まとめと今後
私たちは自動運転車をテーマとして、自動運転車の普及が交通渋滞の緩和につながるかを問題提起し、実験により確かめることにしました。研究の流れは以下の通りです。
1. サイトで自動運転車が出来ることとして証明したこと
(Ⅰ)渋滞の解消(→渋滞回復実験)
全ての車が同時に速度を早くすることによって渋滞の回復が出来ます。
(Ⅱ)渋滞の予防(→渋滞予防実験)
- ①カーブ・坂道でも平坦な道と同じ速度で運転する。
- ②交通量に合わせた比率で車の合流を行う。
- ③周囲の事故などの情報をもとにして余裕をもった車線変更をする。
以上の3つのことをすることで、渋滞の予防が出来ます。
2. 実験を通しての社会への提言
(Ⅰ)渋滞回復実験からわかること
自動運転車を渋滞解消の手段としてより効果的に利用するには、(複数の会社により製造された)すべての自動運転車が協調して走ることが必要です。また、道路状況の学習結果も、複数社製の自動運転車同士で共有された方が好ましいです。(実際に、今回、私たちはすべての自動運転車が協調して走ることを前提に実験を行いました。)
それには、同一社製の自動運転車どうしのみならず、複数社製の自動運転車どうしでの車車間通信システムが必要です。
しかし、現在、同一社製の自動運転車どうしでの車車間通信システムの構想はあっても、複数社製の自動運転車同士での車車間通信システムの構想はありません。そのため、自動運転車を渋滞解消にうまく活用しきれません。
そこで私たちは、今後自動運転車をより有効に渋滞解消に活用するため、複数社製の自動運転車どうしでの車車間通信システムを整備することが必要であると考えます。
(Ⅱ)渋滞予防実験からわかること
自動運転車の性能を検証する時は、それがイメージだけではなく実際にどれほどの効果があるのかを数値などで具体的に示す必要があると考えられます。また、自動運転車の性能を確かめる時には、特定の国・地域だけでなく、すべての場所で渋滞の解消が出来なければ、その目的を完全に達成したとは言えません。このサイトでは、高速道路での合流時に起きる渋滞の模型を作り実験を行いました。しかし、渋滞になり得る状況のパターンは、数多く存在すると思われます。よって今回の実験だけですべての渋滞パターンを検証することはできません。
自動運転車の開発を進めるには、最新技術を活用しても防ぎ切れなかったパターンの情報を常に集めてそれらを基に開発を続けることが重要だと思われます。
3. 自動運転車が普及した未来
自動運転車が普及したら、一体どうなるのでしょうか。3つの視点から自動運転車のメリットを示します。
(Ⅰ)一般市民のメリット
交通事故が減少することで、道を歩くときや車を運転するときに安心できます。
(Ⅱ)所有者のメリット
今まで車の運転に費やしていた時間を他のことに有効活用できるため、生活の質が向上します。
(Ⅲ)社会的なメリット
渋滞の解消により、渋滞による経済損失を減らすことができます。また排出ガスの量を減少させることができるため、地球温暖化の抑制につながります。
4. 今後の課題
ここでは3つの視点から今後するべき事について示そうと思います。
(Ⅰ)企業等の技術開発
ハードとソフトの両面での開発が不可欠です。
- ハード:感知技術や正確性が高いセンサーが必要です。ただし、自動運転の核となるものなので、耐久性が高いものである必要があります。
- ソフト:ハッキング等によってテロなどの大混乱に陥ることを防ぐためのシステムの構築が必要です。また、複数社製の自動運転車どうしにおける車車間通信のシステムを構築すべきです。
(Ⅱ)国家の法整備・省庁の再編
- 現在の法律では、無人運転をすることやハンドルがない車が走行することは走行出来ません。このままでは、いくら技術が発展しても実用化させることは不可能なので、法整備は大切です。
- 一つの事故などのトラブルに対して、複数の省庁が各自に動くことは効率が悪いです。なので、自動運転車などの管理に特化した省庁を新たに設置する事で一元的に管理するべきです。
(Ⅲ)消費者に信頼してもらうために必要なこと
- 最初は段階的に自動運転車の導入(例:タクシーの自動配車サービス)を始め、車を買ってもらう前に実際に体験乗車してもらいます。
- もし、海外で実用化されて広く普及しているのであればそれをメディアなどを通して自動運転車がどのように優れているかを伝えるのが良いでしょう。
- 自動運転車に搭載するアシスト機能を徐々に強くすることで、不安を取り除きます。
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