外国人労働者

現在、日本国内では外国人労働者受け入れに関する法整備が進んでいます。この背景には、少子高齢化の進行などによる労働力人口の減少が懸念されていることが挙げられます。

まず、外国人が日本で働くためには国内での労働を許可されていることを証明する在留資格が必要です。在留資格は計33種類あり、種類よって配偶者の地位などによって滞在期間や認められた活動内容が異なります。また、認可された活動以外を行うことは禁止されています。

日本国内では2018年10月時点で外国人労働者が146万463人おり、過去最高を更新したと発表されています。このような現状に対して、外国人の雇用に関するルールが厚生労働省によって定められています。

外国人技能実習制度

従来の日本では、『外国人技能実習制度』に基づいた外国人の受け入れが行われてきました。「外国人技能実習制度」は外国人労働者が技能を習得するために現場で働くことを、最大5年間認めている制度です。日本国内で外国人労働者を技能実習生として一時的に雇用し、様々な分野の技能を習得してもらうことを目的としています。

しかし、技能実習制度は本来発展途上国の発展を支える人材育成への貢献を主旨とした制度とされています。そのため、国内の人手不足を補うために技能実習生を労働力とすることは禁じられており、外国人労働者は週28時間以内のアルバイトや単純労働が認められていないなど労働条件の制約が多いことが特徴でした。

さらに、技能実習制度は実習期間の終了ととともに帰国を余儀なくされる点も、日本の労働力不足への解決には至らないと指摘されることがあります。

特定産業分野と特定技能

上述した特徴を持つ外国人技能実習制度のみでは国内の労働人口の減少に対応することが困難となっていました。そこで、現在は2019年4月に施行された「出入国管理及び難民認定法」(改正入管法)で規定されている在留資格の範囲内において、特に国内での人材不足が深刻な14分野を「特定産業分野」と定め、特定産業分野に限り外国人の日本国内での就労活動を認めています。

この法律によって、2018年12月に閣議決定した方針に基づき創設された「特定技能」という在留資格が実施段階に移行します。「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格が創設され、新たに単純労働分野での外国人労働者の就労が認可されました。特定技能を持つ外国人労働者は、同じ業種間であるなどの条件に基づき転職することも可能です。

特定技能

ある一定のルールで定められた範囲において外国人労働者の労働を認める在留資格のこと。現在、特定技能で就労できるのは漁業・農業・飲食料品産業・外食産業・建設業・介護職など14種の業種のみに限定されています。

特定技能を得るためには一定以上の技能実習経験または予め規定されたレベルの日本語能力・ビジネススキルを測る試験に合格する必要があります。新たな在留資格による今後5年間の外国人労働者の受入数は最大約35万人で、技能実習からの移行が半数程度を占めると見込まれています。また、特定技能は業界ごとの外国人労働者の受け入れ人数は規定されているものの、介護業と建設業以外の業種では各職場における人数制限はありません。

特定技能1号

特定の技能試験と日本語試験に合格する、または技能実習2号を修了することが取得条件とされます。在留期間は1年・6か月または4か月ごとの更新で最長5年ですが、家族の帯同は認められません。技能実習を5年間行うことで取得が可能になり、合計で最長10年の滞在ができます。現在は介護業・建設業・外食業・農業・航空業などの14業種への就労が認められています。

特定技能2号

特定の技能試験に合格することが取得条件ですが、特定技能1号と異なり日本語試験は不要です。 対象は熟練した技能を要する業務に従事する外国人労働者とされています。条件を満たせば家族の帯同が許可され、3年・1年または6か月ごとの更新がありますが有効期限の上限はありません。現時点では建設業と造船・舶用工業の2業種にのみ就労することが認可されています。

国内の外国人労働者の現状

国内の外国人労働者の内訳

2018年現在、国内の外国人労働者の人数は以下の通りです。

1位 中国(389117人)
2位 ベトナム(316840人)
3位 フィリピン(164006人)

外国人労働者が多い業種

現在の日本では、外国人労働者・外国人労働者を雇用する事業所共に製造業が最多となっています。(外国人労働者数全体の29.7%、外国人労働者を雇用する事業所全体の21.4%)

外国人労総者の採用をめぐるメリット・デメリット

外国人労働者を採用する利点

人材不足の解消に繋がる

外国人労働者の雇用を拡大する目的でもある、国内の労働力不足の解消が期待できます。

事業の拡大が期待できる

外国人労働者を採用することで日本語以外の様々な言語に対応することが可能になり、海外の企業と提携し事業拡大を行うことも視野に入れることができます。

社内のグローバル化が進む

外国人労働者が同じ職場にいる環境下では、日本人も英語などの外国語を用いて外国人労働者とコミュニケーションを図るようになると考えられます。また、外国人労働者から日本以外の国の文化・価値観に基づいた斬新なアイディアが生まれ、新たな技術などが発展する可能性もあります。

現状の問題点

契約書関連の義務が守られないケースが存在している

現在外国人労働者を雇う際に契約書を交わさない、もしくは交わしても内容を守らない事例が存在します。例えば、契約書を交わさず口約束で労働条件を決めた場合、外国人労働者が自身の職場の給料体系を把握することができない、トラブルが発生した際に契約内容の証拠を提示できないなど労働環境の悪化につながる恐れがあります。

円滑なコミュニケーションが困難な可能性がある

特定技能1号などでは日本語試験の合格が求められるため、現時点において日本語を一定以上のレベルで話すことができる外国人労働者は存在します。しかし、全ての外国人労働者が日本語を流ちょうに話すことができるわけではないため、特に地域の小売店などの小規模な職場での多言語対応、外国人労働者の生活への支障などが問題視されています。

また、日本と他国の文化・価値観の違いによっては相手に意図せず誤解を与えてしまうこともありうるため、互いの文化を尊重し共存することが求められます。

就労ビザの取得に時間を要する

現在、在留資格認定証明書を発行・提出していなければ就労ビザを取得するには約1~3ヵ月かかります。就労ビザを得ていない、あるいは更新せずに外国人労働者が日本に滞在していると不法就労とみなされ罰則を課されてしまうため、就労ビザを早期に得られないことで外国人労働者の労働が制限されてしまいます。

人件費がかさむことが考えられる

「契約書関連の義務が守られないケースが存在している」の箇所で、昨今では契約書を交わさず外国人労働者を不当に安い給料で働かせる事例が存在すると先述しました。しかし、優秀な外国人の人材を確保するためには日本人と同等かそれ以上の給料を提示することが必要条件となります。

さらに、外国人労働者の渡航費用や就労ビザの取得費用は企業が負担するため、日本人を新たに雇用するより企業側の負担が増すことが考えられます。

まとめ

日本国内の労働力不足の解消のため、2019年から改正出入国管理及び難民認定法が施行された。
国内での人材不足が深刻な14分野を「特定産業分野」と定め、これらにおける外国人の日本国内での就労活動は認められている。