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人にも、卓子に座った人にも、おじぎをしている。途中、虫めがね君と呼ばれ冷たく笑われることもあるが、ジョバンニは目立った行動を起こすことはない。ジョバンニは、仕事を終えたあとも卓子に座った人に対して再びおじぎをする。彼の行動から、ジョバンニは仕事をつらいと思いながらもしっかりとこなす、礼儀正しい少年だということが読み取れる。
最後の、銀貨を一枚受け取ったあとのおじぎは今までとは違い、威勢のいいものとなっている。俄かに顔いろがよくなったことからも彼の感情の変化がわかる。このおじぎはただの礼儀からではなく、心からの感謝や、銀貨でパンと角砂糖を買うことができるうれしさによるものである。
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