3-5. 重力加速度と無重力
先生 さて、前に重力のところで、重力をW、質量をmと置くとW[N]=g*m[kg]と表せると学んだね。
一弥 gが、よくは解りませんが、とりあえず決められている数字で、9.8……でしたっけ?
柚莉亜 えぇ? そんなのやったっけ?
先生 ……。
先生 忘れてしまったのなら、一度ここに戻って確認しておいてね。
・重さと質量(2)
・重力
先生 さて、運動方程式と並べて書いてみよう。
引力=-G*(物体Aの質量)*(物体Bの質量)/(A-B間の距離)^2 運動方程式 m[kg]*a(ベクトル)[m/s^2]=k*F(ベクトル) 書き換えると、
F[N]=a[m/s^2]*m[kg]
重力W[N]=g*m[kg]
先生 このgは前に万有引力の法則を計算して9.8・・・と導き出したけれど、
実はこの「g」は『重力加速度』といい、『物体が重力を受けたときに生じる、地球の中心(重心)向きの加速度』のことなんだ。
もちろん単位は[m/s^2]
一弥 地球の中心向きの加速度と言われても、なかなかイメージしにくいのですが……。
先生 つまり、地面に向かう加速度。
空気抵抗を考えなかった場合、高い場所から初速度0[m/s]で落下させた物体は、1[s]後は9.8[m/s]になる、ということなんだ。
先生 物体を落下させたとき、だんだん落ちるスピードが速くなるよね。
柚莉亜 うん。
先生 空気抵抗がなく、物体が受けている力が重力だけだったとすると、地球の中心(重心)の向き、
……つまり、地面の向きに生じている加速度がg[m/s^2]ということ。
先生 どんな質量m、重さWの物体でもあっても、W[N]=g×m[kg]において、gは場所によって一定の値だ。
だから、重いものが速く落ちるわけではないと言えるんだ。
先生 こんな話を知っているかな?
14~15世紀に活躍した天文学者・物理学者であるガリレオ・ガリレイが有名なピサの斜塔から二つの玉を落とした話。
一弥 それなら、知ってます。
『落下の法則』の発見、でしたっけ?
先生 そう。ガリレオがピサの斜塔に上って、そこから同じ材質だけど重さの異なる二つの球を落下させ、 みんなの前で、それがほとんど同時に地上に落ちるのを確かめたという。
それまでは、ギリシャの哲学者アリストテレスが唱えた"重いほうが先に落ちる"とする考えが主流だったけど、 ガリレオは、その考えをこの実験で否定したんだ。
先生 まぁでも、この話はガリレオの弟子であるヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニの書いた本「ガリレオ伝記」に基づいた話で、 実際には行われていないと言われているんだけどね。
先生 では、重力に関連してもう一つ。
スペースシャトルの中は無重力だ、っていうよね。
……ということは、スペースシャトルは重力を受けていないのかな?
一弥 重力というより、大気圧みたいに、宇宙の周り……外気から圧迫されていると考えるのではないのでしょうか?
先生 うーん、そういうわけでもないんだよね。
実はね、スペースシャトルも重力を受けているんだ。
スペースシャトルは重力によって地球の中心向きに引っ張られて、少しずつ進路を内側に曲げることで地球の周りを回っているんだ。
柚莉亜 えぇっ! スペースシャトルって、ただ地球の周りを廻っているだけなの?
普通に月まで自由に行くことが出来るものだと思ってた……。
先生 ……ま、まぁそういうことになるんだけどね。
先生 では無重力って一体何なんだろう?
一弥 本当は、重力が存在しない空間なんて無いのではないのでしょうか
つまり、"遠心力"のときみたいに、本当は力ではないけど、力のように感じるというような……。
先生 実は、無重力とは重力がないことではなくて、重力に逆らわないで、なすがままに加速している状態「無重力」と言っているんだ。
「物体は加速しようとすると、その質量がそれに反して等速直線運動をしたがる」というのは、 Chapter2の重力のところで遠心力について紹介したときに、簡単に説明したね。
柚莉亜 うん。
先生 スペースシャトルの場合、実際に受けている力は重力だけ。
「まっすぐ行かずに地球のそばを離れるなよ~」と引っ張っている。
そのため、「地球の中心向きの加速度を生じている」と言うことができる。
先生 けれど、スペースシャトルの搭乗員にとっては、 見かけの力「遠心力」が「直進したいから曲がるな」と引っ張り返しているように感じるんだ。
すると、見かけ上は合力が0になってしまう。この状態が「無重力」なんだ。
スペースシャトルの中の人
先生 では、重力に逆らわなければ全て無重力と言えるのかな?
たとえば、その場でジャンプしたら、着地するまでは重力に引っ張られるがままだよね。
先生 そこで、次の実験をしてみよう。
QUESTION

風船を本で挟むと、風船の口には本の重力がかかって、閉じています。
そこで、手を離すとどうなるでしょう?

(1)風船の口は本の重力で閉じられたまま

(2)風船の口は閉じられなくなり、風船が飛ぶ

風船
柚莉亜 普通に考えて、落としても風船の口が閉じられたままって考えにくいよね?
一弥 ですね、僕も同じく(2)で……。
先生 手を離した瞬間に、本と風船は「重力に逆らわないで、なすがままに地面に向かって加速している状態」になるね。
すると、風船の口に本の重力がかからなくなる。なので、すぐに離れて飛んでしまうんだ。
先生 つまり、それで無重力状態ができたということなんだねー。
まとめ

・g(9.8・・・)は、重力加速度と呼ばれている。

・無重力とは重力に逆らわないで、なすがままに加速している状態のこと。

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