免疫辞典
免疫細胞総覧
最前線で戦う細胞
これらの細胞は体内をパトロールしながら、抗原を見つけて排除します。
好中球は、抗原そのものを主に排除します。
ナチュラルキラー細胞は感染した細胞を主に排除します。
好酸球は 体の外部と接しやすい粘膜の周辺で寄生虫などを主に排除します。
好塩基球については不明な点が多いものの、ヒスタミンを放出してアレルギー反応を引き起こす原因になると言われています。
戦いつつ情報収集もする細胞
これらの細胞は抗原を食べて、抗原のかけらをヘルパーT細胞に渡す役割があります。
樹状細胞もマクロファージも単球から分化したものです。
マクロファージは赤血球や血小板の死骸を掃除する役割も持っています。
組織化された免疫界の精鋭たち
キラーT細胞やB細胞はヘルパーT細胞からの命令を受けて活性化します。
キラーT細胞は感染した細胞を病原体ごと破壊します。
ナチュラルキラー細胞との違いはキラーT細胞は命令を受けないと働かないという点です。
B細胞は抗原の活動を抑制する物質である抗体を作り放出します。
制御性T細胞はヘルパーT細胞が命令を出すのを抑制して、免疫の過剰な活動を防ぎます。
免疫細胞 | 概要 | |
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顆粒球 | 白血球のうち細胞内に顆粒を多く含む細胞。ギムザ染色によって染色すると、それぞれ酸性・中性・塩基性の色素で染色されやすさが異なり、それに基づいて以下に分類される。 | |
好中球 | 白血球の50~70%を占める、自然免疫の代表格。体内に侵入してきた異物を貪食し消化・殺菌する。寿命は1日に満たない。 | |
好酸球 | 呼吸器・腸管・泌尿器上皮・生殖器上皮などの外部環境に接しやすい組織に存在する。寄生虫幼虫などの病原体を処理する。好塩基球やマスト細胞とともにアレルギー反応に関与する。 | |
好塩基球 | 組織中のマスト細胞に相当する働きをする。抗原などによって活性化され、ヒスタミンなどを放出し、アレルギー症状を招く。 | |
単球 | 白血球の中で最も大きい。マクロファージや、樹状細胞に分化することができる。組織内に移動するとマクロファージとなる。 | |
樹状細胞 | 単球から分化。細菌を貪食し(食作用)、その一部をT細胞へ渡す(抗原提示)。 | |
マクロファージ | 単球から分化。細菌を貪食し(食作用)、その一部をT細胞へ渡す(抗原提示)。抗原だけでなく、赤血球や白血球、血小板などの死骸を捕食し消化する掃除人。 | |
リンパ球 | ||
T細胞 | 造血幹細胞で生まれ、胸腺(Thymus)で分化・成熟する。役割から複数に分類される。 | |
ヘルパーT細胞… 樹状細胞から提示された抗原の情報を受け取り、B細胞やマクロファージを活性化させる。 |
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キラーT細胞(細胞障害性T細胞)… 樹状細胞から提示された抗原の情報を受け取り、害のある細胞を攻撃し排除する。 |
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制御性T細胞… B細胞の抗体産生を抑制し、免疫反応をストップさせる。 |
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B細胞 | 骨髄(Bone Marrow)や脾臓で分化、成熟する。細菌やウイルスと結合し無力化させる抗体(免疫グロブリン)を合成・放出する。 | |
メモリーB細胞… B細胞の中でも、一度会った病原体の情報を記憶し数十年間生きるもの。 |
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NK細胞 | 殺傷能力が高く、ウイルスなどに感染した細胞やがん細胞を攻撃して排除する。自然免疫の一種。 |
免疫に関わるその他の細胞たち
特定の抗体に反応してヒスタミンを放出し、アレルギー反応を引き起こす原因になります。
細胞 | 概要 |
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マスト細胞 | 造血幹細胞から分化した細胞の1つ。主に外界と接触する組織の皮膚や粘膜などに存在する。免疫グロブリンIgE(Immunoglobulin)を分泌、アレルギー反応を招く。細胞内に保有するヒスタミンなどの化学伝達物質を、アレルギー反応時に放出する。ヒスタミンには気管支の平滑筋収縮作用、血管透過性亢進作用、粘液分泌作用などがあり、アレルギー症状を引き起こす。 |
造血幹細胞 | 赤血球・白血球・リンパ球などの血液細胞の供給源となる細胞。骨髄などに存在し、未分化で成熟を伴わない分裂を行う。 |
その他の登場してきた用語
用語 | 概要 |
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顆粒 | 細胞内に見られる粒状の構造のこと。様々な種類がありそれぞれが独自の役割を持っている。 |
ギムザ染色 | 特定の細胞や組織に色を付ける染色方法の一つ。細菌や血液中の細胞を視覚化するのに使われる。 |
貪食 | 食細胞が物質を内部に取り込んで分解、吸収する作用。食菌作用。 |
ヒスタミン | 血管から血液が漏れやすくなる(血管透過性の向上)、血管拡張などの作用がある物質。過剰に分泌されてアレルギー反応や炎症の引き金となる。 |
抗原提示 | マクロファージや樹状細胞などが侵入してきた異物を捕食した後、その一部を細胞表面に提示しT細胞に情報を受け渡すこと。細胞性免疫、体液性免疫を活性化させる。 |
分化・成熟 | 細胞がより専門性に特化した複雑な細胞に変化すること。 |
胸腺 | 造血幹細胞で生まれたT細胞の分化・成熟が行われる器官。 |
膵臓 | 古くなった赤血球の破壊や、B細胞やT細胞などを成熟させる働きを持つ臓器。体の左、上腹部にある。 |