ガレージのパラドックス

ガレージのパラドックスギリシア語のpara(反,超)+doxa(意見,通念)の合成に由来する。〈背理〉〈逆理〉〈逆説〉と訳。一般に正しいと考えられていることに反する主張や事態をいう。

〜車は出るの、入るの?〜
最初にのローレンツ収縮マイケルソン=モーリーの実験の結果を説明するため1893年H.A.ローレンツが立てた仮説。〈運動物体はすべて運動方向に(式1)(vは運動物体の,cは真空中の光の速度)の割合で収縮する〉。にまつわるのパラドックスとして、ガレージのパラドックスを取り上げてみる。

あなたが車を運転していてガレージに車をいれることを考えてみてください。

実際にガレージに入れるときはブレーキを踏み、速度をゆるめて止まる訳だが、ここでは一定の速度のままでガレージに入れるとする。

するとガレージの後面に激突してしまうので後面の壁はないものとする。

車の長さとガレージの長さは同じとする。地上にたって車が入ってくるのを見る人にとって、走っている車はローレンツ収縮によって長さが縮まるので、車はガレージの中にすっぽり納まる。

ところが車を運転しているあなたからしてみるとガレージの方が縮んでみえるので車はガレージからはみ出してしまう。

さて、どちらが正しいのだろうか。

実はこれはどちらも正しくしかも矛盾ではない。

地上の人にとって車の後端がちょうどガレージの前面を通過した時刻(事象A)での車の先端(事象B)はまだガレージの中にいる。

これは正しい。

しかしこの2つのの事象は運転しているあなたの時計では同時ではないのである。

あなたにとって車の後端がガレージの前面がガレージの前面を通過した時刻(事象A)と同時なのはBではなく、車の先端がガレージの後面を越えた位置(事象C)なのである。

パラドックスと思うのは事象Bと事象Cを同じと思ってしまうからである。

それらは違う事象なので、違う結論を出すのは当たり前なのである。


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