3-4. 運動の法則
先生 さて、質量や慣性の法則を学んだとき、質量に比例して慣性が大きい(質量は慣性の大きさによって決められた量だから)と学んだね。
柚莉亜 うん。
先生 また、慣性の逆は"動き出し方"に現れるんだということも学んだ。
一弥 同じ大きさの物体をボールを同じ大きさの力を与えて転がしたときも、
例えばプラスチックのボールと金属のボールでは明らかに金属のボールのほうが転がる速度が遅くなります。
先生 ペットボトルの実験でもやったね。
ペットボトルの質量と動きやすさ
先生 実験の時、慣性は結果的に『速度が遅い』『大きく振れない』などという形にして見えるけれど、
力を受けているときに『加速しやすいか、しにくいか』ということが関連しているんだよ。
先生 この、『どれだけ加速するか』というのが前の単元で学んだ『加速度』なんだ。
先生 『慣性が大きい』と『加速しにくい』、『慣性が小さい』と『加速しやすい』といったように、
『加速度』と『慣性』は反比例の関係にあると言えるんだ。
先生 つまり、『同じ力を受けたとき』には『加速度と質量は反比例の関係にある』というようになる。
一弥 力が同じだとすると、他に判断材料が質量ということになるわけですからね……。
柚莉亜 先生。反比例ってことは、質量が大きければ大きいほど、運動が遅くなっていくとか、そういうことなんですよね。
先生 ん、ちょっとまって。今問題なのは加速度であって、直接速度が関係しているのではないことに注意が必要だよ。
先生 同じ力を加えて、一秒間に0[m/s]から3[m/s]になったときも、 10000[m/s]から10003[m/s]になったときも、加速度の大きさは等しく3[m/s^2]
このとき2つの物体の質量は等しいという結論になる。結局速度は問題にならないんだ。
柚莉亜 そっかぁ。
先生 反比例ということは、つまりは物体が同じ力を受けたとき、
『質量が大きいほど加速度が小さくなる』『質量が小さいほど加速度が大きくなる』ということ。
先生 さらに同じ物体なら、その物体が受けた力に比例して加速することも前の単元で学んだ。
先生 『加速度』は、力が一定なら『質量に反比例』、質量が一定なら『力に比例』する、と言えるわけだ。
先生

このことを、比例定数kを使って式にしてみよう。 加速度a=(k*F(力))/m(質量) これで質量に反比例、力に比例ということを表せるんだ。

変形してみると、
力が一定のときは a=(k*F)/m 質量が一定のときは a=(k/m)*F と置くことが出来るからね。

先生 それで実は、このような関係が発見された時はまだ、力の単位はちゃんと決められていなかったんだ。
柚莉亜 力の単位って[N]だって、さっきやったよね。
先生 最初に説明しなかった、単位ニュートン[N]が生まれたわけをこれから君たちに説明しよう。
先生 国際単位系の話はしたよね。[m][kg][s]など手頃な単位を組み合わせて単位を作るという話。
さっきの式を変形して、 m[kg]*a[m/s^2]=k*F[?] これがk=1で成り立つようにしたい。そうすれば余計な計算をしなくてすむしね。
すると……。 m[kg]*a[m/s^2]=F[?] ということで、?に当てはまる力の単位は[kg*m/s^2]と表せるよね。
一弥 ええ。
先生 言葉で言い表すと
『1[kg]の物体に1[m/s^2]の加速度を生み出す力の大きさは、 1kg*m/s^2ですよ』
さらにいうと、『1kg*m/s^2の力を受けている1[kg]の物体は毎秒1[m/s]ずつ速くなりますよ。』
(もともと等速直線運動をしている物体が、進む向きと逆向きの力を受けたなら遅くなる)ということ。
先生 この、m、kg、sで表されるkg*m/s^2という長い単位を、
ちょうど[N/m^2]を[Pa]と置き換えたときのように、
科学者ニュートンにちなんで、ニュートン[N]と置きましょうということなんだ。
柚莉亜 それが[N]の始まりなんだね。
先生 そう。そして、さっき変形した式m[kg]×a[m/s^2]=F[N]これで、質量と加速度、そして力の関係が定められる。
この式を『運動方程式』と呼んでいるんだ。
先生 物体が受けている力の大きさは、質量と物体がどれだけ加速しているかで調べることが出来るよね。
例えば、2[N]の力を受けている2[kg]の物体は毎秒[1m/s]ずつ速くなるし、3[N]の力を受けている1[kg]の物体は毎秒[3m/s]ずつ速くなる。
先生 この運動方程式で定められた関係こそが、ニュートンのまとめた運動の第二法則『運動の法則』なんだ。
力学は、この式をもとに色々と変形させることによってさらに次のステップへ発展させることができる。
だから、これはとても重要な式なんだよ。
まとめ

・質量m[kg]、加速度a[m/s^2]、力F[N]の3つの関係は「ma=F」の式で表すことができ、この式を運動方程式と呼ぶ。

・運動方程式で表される関係のことを、運動の第二法則『運動の法則』と呼ぶ。

次へ進む

ページの先頭へ