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八十一 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば

ただありあけの 月ぞ残れる


八十二 思ひわび さてもいのちは あるものを

憂きにたへぬは 涙なりけり


八十三 世の中よ 道こそなけれ 思ひける

山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる


八十四 ながらへば またこのごろや しのばれむ

憂しと見し世ぞ 今は恋しき


八十五 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで

閨のひまさへ つれなかりけり


八十六 嘆けとて 月やは物を 思はする

かこち顔なる わが涙かな


八十七 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に

霧たちのぼる 秋の夕暮れ


八十八 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ

みをつくしてや 恋ひわたるべき


八十九 玉のをよ たえなばたえね ながらへば

忍ぶることの 弱りもぞする


九十 見せやばな 雄島のあまの 袖だにも

濡れにぞ濡れし 色は変はらず