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古民家の再生

古い家の価値

イギリスでは、築年数の多い住宅は歴史ある住宅として魅力的なものとなり、新築を超える値が付くものもあるようです。
しかし、日本ではイギリスのようなことはほとんどありません。

イギリスは石造り、日本は木造という住宅の素材の違いによってイギリスの住宅のほうが長持ちするからだと言う人もいます。
確かにその差によって維持費にも差がありますが、法隆寺のように適切な管理・補修のおかげで築年数1000年以上になっている木造建築もあります。
そして、日本には補修が必要な木造建築から、良さと歴史を残したまま一部をより良く作り変える、古民家のリノベーションという手段があります。

古民家の再生・リノベーション

古民家とは、昔ながらの工法で作られた民家のことで、国内に約150万戸あり、そのうち約20万戸が空き家であると推計されていて、
古民家のリノベーションはそのような古民家を再生したり、古くからのものを残したまま、 快適性を持たせたり、バリアフリーに配慮した家に作り変えることです。

例えば屋根を補修したり、キッチンやシャワー、洗面所などを新調して最新の快適性を備えたまま、家の中央や屋根のハリには昔から使われている歴史ある木材を残してある。 このような改修を施した家は新築並みの快適性と新築にはない歴史的な深みを兼ね備えています。
そして、そのようなその家は、新築を超えた価値を持っているはずです。

国内に約150万戸ある古民家が新築を超えた価値を持つようになれば、日本の中でも特に築年数の長い家がきちんと管理され、 そのような家が倒壊するようなことはなくなるでしょう。
さらに、新築志向の解消という点でも、古いものの価値を認識してもらう必要があります。

しかし、実際にリノベーションexpoというイベントで建築士さんに、お話しを伺ったところ、
「再生古民家に新築以上の値段はなかなかつかない。」とおっしゃっていました。
本質的には新築以上の価値を持っているのに、新築以上の値段が付かないのは やはり日本人が"新築ブランド"を重視しているからであって、古民家には"古民家ブランド"があればよいはずです。
その建築士さんからも「日本人の意識さえ変われば新築以上の値段が付くはずだ。」と同意をいただけました。

ブランドというのは、イメージや広報活動などによってつくものですから、 再生古民家が新築より魅力的なものとして扱われるようになるには、新築志向の解消に加え、
もっとその価値をアピールしていくことが求められます。
では、古民家の価値はどのようなものがあるのでしょうか。


チームメンバーが撮影

古民家の価値

リノベーションされた古民家には、新築より価値がある高級な住宅となるポテンシャルを持っているだけでなく、
"行ってみたい日本の観光地のイメージ調査"で、「日本的な街並み」が68%で2位になっているように、観光資源としての価値、 そして日本の古くからの文化を伝えていく価値を持っています。

民家は、近くにある材料でその場所に合ったものを作っていたため、古民家の設計や材料はその場所によって異なります。
そして、自分たちの手で材料を取ってきて、自分たちの手で少しずつその家を改良してきました。
こうして地元の人たちによって少しずつ改良されてきた古民家は、昔からの知恵が詰まっています。

例えばその一つが、茅葺(かやぶき)屋根です。茅葺を何層も重ねたこの作りは、空気をたくさん含み、裏起毛の服などと同じ原理でとても暖かい作りになっています。 それでいて夏は梅雨や夕立で染み込んだ雨が蒸発するときの気化熱で涼しく、 さらには近くに材料であるススキを生やしておくことで、交換の時には一銭もかけずに新しい屋根にすることができたそうです。
そして、長い庇(ひさし)は、冬と夏の太陽高度の違いを利用して、冬はできるだけ太陽光を室内に取り入れ、夏の直射日光は遮ります。

このように、「自然と共生し、自分たちの手で知恵を集めて改良していく。」という、
近年薄れてきている日本古来の精神が古民家には詰まっているのです。
人々が改善を繰り返し作り上げてきた古民家には、大きな文化的価値があると言えるでしょう。