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フロー型社会からストック型社会へ
ここからは、中古住宅の需要を増やし、価値を上げるための方法についてです。
日本人が中古住宅を欲しがるようにするためには、新築志向を解消する必要があります。
そしてそのためには、リノベーションなどで中古住宅をより魅力的にするだけでなく、 新築住宅も中古住宅となってから魅力を持つように造らなくてはなりません。

フロー型社会の日本

現在の日本は住宅が30年程度で壊されるフロー型社会(スクラップアンドビルド型の社会)なので、
住宅もそれにあった作られ方をしています。
私たちは、現在の西洋のように長い時を経て"味"や"価値"が出るように作られている住宅を「ストック型住宅」 現在の日本のように早く壊されることに最適化されている住宅を「フロー型住宅」と呼ぶことにしました。

フロー型は作って売って終わり。次は建て替え。というやり方で、
ストック型はいいものを作り、その後長く大切に使っていこうというものです。

日本の住宅は基礎や柱などの構造体にはお金をかけていて寿命は長いものの、 張り替えに多額の費用がかかる外壁や床材に、寿命が短く安価なものを使っているのが、 「フロー型住宅」となっている理由と知りました。

例えば、 西洋の新築住宅は、レンガ、タイル、良質な木材などを使って、長い時を経て"味"や"価値" が出るように作られていますが、 日本の住宅の多くに古くなっても価値が出ず劣化するだけの人工の新建材が使われています。

例えばその一例が壁に使われるサイディングです。 新築戸建住宅の78.5%に使われている※1窯業系サイディングは、新築時きれいで他の素材より安価ですが、定期的にメンテナンスをしても 30年から40年で劣化し寿命を迎え、張り替え工事が必要になります。 そしてその費用は 200万円前後と高額に、長持ちする建材より維持費も高くなります。

少し高くても何十年たって味が出てくる素材よりも安くて新築時に見栄えのいい素材を使った 住宅が選ばれているのが実情です。

そのような住宅は、将来、古さからの味が魅力を生むという考えで作られていないので築年数が大きくなるとどんどん劣化し価値が下がり、建て替えられます。
そうすると次の世代も、味のある古い家の良さを知る機会はありません。
そして、次の世代もフロー型の家を建ててしまいます。

その結果、長持ちして味が出るような住宅も作られなくなり、 新築でないからこその価値を持った中古住宅は生まれなくなります。 こうして、みんなが新築志向になり、好んで中古住宅を買う顧客がいなくなります。

この悪循環によって、建てられる家は古くなったら価値がなくなり、買い手の新築志向が加速します。

ストック型社会へ

この悪循環を止めるため、必要なのはストック型社会への移行です。

ストック型社会では、家は古くなったら建て替える消耗品のような扱いから、 修繕を繰り返しながら古さという価値を高めていく資産となります。

いちいちすべてを建て替えず必要な部分だけ修繕していくこと・価値が高まっていくこと。 この経済性により、経済的に余裕ができたり、相続の時に資産として受け継ぐことができます。

ストック型社会は、住宅に魅力を与え、市場価値を与え空き家問題を解決に向かわせるだけでなく、 エコで、社会で暮らす人々の多くに経済的余裕を与えるのです。 これが欧州ではあたりまえで、実現可能なことです。

では、ストック型社会への移行のためには具体的にどうすればいいのでしょうか。 欧州と比べてみると、日本との違いはこの2点にありました。
・人、市場がより古い住宅を好むこと。
・新築住宅が、数十年・数百年経って古い住宅として価値を持つことを見据えて作っていること。

従って
[人は]
[ハウスメーカーは]
が必要です。
ストック型社会もフロー型と同じで、補助金前提の仕組みではなく、基本的に自立して経済が回っていきます。
例えば、今まで新築をたくさん作っていくことで稼いでいたハウスメーカーも、
修繕などのアフターサービスで稼ぐビジネスモデルに転換していくでしょう。

他にも、ローンは今までよりも初期投資が増えますが、価値が続きやすい住宅であれば担保として良質なので
信用も得られやすく将来的にはその分金利も安くできるはずです。

しかし、そのためにはストック型住宅が中古市場で高い価値を持つほど、多くの買い手がストック型住宅の価値を認識していなくてはなりません。

そのような市場が実現できるまでは、国の特別な補助金があるといいかなと思います。
ストック型住宅を今までから大きく負担の増やさない範囲で購入することができれば、
より多くの人がストック型住宅を購入し、ストック型社会への転換が加速することができます。

もっとも、最終的には市場で買い手となる、日本人全体の価値観が変わらなければなりません。

※1 日本窯業外装材協会 「新築戸建住宅の外壁材 材料別構成比」よりデータを引用