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三十一 朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに

吉野の里に 降れる白雪


三十二 山川に 風のかけたる しがらみは

流れもあへぬ 紅葉なりけり


三十三 ひさかたの 光のどけき 春の日に

しづ心なく 花の散るらむ


三十四 誰をかも 知る人にせむ 高砂の

松も昔の 友ならなくに


三十五 人はいさ 心も知らず ふるさとは

ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける


三十六 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを

雲のいづこに 月やどるらむ


三十七 白露に 風の吹きしく 秋の野は

つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける


三十八 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし

人のいのちの 惜しくもあるかな


三十九 浅芽生の 小野の篠原 しのぶれど

あまりてなどか 人の恋しき


四十 しのぶれど 色に出でにけり わが恋は

物や思ふと 人の問ふまで