エピローグ
はたと目が覚めた。
傍らの携帯のホーム画面は午前三時過ぎを告げている。つけっぱなしのテレビは録画番組の再生を終え、録画一覧表のまま放置されていた。
コンタクトをつけたまま寝てしまったせいで瞬きをするとこすれて痛い。さっさと寝なければ。今日はまだ水曜日で、週末は遠くに霞んでいる。変な姿勢で寝落ちしてしまったせいで凝った首をぐるっと回し、アラームをかけようとスマホを開いた。
そこに表示されるハズレの文字。ああ、年末に買った宝くじの結果を見ていたんだなと思い出す。当たるわけがない。たかだか三百円、一枚購入しただけなのだから。それが当たるくらいなら俺の人生これまでもっといいことがあったはずだ。
「あーあ、五億当たんねえかな……」
そう呟けば、頭の奥がじんわりと痛んだ。寝すぎたのだろうか。どこか何か遠い記憶がよぎるような気がするが、何も思い出せない。いや、遠くではなく、むしろどこか近い世界線の、別の自分……
「なんて、もう学生じゃないんだぞ、俺」
大の大人が深夜に中二病思考なんてバカバカしい。そう苦笑いをしてアラームをかけ、スマホの画面を消した。なぜか、ありふれた日常こそが幸せなような気がしていた。
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