渋滞予防実験
前のページでは防ぎきれなかった渋滞をどう自動運転車は解決するのかを示しました。
しかし、未然に渋滞を防ぐことが出来ればその渋滞回復のシステムを使わずに済むため、より多くの予測出来ないアクシデントを減らすことができます。
そこで、このページでは原因・解決策で述べた「合流時・坂道・事故」に対しての自動運転による渋滞予防策はどれほどの効果があるかを紹介します。
目的
人が運転すると、坂道・カーブ・合流時・事故時に意図せず渋滞の原因となるような走行をしてしまうことがある。それを防ぐためにどのようなシステムを搭載すれば、渋滞が解消されるかを調べる。
詳細
- ①首都高速道路の中でも特に渋滞の起きやすい江戸橋ジャンクションの模型を作り、道のあらゆる場所にミニカーを配置する。
それらを時間の経過に応じて少しずつ動かしてそれぞれの時間の写真を撮り、車を走らせるときの条件を変えた場合、道路の混み具合などがどうなるかを調べる。
(少しずつ車を動かす時には、車同士の合流や斜面、カーブなどの事も考慮に入れる。) - ②問題が起こった箇所だけピンポイントに注目し、どのように自動運転車を利用すれば、渋滞を減らせる・無くせるのかを考える。
江戸橋ジャンクション Image © 2006 The GeoInformation Group |
必要な物
- 江戸橋ジャンクションの模型
- ミニカー
- (カメラ)
内容
実験1
本線を走っている車が何台通ったら、副線を走っている車が本線に入れるかを変える。
(・カーブ・坂道では、平坦な道の3分の2のスピードで走る
・事故は起きていない←この意味は後で分かります。
・本線と副線の車の数の比は2:1)
- ①本線1台通ったら、副線の車が1台合流する。
(仮説)本線を走る車は詰まり出し、副線を走ってる車はスイスイと動けると思われる。
- ②本線4台通ったら、副線の車が1台合流する。
(仮説)本線を走る車はスイスイ動き、副線を走る車は詰まり出すと思われる。
- ③本線2台通ったら、副線の車が1台合流する。(解決策だと思われる。)
(仮説)交通量に比例して、車の合流が行われているので本線・副線がバランスよく車が流れると思われる。
実験2
カーブ・坂道でのスピードを変える。(事故は起きていない。)
- ①カーブ・坂道では、平坦な道の3分の2のスピードで走る。
(仮説)カーブ・坂道の部分が始まって、ある程度の所で渋滞が起こると思われる。
- ②カーブ・坂道でも、平坦な道と同じスピードで走る。(解決策だと思われる。)
(仮説)平坦な部分と同じようにスムーズに車が流れる。
実験3
事故が起きたと仮定して、その起きた場所を変える。
(・カーブ・坂道では、平坦な道の3分の2のスピードで走る
・本線2台通ったら、副線の車が1台通れる。
・本線と副線の車の数の比は2:1)
補足:事故が起きて速度減少した時の渋滞の予防には、渋滞回復実験の内容を応用することが効果的だと思います。
車線減少した時の渋滞の予防には、基本的に実験1の内容を応用することが効果的だと思います。
なので、この実験では例外的に本線で事故が起きた場合と副線で事故が起きた場合の渋滞の影響の大きさを比較して、事故が起きたときの渋滞の予防策を考えたいと思います。
- ①事故が本線で起きる。
(仮説)直線で走り続けられる部分で渋滞が起きているので、大きなロスが生じると思われる。
- ②事故が副線で起きる。
(仮説)合流区間を完全に塞がない限り、その区間が短くなっただけと言え、そこまで大きなロスは生じないと思われる。
結果・考察
実験1
順を追って説明付きで見られます | それぞれの実験を並べて見られます |
結果
- ①本線が副線よりも混み方が激しかった。
- ②副線が本線よりも混み方が激しかった。
- ③本線・副線ともに、比較的一定の速度で車が流れていた。
考察
本線に副線の2倍の交通量がある時、本線を走っている車が2台通ってから副線を走っている車が1台入ると大きな渋滞が起きにくい事が分かった。(交通量に合わせて、副線の車が本線に入るペースを変える必要がある。)
実験2
順を追って説明付きで見られます | それぞれの実験を並べて見られます |
結果
- ①上り坂の部分でスピードダウンした事により渋滞が起きている事が分かる。
- ②平らな車線に走っている車と同じような動きをしていて、スムーズに車が流れている。
考察
1箇所でもスピードが落ちる箇所があると、思った以上に渋滞が激しくなる事が分かった。
実験3
順を追って説明付きで見られます | それぞれの実験を並べて見られます |
結果
- ①本線を走っている車が大きく回り込む必要があり、②と比べて大きなロスが生じる。
- ②結果的に本線と副線の合流区間が短くなったことにより、副線の渋滞が少し手前から起こる可能性があるが①と比べて大きなロスがない。
考察
本来まっすぐ走れる部分で、事故が起きるなどして他の車線に回り込まざるを得なくなると、大きなロスが生じる。
まとめ
よく渋滞が起こるケース | 理由(原因・解決策のページ参照) | 解決策 |
---|---|---|
合流時 | 本線に入ろうとしている車を入れてあげるために、どの車もスピードを緩めようとするから。 | 本線を走っている車が無駄にスピードを緩めることを避けるために、交通量に合わせて副線を走っている車が一定の割合で入れるような仕組みを開発する。 |
カーブ・坂道 | カーブ・坂道でスピードが落ちる車があると、それより後ろを走っている車も続々とスピードが落ちてしまうから。 | カーブや坂道の急さを感知して、それに合わせて通常よりも速度を上げ、出来るだけ平坦な道と同じだけの速度で運転出来るようにする。 |
事故 | ①車線が減少することによって、スピードが緩む。
②事故の実際の様子を見るためにスピードを緩めてしまうから。 ③特に直線部分を遮断するような場所で起こると、車線変更を何回もしなければいけない可能性が高い。 |
①は、合流時の実験の解決策を応用することによって解決出来る。
②は、自動運転車が普及すればこのような問題は解決出来る。 ③の対策として、直線部分を遮断するような場所で事故が起きた場合は、その周辺を走っている車が事故を認識して余裕をもって車線変更などをする。 また、事故が起きた後の対応をするときに出来るだけ車線変更をせずに済むような車線に車を移すだけでも、有効な改善策になると考えられる。 |
実験を通しての疑問
① | 私たちの実験を通して
この実験では、「合流時」・「カーブ・坂道」・「事故」の3つの条件にわけて渋滞をいかに予防出来るかを調べた。 しかし、その条件を組み合わせた場合どのように渋滞が回復するか、また数値化などをして具体的にどれほど渋滞が緩和されるのかが調べられなかった。 →実用化するには、道路上で起こりうる様々な状況を複合的に考えられるかどうかが大きなカギを握っていると考えられる。 また、技術を複合的に活用する時もどの技術がどのような場面で活用されているのかも示せればよりわかりやすいと思われる。 |
実験を通して、社会に提言したいこと
自動運転車の性能を検証する時は、それがイメージだけではなく実際にどれほどの効果があるのかを数値などで具体的に示す必要があると考えられる。 なので、実際に開発を進めている企業などはどのようにして性能を確かめるようなシミュレーションなどをしているのかを明確に示す必要がある。 (それが、分からない・分かりにくいと、どんなに企業などが消費者に対してどんなに素晴らしい性能を紹介しても説得力に欠けると思われる。) |
② | 私たちの実験を通して
この実験では、首都高速道路の中でも特に渋滞の起きやすい江戸橋ジャンクションに焦点を当てたが、この実験の結果は調べる場所によって差があるのかどうかを調べる事は出来なかった。 江戸橋ジャンクションは合流区間が短い・カーブや坂道が多いなどが挙げられる。 しかし、貿易港に近い場所でトラックなどの大型車の通行量が多い場合はどうなるのかを調べることは出来なかった。 →実用化するには、特定の場所だけではなく様々な場所で渋滞を解消出来るだけの技術開発が必要である。 |
実験を通して、社会に提言したいこと
自動運転車の性能を確かめる時には、特定の国・地域だけでなく、すべての場所で渋滞の解消が出来なければ、その目的を完全に達成したとは言えない。 現在は、車の売り買いが世界規模になっているので、その規模のニーズに合わせた開発をしなければ販売台数が減る可能性も考えられる。 |
③ | 私たちの実験を通して
この実験では、「合流時」・「カーブ・坂道」・「事故」の3つの条件しか調べていないので、この事に対してのみに対策をしても渋滞を完全に防ぐことは難しいと思われる。 また、実験をした後そのまた改善策やなぜその改善策が必要なのかを調べれば、より広範囲に様々な状況をカバー出来る対策が導く事が出来るのではないかと思った。 →実用化するには、とにかく実験を繰り返し、そのたびごとに改善策を考え様々な状況をカバーする技術の開発が求められる。 |
実験を通して、社会に提言したいこと
しかし、渋滞になり得る状況のパターンは、数多く存在すると思われる。そこで、開発を進める企業は最新の技術を活用しても防ぎ切れなかったパターンの情報を常に集めて、なぜその状況下で渋滞が起きたのかを調べる。この調べた結果を基に、そのパターンに対しての解決策を開発して、シミュレーションを通して効果を確認する。そしてその解決策が開発されるたびに、自動運転車はそのデータを更新する。これを繰り返すことによって、さらに渋滞を未然に防ぐことが出来ると思われる。 |
実験をして初めてわかったこと
様々な事柄に対して問題解決につなげるには、1回の実験に満足することなく何回も多くの状況に基づいた実験を重ねることが重要だと気付いた。
開発を進める企業には、消費者にもしっかりと性能を理解してもらえるようにするために、分かりやすくてかつ必要とされていることに適当な説明をする必要がある。
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