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一 秋の田の かりほの庵の とまをあらみ

我がころも手は 露にぬれつつ

 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の

衣ほすてふ 天の香具山


足引きの 山鳥の尾の しだり尾の

ながながし夜を ひとりかもねむ


四 田子の浦に うちいでて見れば 白妙の

富士の高根に 雪はふりつつ


五 おく山に もみぢふみわけ なく鹿の

声きく時ぞ 秋はかなしき


六 鵲の わたせる橋に おく霜の

白きをみれば 夜ぞふけにける


七 天の原 ふりさけ見れば 春日なる

三笠の山に 出でし月かも


八 我が庵は 都のたつみ しかぞすむ

世を宇治山と 人はいふなり


九 花の色は うつりにけりな いたづらに

わが身世にふる ながめせしまに


十 これやこの 往くもかへるも 別れては

知るも知らぬも 逢坂の関