綴り字改革

問題とされること

こうした文字に関する問題が起こると、「綴り字改革」と呼ばれることがしばしば試まれてきました。しかしこれは非現実的で、できたとしても、その効果はあがらないでしょう。

すべての文字は、どんなに偉大なものとして扱われ、また多くの人々に使用されてきたといっても、実際は話し言葉の完全な再現ではなく、近いものにすぎません。

本来なら、一つの文字体系の表記法で全ての音素の発音を表現できなくてはなりませんが、たとえば、アルファベットでは、曖昧さや不明瞭さが原因で、意味における不確実さが生じてしまいます。発音を正確に表現できるのは専門記号だけですが、もちろんそういった記号を公用文字にするのは現実的ではありません。では新しい文字体系を作り出すかとなればそれは大変な労力を要することが予想されます。この問題はたびたび議論されてきました。

本当の問題点

しかし、ここで大事なのは話し言葉の正確な再現が本当に望ましいという訳ではないということです。そもそも読むことと書くことを、基本的に種類の違う二つのものを同時に処理しようとするのが無理なことだといわれています。読むことと書くことは脳内では別々に処理されているというのがその理屈です。よって、どんな綴り改革をしようとも、本質的に異なる二つの神経回路の機能をうまく調和させることはできないというのが最近の主張です。

▲話すことと書くことはそもそも処理の仕方が違うのだから、正確な一致が望ましいというわけではない。