パラドックスC

過去を変えても許される物理学

パラレルワールド 観察者がいる世界から、過去のある時点で分岐して併存するとされる世界。並行世界。の解釈

 過去に戻って因果関係を破壊してしまうことが、タイムトラベルのパラレルワールドだが、それを許す解釈がある。エヴェレットヒュー・エヴェレット三世(Hugh Everett III) による多世界解釈 量子力学に基づいた世界観の一つ。コペンハーゲン解釈の世界観を粒子の観測者にまで拡大し、観測とは無関係に、世界すべてがあらゆる状態の重ね合わせであるとする解釈。 である。

 電子原子内で、原子核の周りに分布して負の電荷をもつ素粒子。などの素粒子物質や場を構成する最小単位とみられる粒子。電子・陽子・中性子・ニュートリノ・光子などと、その反粒子をも含めた総称。の運動を説明するよう詩論は、確率でしか位置や運動量が決まらないという確率解釈が出発点である。

電子が二つの経路のうちどちらをこうるかは確率でしかきまらないが、どちらを通ったのかが判明すれば、その確率が適用された、と考える。

100回計測するのなら、100回の可能性の重ね合わせになる。

 このミクロの解釈を大胆にもマクロな世界にも適用したのが多世界解釈観察者がいる世界から、過去のある時点で分岐して併存するとされる世界。並行世界。である。

電子のどちらかの経路を通過したのかが判明した時点で「世界が分岐した」と考えるのだ。

同じような世界(パラレルワールド)がいくつもあり、そのうちの一つ一つを我々が選択しながら住み続けているというアイデアだ。

この考えは大多数の物理学者に認められているわけではないが、初期宇宙の研究者や量子コンピュータの研究者には人気がある。

ミクロな世界を主体とすると、多世界解釈が本質的になるからだ。

 量子計算理論のパオニアであるドイッチェイギリスの物理学者。エヴェレットの多世界解釈の支持者である。は、親殺しのパラドックス、「ある人が時間を遡って、祖父が祖母に出会う前に殺してしまったらどうなるか」というものである。その時間旅行者の両親のどちらかが生まれてこないことになり、結果として本人も生まれてこないことになる論理的パラドックスである。を多世界解釈観察者がいる世界から、過去のある時点で分岐して併存するとされる世界。並行世界。で解決することを提案した。

タイムマシンで過去へ行って親を殺した時点で、その世界は自分が存在しない未来を持ったものに分岐する。

しかし、自分自身はパラレルワールド下に過ぎない、と考えれば、因果関係に矛盾はできない。

 だが、これでは「過去をかえて世界を変えた」とおもっても、変わっていない世界が常に存在することにもなる。


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