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五十一 かくとだに えやはいぶきの さしも草

さしも知らじな もゆる思ひを


五十二 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら

なほうらめしき 朝ぼらけかな


五十三 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは

いかに久しき ものとかは知る


五十四 忘れじの 行く末までは かたければ

今日かぎりの 命ともがな


五十五 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど

名こそ流れて なほ聞こえけれ


五十六 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に

今ひとたびの 逢ふこともがな


五十七 めぐりあひて 見しやそれとも 分かぬまに

雲がくれにし 夜半の月かな


五十八 ありま山 ゐなの笹原 風吹けば

いでそよ人を 忘れやはする


五十九 やすらはで 寝なましものを さ夜更けて

かたぶくまでの 月を見しかな


六十 大江山 いく野の道の 遠ければ

まだふみも見ず 天の橋立