仮想通貨を選んだ場合

まずは仮想通貨だろ、最近流行ってるし、と俺はメモに丸を付けた。
早速去年仮想通貨に凝っていた先輩に連絡を取り、基本のかけ方を教えてもらう。

「そもそもお前さあ、仮想通貨って何か知ってんの?」

先輩はサッカー部のころからデカい顔をするのが好きなタイプで、めんどくせーな全く、といいながらもうれしそうな声で語り始めた。
他人に何かを教えることが好きなのは相変わらずなんだなと心の中で思う。もちろん声には出せないけれど。

「いいか、仮想通貨ってのはな、国とかで使われる通貨じゃなくてインターネット上でだけ使える通貨なわけ。だからお前が店にスマホ持って行っても当然使えねぇんだよ」

「PASMOとかSuicaみたいなことですか?」

「いや、あれは円の信頼性に頼ったサービスだ。換金もできねえし。
仮想通貨は国境も関係ねえし誰も介入する奴がいない、マジの自由な通貨取引ができるってことよ。しかも本格的な準備とかいらねえしな。
どうせお前も小遣い稼ぎ程度の気持ちで始めたんだろ?五百円とかチマチマ投資するタイプだよ」

だから一生まとまった金手にできねえんだよ、男ならもっと勝負しなきゃだよなーと大きな声で話す先輩は昔と変わらず興奮すると唾が飛ぶんだろう。裏でみんなでたまんねえよなと顔をしかめていたのを思い出す。
この人にだけは絶対五億の話はできないと思った。



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