競馬を選んだ場合
「五億、なあ……」
悩んでいた俺の頭によぎったのはとあるスマホゲーム。競争馬を擬人化し、育成をすることで賞を目指すそのアプリは、キャッチーな曲もあって大いに流行った。
かく言う俺も友達の紹介で始め、推しを勝たせるためにずいぶんと時間を使ったものだ。 それをきっかけに競馬そのものにも興味が出てきていたのだが、何せ安月給の身。ギャンブルにつぎ込むような金は存在しないというのが正直なところだった。
競馬が百円単位で賭けられるのは知っていたが、俺より先にアプリから現実の競馬に手を出した友人を傍らで見ていれば、ずるずると続けるうちに金額が上がっていくのは目に見えている。
でもこれだけの金額があれば、多少ギャンブルに使うのもいいかもしれない。
競馬のゲームそのものが好きなのだから、少々外れてもエンターテインメント代だと思えばいいのだ。
一番人気の馬に賭け続ければ大きく外れることもないだろうし、大穴を狙わず堅実に賭けていけばいつの間にかプラスになっている可能性だってある。
何せ五億だ。普通に使い切るのだって難しい額なのだから……。
いくら賭けてやろうか楽しく考えながら、俺は久しぶりにゲームを開いた。