自動化と雇用

今日、「AIによって職が失われる」とニュースなどで目にする機会が増えたのではないでしょうか。この懸念は決して間違ったものではありません。現在、機械や人工知能は多くの企業や国家で研究が進められており、実用性や能力の向上が図られています。

機械や人工知能が人間より優れている点は、主に記憶力計算能力です。膨大なデータを速くかつ正確に処理して学習、記憶、整理できる点があります。また、そのデータを基にした推論構築、演算速度などは圧倒的です。そのうえ、単一作業の繰り返しなども疲弊を度外視して超効率で行うことができます。

このような長所を生かすことができる場面は多くあります。例えば相談窓口に送られた文面を解析し、過去のお問い合わせと照らし合わせて同じようなものを見つけ、適切な回答を提示することもできるでしょう。

機械によって職が失われること、つまり自動化についての有名な論文としてFrey&Osborn(2013) の研究が挙げられます。

初めに、研究員らは、仕事上で必要とされる特性を9個挙げました。次にそれらの特性を用いて、米国に現在ある職業を702種に分類し、そのうちの70種を研究員が自動化される可能性があるのか否かを判定しました。そして、その研究員の判定と先に挙げた9種類の特性との関連を算出しました。さらに、ここで算出した値を用い、職業と自動化の関連性を算出しました。

その結果、47%もの職業が機械によって奪われるという結論が出ました。

https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdfより引用

また、具体的に将来非常に高い確率で機械によって置き換えられるとされている職業として、

などが挙げられています。

さらに、類似の研究として、2015年にFrey、Osbornと野村総合研究所が行った研究が挙げられます。先に挙げたFreyらが2013年に行った研究と同じ手法を用いて、日本にある601種の職業をどのくらい自動化される可能性があるのかを算出しました。

その結果、日本の雇用者の49%が高い確率でロボットに置き換わるという結論が出ました。

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/journal/2017/05/01J.pdf?la=ja-JP&hash=6B537BB1EB48465D0AF4A3EA1B1138809F916683より引用

自動化の可能性が高い職業として、

が挙げられ、特に、電車運転手と経理事務員の自動化が可能になる確率は99.8%と算出されています。

しかし、一方機械や人工知能にも欠点があります。データをもとに企画などの提案をするとき、そのデータだけでは思いつかない、イレギュラーな発想が功を奏す場合が多くあります。機械や人工知能にはイレギュラーな行動、思考ができません。また、感情というものもわからないため、他人に訴えかけるということも苦手です。それゆえ、新しいアイデアを思いついたり、他社の心に響くようなプレゼンをしたり、データから思考や傾向を予測するなどの仕事は人間でなければできません。機械や人工知能を万能と考えるのは早計と言えるでしょう。

実際に上述したFrey&Osborn(2013) の研究において、「創造性」や「社会性・コミュニケーション能力」を必要とする仕事はロボットによって置き換わりにくいと結論付けられています。

また、2015年のFrey、Osbornと野村総合研究所が行った研究では、自動化の可能性が低い職業として、

が挙げられており、特に、精神科医、国家協力専門家、作業療法士、言語聴覚士は自動化が可能になる確率が0.1%と算出されています。

これらの論文は、機械が現在人が行っている業務を行えるか否か、という観点から書かれています。そのため、現実的に、必ずしも挙げられている職業が機械によって奪われるとは限りません。具体的には資金面の問題が挙げられます。例えば、コンビニの店員の業務を詳しく見てみましょう。商品の陳列、レジ打ち、袋詰め、揚げ物の調理、値札の変更など細かいタスクが多く存在しています。この一つ一つの動作は全く違う動作なので、人間一人で時間を変えて行える作業に多くの機械や判断機能を導入しなければなりません。その手間やコストを考えると、導入にためらいが出ることも考えられます。

また、自動化によって新たな雇用が生まれたり、特定の職業の需要が高まるかもしれません。現時点の段階で、自動化によって消えない、さらには利益を受けるであろうと認識されている、具体的な職業の例を見てみましょう。

データサイエンティスト
データサイエンティストとは、膨大な量のデータを整理し、分析結果からビジネスなどの課題の解決などを推進する役職のことです。機械や人工知能にデータを解析させ、その傾向などを心理学などの知識から広告に使うなどの進化が考えられます。

AIエンジニア
機械学習やディープラーニングなどを使いそもそもの機械や人工知能を構築し、教育する仕事です。AIの誕生によって新たに生み出される仕事の一つと言えます。

まとめ

機械や人工知能は膨大なデータを素早く正確に処理・解析できるため、事務作業での活用が見込まれる。