ミツバチの天敵〜巣の中の天敵編〜

バロア病(ミツバチヘキイタダニ)

ミツバチヘキイタダニは、ミツバチにくっついてミツバチの体液を吸ってしまいます。幼虫やさなぎの時に寄生されると、成虫になった時に奇形となってしまいます。寄生された働きバチは体が弱くなり、正常に働くことができなくなってしまいます。また、ヘキイタダニに寄生されたミツバチは他の病気にもかかりやすくなってしまいます。
元々ヘキイタダニは、ニホンミツバチを含むトウヨウミツバチに寄生していたのですが、人間が世界中を移動するようになり、ある時、飼われていたセイヨウミツバチに移ってしまいました。ミツバチヘキイタダニは日本だけでなく、世界中のセイヨウミツバチと養蜂家を苦しめています。
ミツバチヘキイタダニは巣の中に入り込むと、さなぎになる直前の幼虫の部屋に入り込みます。さなぎになる時には小部屋に外からふたがされるので、ふたがされた後はミツバチヘキイタダニの天下です。さなぎの体液を吸い、その栄養を使って卵を産み、増えます。そして寄生先のミツバチがふたを破って外に出るときに一緒に出て行き、他の小部屋の中に入り込み、増殖するのです。健全な働きバチが居なくなった巣は幼虫を育てられなくなり、崩壊します。ミツバチヘキイタダニは巣の小部屋にふたがされている間に繁殖するので、ふたがされている期間が長い雄バチの幼虫に、寄生する傾向があります。巣の被害が拡大するのは、雄バチが育てられなくなる夏以降です。


対策

一般的なのはダニ除けの薬剤を使うことです。写真中央の灰色の棒が薬剤です。
例えば、アピスタンという薬剤は、ミツバチが蜜を集めていない時期に薬を巣の中に6週間入れておくだけでダニが駆除できます。

次に、薬を使わないで退治する方法を紹介します。
ミツバチヘキイタダニは雄バチの幼虫に寄生しやすいという特徴を生かした退治法があります。まず、雄バチ用の大きめの巣房をいくつも人工的に作り、それを巣の中に入れておきます。すると巣の女王バチがそこに雄バチの卵を産みつけ、その幼虫にヘキイタダニが寄生します。あとはヘキイタダニがついたこの巣房を取り出せば巣の中の多くのヘキイタダニを取り除くことができます。
また、ヘキイタダニの宿主だったニホンミツバチは元々ヘキイタダニへの抵抗力が強いです。ニホンミツバチは、働きバチ同士でよく毛づくろいをするのでそこでヘギイタダニを取り除くことができる他、巣房が小さいのでダニが巣房の中にいることに気がつきやすく、幼虫ごとヘギキタダニを外に捨てることができるからと言われています。さらに、セイヨウミツバチの中でも、ロシア原産の亜種であるロシアンという種もミツバチヘキイタダニへの抵抗性が強いといわれています。しかし、ロシアンは作る蜜の量が一般的な養蜂で使われている、イタリアンに比べて少ないので商業養蜂ではあまり使われていません。 巣房の大きさを小さくすることも効果的ともいわれています。養蜂で使われている巣礎のサイズは5.4mmに統一されているのですが近年4.9mmの巣礎も少しずつ販売されています。



参考文献
Rowan Jacobsen 『蜂はなぜ大量死したのか(原題 Fruitless Fall)』 文芸春秋、2009年
久志冨士男 『ニホンミツバチが日本の農業を救う』 高文研、2009年
ウィキペディア 蜂群崩壊症候群  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%82%E7%BE%A4%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
一般社団法人 日本養蜂協会 ホームページhttp://www.beekeeping.or.jp/