世界の養蜂

北アメリカ

 アメリカ大陸にはもともとミツバチは生息していませんでした。北アメリカでの養蜂は、ヨーロッパ人が移住する時に一緒に連れてこられたのが始まりです。
 1995年にペンシルベニア州ではミツバチヘギイタダニが主な原因で飼育されていたミツバチ群の数が3分の1に減少してしまうなど、ダニや病気の被害も大きいです。2007年にはCCD(蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん))によりミツバチの数が大幅に減少してしまうなど、苦労が絶えません。
 また、日本以上に花粉交配に使われるミツバチの割合が大きいようです。北アメリカでは世界の80%以上のシェアを占めているカリフォルニアのアーモンド農園を始めとする、花粉交配に多くのミツバチが使われています。花の開花に合わせて巣箱を移動する移動養蜂が盛んに行われています。

南アメリカ

  1950年代に研究者がアフリカから持ち込んだミツバチが逃げ出し、当時飼われていたセイヨウミツバチとの雑種が誕生してしまいました。気性が荒く「キラービー」と呼ばれています。毎年、キラービーによる死者が出ています。
『実は、ミツバチヘギイタダニを増やさず、*ハチノスムクゲケシキスイを排除し、餌を自給し、山のように蜂蜜を作り、おびただしく繁殖し、手当も介入もしなくても元気に育つようなミツバチは存在する。その形質は、他の種類の蜂と交配しても薄まることはない。というのは、その蜂の女王バチはイタリアミツバチの女王バチより早く羽化して、ライバルをすべて刺し殺してしまうから、その遺伝子がすぐに巣箱を支配してしまうのだ。』(p282 Rowan Jacobsen2009)  


  また、熱帯に生息していたため雨がしのげる所ならどこにでも巣をつくり、冬に備えて貯蜜をせずに1年に4~5回分蜂をする習性があります。その為繁殖スピードがとても速いです。
  現在南アメリカで飼育されているミツバチもアフリカ化したミツバチです。
 気性が荒い反面、アフリカ化ミツバチは病気にもダニにも強いという素晴らしい特長があります。そして、プロポリスを多くつくるという特長もあります。それを生かしたブラジルのプロポリスの生産量は世界一となっています。また、日本にはアルゼンチン産のはちみつが多く輸入されています。

  *ハチノスムクゲケシキスイ アフリカ原産の病害虫類であり、日本養蜂協会の要注意病害虫類となっている。

中国

  広大な国土を持つ中国はもちろんはちみつの生産量も多く、世界一位です。また、日本へ輸入されているはちみつの76.9%は中国産です。(農林水産省 H25年度のデータ)しかし、残留農薬など安全面で心配が残ります。

 

ヨーロッパ

 ヨーロッパでは、昔から養蜂が行われていました。中世では、養蜂は教会で行われる聖職でした。現在の養蜂の元となる技術の多くはヨーロッパで確立されました。
 現在は、ドイツとルーマニアのはちみつの生産量が多くなっています。
 ドイツには、蜂蜜純正法というはちみつの品質に関する厳しい法律があり、その審査に合格したはちみつはとてもおいしいのです。
 また、農薬の被害や病気の被害も少なからずあり、アメリカと同様CCDの被害も少なくはありませんでした。フランスでは他の国に先立ち、ミツバチを死に至らしめるネオニコチノイド系農薬の使用を禁止する法律も施行されました。EUでも、いくつかのネオニコチノイド系農薬の使用を中止しています。
 しかし、日本ではネオニコチノイド系農薬の規制緩和が行われています。 (http://organic-newsclip.info/nouyaku/regulation-neonico-table.html)より



参考文献
Rowan Jacobsen 『蜂はなぜ大量死したのか(原題 Fruitless Fall)』 文芸春秋、2009年
越中矢住子『ミツバチは本当に消えたか』 SoftBank Creative、2010年
久志冨士男 『ニホンミツバチが日本の農業を救う』 高文研、2009年
一般社団法人 日本養蜂協会 ホームページhttp://www.beekeeping.or.jp/
ウィキペディア 蜂群崩壊症候群  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%82%E7%BE%A4%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4