パラドックスE

事後選択モデルと情報期限のパラドックス正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉である。

 ロイドらの「事後選択モデル」は、エヴェレット・ドイッチェの「多世界解釈観察者がいる世界から、過去のある時点で分岐して併存するとされる世界。並行世界。」とだいぶ異なり、物詩の論理としても無理は少ない。

 親殺しのパラドックス「ある人が時間を遡って、祖父が祖母に出会う前に殺してしまったらどうなるか」というものである。その時間旅行者の両親のどちらかが生まれてこないことになり、結果として本人も生まれてこないことになる論理的パラドックスである。に関して比較すると、多世界解釈では「自分が存在している世界」と「過去に戻って親を殺した世界」(したがって自分が生まれてない世界)とが分離して共存する。

だから厳密な意味でCTCは存在していない。一方、事後選択モデルではCTCの成立を前提としており、「親を殺す」か「殺さない(殺せない)」状態のどちらかを量子論量子力学、およびそれにより体系化される理論の総称。物理学のほか化学・工学・生物学でも展開。 的に計算する形になっている。

 そして事後先約モデル背は、自分が存在する限り、過去に戻って親を殺そうとして弾丸を発射しても、その弾丸が不発になるか量子駅揺らぎで弾丸がそれるなどで、殺せる確率はゼロになる。

ホーキング[1942〜 ]英国の物理学者。ビッグバンが宇宙の特異点であることの証明、ホーキング放射によるブラックホール蒸発の発見など、天体物理学の分野で活躍。は「量子論がCTCの発生を防ぐだろう」という予想だったが、ロイドらは「CTCはあってもよいが、自己矛盾する結果は量子論が防ぐだろう」と考えたのだ。

 CTCが存在すれば、情報起源(作者不明)のパラドックスも発生する。

多世界解釈では「小説家が未来のストーリーを書き写す」という情報の発生を説明できなかった。

ドイッチェは新たなエントロピーの原理を持ち込むことを考えていた。

 これに対してロイドらの解釈によれば、CTCの存在する世界では「未来から伝わるストーリーが何通りもあり、その中から小説家が一つを選択する」ので、新たな情報の発生というパラドックスは存在しないことになる。

自由意志がどこまでも入り込めるのかはまだ不明だが、今後の動向に注目したいアイデアである。


第3章へ

homeへ