株式会社H&М
今、多くの企業が衣服ロス削減のために、サステナビリティを追求し様々な対策を行っています。
そんな中、一足早く衣服ロス削減の取り組みを行っている、H&Mさんにインタビューをさせていただきました。
なぜサステナブルな取り組みを行おうと考えられたのですか?
H&Mのビジネスコンセプトは「ファッションとクオリティを最良の価格で、
持続可能な方法で提供すること」でございます。
ファッション企業である私共にとって、サステナビリティとは「ファッションを
将来にわたって長く楽しむ力」のことであり、このコンセプトを実現するために、環境や社会に配慮しながらも、経済的に実現可能な商品をすべての人々に提供
できるよう日々取り組んでおります。
回収された衣服の中でどのくらいの割合がリユース・リサイクル
されていますか?
また、もし最終的にリウェア・リユース・リサイクルできなかった
場合、それらの衣類はどのようにしていますか?
お客様から回収した衣類はすべて、業務提携をしている「I:CO」という会社へ
引き渡し、400以上の基準に従って、リウェア(古着として販売)、
リユース(工業用のクリーニングクロスやリメイク材など)、
リサイクル(新たな繊維製品の原料、自動車の制振材・緩衝材など)に
仕訳けられますが、安全衛生上それらに分類できないものはエネルギー回収用の
燃料として再利用されます。
内訳としては、H&M店舗で回収された衣類は、50%~60%がリウェア・リユース、35~45%がリサイクル、3~7%がエネルギーとなっています。
時季によって集まる衣類・テキスタイルに変化があるため上記の割合にも幅がございます。
御社の製品を作る過程で環境に影響を与えてしまっているものはありますか?
ファッションを含むすべての製品はすべて、原料調達から生産、製品の使用、
最終的な処理に至るまで環境への影響は免れません。
弊社の最新の
サステナビリティレポートでは、バリューチェーン内のどの段階がどのような影響を与えているかを示す図を記載しておりますので、英語にはなりますが、
H&M Group Sustainability Performance Reportの10ページ目をよろしければご参照くださいませ。
これら影響を少しでも軽減するために、様々な取り組みを行っていますが、
例えば、コットンの栽培で使用する水の使用量の課題と取り組みとして、環境保全団体WWFとのパートナーシップにより、水資源のロードマップ作製、水管理、
サプライヤー工場での取り組みなど様々な実績がございます。
ファストファッションの中、売れ残る商品を削減するために具体的にどのような
工夫をしていますか?
一般的に過剰生産などによるファッションロスと呼ばれる問題は、ファッション業界全体の課題です。
H&Mグループでは、需要に応じた買い付けと時季に応じたキャンペーンなどを通じて、適切な販売を可能な限り行っております。
2018年からはAI部門も設立され、より正確な需要と供給のバランスと適所への
配分、配送などにおいての向上を引き続き図っています。
また、お客様には購入した製品の寿命をのばし、できるだけ長く楽しんでいただくこと、それでも不要になった衣類が廃棄ではなく、再利用されるよう推奨しております。
売れ残った商品をサステナブルな観点からどのように取り扱っていますか?
先ほどの質問で述べた通り、弊社では可能な限り余剰在庫を減らすために様々な
取り組みを行っておりますが、それでも発生した余剰在庫で、販売や使用、
リサイクルできるものなどに関しては、埋め立て地に送ったり、安全衛生上の問題が無い限り焼却などは一切行っておりません。
売れ残ってしまった場合でも次シーズンに持ち越したり、弊社グループ内で
オフプライスブランドや二次流通のプラットフォームを設けておりますので、そちらで販売するなどしています。
お客様にもファッションを長く楽しんでいただけるよう、ホームページなどでサステナビリティ情報を公開し、多くのお客様に意識していただけるような取り組みにも力を入れております。
御社がサステナブルな取り組みをしていらっしゃる中、私たち消費者側に行って
ほしい取り組みはありますか?
消費者の皆様におかれましては、できるだけ購入時には環境や社会に配慮して作られた素材のものを選択し、購入後には素材に合ったお手入れをしできるだけ長く着ていただき、それでも不要になった衣類は廃棄ではなく再利用することを推奨しています。
それらを促進するために以下のような、お客様にご参加いただける施策も展開していますので、これらもぜひ活用いただければ幸いに存じます。
1.古着回収サービス(ブランドや状態を問わず、不要になった衣類を回収。1袋に
つき500円OFFクーポンと引き換え)
2.グリーンタグ(50%以上、リサイクルまたはサステナブルに調達された素材を
使用している商品についているタグ。素材の名称と内訳を一目みてわかるように
掲載。オンラインではCONSCIOUSと記載)
3.オンラインサイトの商品ページ「製品のサスティナビリティ情報」のタブでは、それぞれの製品に使用されている素材、生産国、生産工場などの情報を掲載
4.マイバッグの使用/ショッピングバッグの購入辞退(ショッピングバッグの
消費量を削減するため、1枚20円の有料化)
その他にも、お客様にサステナビリティについてより理解を深めていただきたいとの思いから、公式ウェブサイトでもサステナビリティのページを設けています。
また、日本のお客様に向けた、サステナビリティに関する特設サイトもございます。
こちらもぜひご参照いただき、一人でも多くのお客様に日常でできるファッションを通したアクションについて考えていただくきっかけになれば嬉しく存じます。
サステナブルな取り組みを進める中、新たに出てきた課題や問題、また、これから新しく取り組もうと思っていることがあれば教えていただきたいです。
2030年までに使用する素材をすべてリサイクルまたはサステナブルに調達された
ものに切り替え、2040年にはバリューチェーンを通じてクライメット・ポジティブな企業になるという目標に向けて様々な取り組みを行っています。
2020年には使用するコットンをすべてリサイクルまたはサステナブルなものに切り替えており、現在使用する素材全体の64.5%がリサイクルまたはサステナブルに
調達されたものです。
2021年は70%以上の切り替えを目標としています。
リサイクル技術の限界などの課題はありますが、技術開発の支援や革新的な素材の採用など、引き続きサステナブルでファッショナブルなコレクションをお届けすることを目指して、様々な取り組みを行っていきます。
お忙しい中、インタビューを受けて下さった、H&Mさん、本当にありがとうございました。