ページタイトル 読めばわかる
本を読んでいるガリ勉風の高校生
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読書の効果を徹底的に調査してみました。詳細は目次の各項目をクリック(タップ)して下さい。
※内容は難しいですが読書習慣をつけたくなる情報が満載

読書の効果 目次

集中力 Concentration Power

集中できない人が増えている!?

調べていくうちに以下の2点が分かりました。

①読書は集中力を高める
②オンライン上での情報収集は注意分散を促す

ネットで記事を読んだ事のある方は想像がつくと思いますが、ネット上の記事には多くの目を引くナビゲーション(リンク)や広告、画像リンクなどが散見されます。

『ネット・バカ』によると

リンクは関連作品、あるいは補足的作品を、単に指し示しているわけではなく、そこへ向かうようにわれわれを急き立てているのだ。

どれかひとつのテクストに継続的注意を払うよりも、あれこれのテクストを拾い読みするようリンクは促す。ハイパーリンクは、われわれの注意を惹くようデザインされている。そのナヴィゲーション・ツールとしての有用性は、それが引き起こす注意散漫状態と切り離せない。([1],p130)

スマホでショッピングサイト、動画、SNSなど多くのリンクに誘惑され、集中が分散した状態の女の子

気になったリンクを次々にたどっているうちに、元々何を閲覧したかったのか忘れている事は誰にも経験があると思います。それがまさに注意散漫な状態です。

集中を阻む脳の仕組み

オンラインで文章を読む時、脳のスキャンをした結果、私たちの脳内では主に以下の①と②両方に及ぶ領野で活動が確認されるようです。([1],p172-173)

言語、記憶、視覚領野(文章の処理で活発化)
前頭前野(決定や問題解決に関わる部分:どのリンク文字をクリックするか等。)

「読書」をしている場合、上記のうち、①の領野のみが活発化

一方で、オンラインで文章を読む場合、①と②の両方が活性化

つまり、オンライン上で文章を読む場合、この"①文章を処理する部分(言語野)" と "②クリックするかどうかの判断を下す事(前頭前野)" の間で切り替えが必要になり、

それが繰り返されると「深い読み」が出来なくなる

と言われています。([1],p173)

気を散らされることなく深く読むとき、われわれの脳のなかでは豊かな結合が生じるのだが、これを生み出す能力がオンラインでは大部分停止したままになるのである。([1],p174)

実は私も最近スマホにハマり、本を読まない時期がありました。ある時、久々に読書をしてみると、驚くべきことが。文字を読むのが格段に遅くなり、内容がうまく入ってこず、しかも本に集中できなくなっていたのです。テストでも長文を読むのが辛くなっていました。

ネット検索という方法が出てきてから、自分が望む文章や言葉を、簡単に調べることができる便利な社会だと思いますが、それに伴い、一つ一つの記事を深く読む機会が減り、知識や考えの結合が出来ないため、自分の意見を考え出す力を失っているのかもしれません。

集中力をつけるには読書が最適

上記の流れからも分かる通り、「リンクしたくなる」などの誘惑の無い状態で一つの長い文章(本など)をじっと読む事が集中力をつけるために必要だという事は予想がつきます。

神経科学者、Baroness Susan Greenfieldは、小説を読むことが、この短い集中しか保てないTwitter世代への対抗手段になると言っています。

読書は子どもの集中力の継続時間を長くする+明瞭に考える能力を進化させる([2])

これは、ストーリーにはbeing-middle-end(序章、本文、結論)があり、この構造は私たちの脳が原因と結果、そして意義(意味合い)をリンクする事で、順番通りに考える事を促すからだとされます。

小説などではストーリーに入り込んでいる時、時間を忘れて感情移入したりしている事がありますが、そのように「没頭する時間」というものが必要なのでしょう。

上記「ネット・バカ」では、人間の脳は良くも悪くも変化し、新しい回路を作る事が書かれています(神経可塑性[しんけいかそせい])。脳が新しい回路(ここでは、すばやく情報を得るためにリンクを次々にたどる能力)を作ると、古い回路(ここでは、集中して読み考えを深める能力)は弱まったり消滅するようです。

集中力との関係で言えば、問題なのは(本の言葉を借りれば)

最も抵抗の少ない水路(※脳の回路の事)になる
([1],p57)

という点で、簡単に言えば、「人間の性質上(脳が自動的に)楽な道を選ぶ」という事だと思います。また、スマホページで触れたように、スマホ自身に依存性がある事も加わり、余計にスマホでの情報検索に向かってしまうのだと思います。

野球少年本で文章を読むこととオンラインで文章を読むことはあまり変わらないと思っていたんすけど、無意識的に注意散漫な状態になっていたり、深い読みが出来なくなっていたり、かなりの違いがあることを発見できたっすね。

めーめめーめも同じこと思った

ナカムラ2人とも珍しくまともなこと言いよる

バビー人の(脳の)性質として、無意識に抵抗の少ない(楽な)方を選ぶ、という点も見過ごせない事だと思います。

[1]ネット・バカ インターネットが私たちの脳にしていること ニコラス・G・カー
[2]Mailonline http:/www.dailymail.co.uk/health/article-2193496/Getting-lost-good-book-help-healthy.html 2017/08/30

読み書き能力 Literacy

①リテラシーの獲得

読書をたくさんすれば、読解力や書く力(リテラシー)がつくと子どもの時から言われている人もいると思います。それはどういった理由なのでしょうか。

以下、読書による研究データをまとめた『読書はパワー』[1]からいくつか引用します

アメリカの8学年(中学2年)の1日の(自由)読書量と、国語や語学のテストの成績との間には、あきらかな相関関係があると報告しています。ここでいうテストの範囲は、読解の基本的な技能、批判力、作文力(句読点、語の用法、文体、成句)におよんでいます。(p20)

この事は、第2言語(外国語)の学習でも同じようです。ここでポイントは「自由読書」という点です。言語はあまりにも複雑すぎて、用法や用例をひとつひとつ計画的に、授業で意識的に教える方法(読解・語彙・文法・作文の直接指導)は、「自由読書」に及ばないという研究結果が多数報告されているようです([1]p29-42)。

読書は、文章を読んでいる間ずっと、実用的な言葉の用法・用例などに無数に、また時には繰り返し触れている事になるからだと推測されます。

オランダ語、フランス語を母語とし、英語、ドイツ語を不自由なく操り、日本や中国の方言を研究していた、翻訳家W.A.グロータースも著書において、

"外国語を学ぶ事は、百個の単語を覚えるということではなく、目の前の何千何万という無数の単語から、何が書いてあるか、だいたいの意味をつかむ事である"
(『誤訳』W.A.グロータース 三省堂 1982/7/1 第3版 p.220-221)

と言っています。彼の学習法は推理小説を辞書を引かずに推理して楽しむ事だったようです。言語的な解読で推理し、内容自体も推理するのが楽しかったと述べられています。「自由な読書」こそが、読み書き能力を最も向上させるという事がますます説得力を持っているように思います。

外国語の本を推理して読めているつもりの野球少年のイラスト

②学力全般に関わるリテラシー能力

「自由読書」をすれば、それだけで最高レベルの学力が得られるというものではありません。むしろ基礎を作り上げることによって、高度な学力が獲得できるというものです。「自由読書」をしないと、高い学力を得るのがとても困難になります。(p14)

もちろん学力だけで、人生の善し悪しは決まらないとは思いますが、学生にも社会人に「読み書き能力」が不要だとは思えませんし、可能性を広げるという意味からは決して軽視できない要素だと考えられます。

③読書するだけで語彙が増える??

また、「自由に読書する事」が、語彙力(単語力)を増やす事も明らかになっています。時間的にも語彙を集中的に学習する方法より10倍効率がいいとされています。

100万語を読むならば、子どもの語彙は少なくとも1000語は増える(p23)

この100万語というのは一見すると多いように思いますが、例えば洋書であれば、ティーネイジャー向けの本1冊で4~5万語の単語が使われているらしく、年間で20~25冊ほどという事になります。月に2冊読んでいると語彙が年間で最低でも約1000語増えるという事です。

めーめ好きな本読んでたらいいんや。楽しい事は続けられるしな。

野球少年外国の言葉って難しいですよね… でも、だいたいの意味をつかめばいいんだったら、ボクでも出来るかもしれないっす!

ナカムラ君の"だいたい"は、大体間違ってるけどね。

バビー・・・。

[1]『読書はパワー』 スティーブン・クラッシェン 共訳、長倉美恵子・黒沢浩・塚原博

健康 mental health

読書による健康への効果も見過ごせません。

ストレス軽減効果

私は読書をすると落ち着きます。図書館に行ったり、本屋に行ったりするだけで心が休まるのです。「静か」だから、という理由が考えられます。

しかし実は本を読む事それ自体にも、人のストレスを和らげる効果があるのです。

2009年Sussex大学の研究者はわずか6分の読書で、ストレスレベルが3分の2になることを発見しました。これは音楽を聴いたり散歩に出かける以上の効果です。読書に必要な集中力は、筋肉の緊張を和らげ、心拍数を遅くするからだと考えられています。[1]

また、リバプール大学の"30 minutes reading a week can improve your life(1週間で30分の読書が人生を良くする)" という記事から引用すると

Regular readers for pleasure reported fewer feelings of stress than non-readers, and stronger feelings of relaxation from reading than watching television, engaging with social media or reading other leisure material.(読書を楽しむ人は、読まない人よりもストレスの感情が少なく、テレビを見たり、SNSに触れたりするよりも読書からより強いリラックス効果を得ている)

確かに嫌な事があると、他の事に集中すると、いつの間にか忘れていたり、どうでも良くなっているものですが、読書に、音楽や散歩以上の効果があるというのは驚きました。

脳の老化・アルツハイマー予防

また、California大学の研究では、若年からの日々の読書を含む脳刺激の仕事(読書、チェス、手紙を書くなど)に従事するとアミロイド(脳の大脳皮質などに染み出るようにできるアミロイド班=脳神経細胞の老廃物で老人斑とも言われている[2])の形成を阻害することでアルツハイマー病を予防する事がわかったようです。[1]

脳細胞も使わないと、自分の使命を終えたと勘違いし、死滅して老廃物になるのかもしれません。

本を読むおばあちゃんと近づくことが出来ないアミロイドのイラスト

ナカムラ本を読んで落ち着くってのは、ちょっと分かる気するなあ

野球少年中村さんがいつも授業中、目をつぶって落ち着いているのは読書のおかげなんですね!読書のパワーってすごいっすね

めーめ多分それ、ただの寝落ちやと思うけど

[1]Mailonline 2017/8/30閲覧
http:/www.dailymail.co.uk/health/article-2193496/Getting-lost-good-book-help-healthy.html

[2]一般社団法人認知症予防協会
http://www.ninchi-k.com/?page_id=8 2017/10/19閲覧

脳の活性化 brain Activation

ストーリーを実体験

バビー 「読書は脳全体のエクササイズであり、受動的な活動とはかけ離れている。」

Madgalen及びOxford大学のJohn steinによる言葉です。Mail Onlineより引用します。

‘When we “get lost” in a good book, we’re doing more than simply following a story. Imagining what’s happening is as good at activating the brain as “doing” it.’
(私たちが良い本に没頭する際、私たちは単にストーリーを追う以上の事をしている。何が起こっているのか想像する事は、実際にそれを行っている時と同じように脳が活性化する。)

New MRI scanning techniques now enable science to prove this.
(新しいMRIスキャンの技術は、この事を科学的に証明できるようになった。)

... when we read and imagine the landscapes, sounds, smells and tastes described on the page, the various areas of the brain that are used to process these experiences in real life are activated, creating new neural pathways.
(ページに記載されている風景、音、臭い、味を読んで想像すると、脳が新しい神経回路を作りながら、実生活でこれらの経験を処理するために使用される脳のさまざまな領域が 活性化される事が分かった。)

めーめ読んでた小説の主人公に彼氏ができたら、めーめにも彼氏ができるってことか!

野球少年じゃあボクにも彼女ができるってことっスね!

バビー...何かちょっと違うような気がしますが、そういう想像も大事だと思います。

脳のどこが働いているか

本を読む時に脳がどれほど活発に動くのか、以下、『プルーストとイカ』の説明を元に図示していきたいと思います。

まず、単語の解読段階において、脳では三つの大きな領域が活躍しているようです。([2],p190)

①一つ目の領域

後頭葉(視覚野と視覚連合野)と紡錘状回の広い範囲

後頭葉 紡錘状回

②二つめの領域

側頭葉と頭頂葉のさまざまな領域・・・特に各回と緑上回は音韻処理と視覚処理、綴り処理および意味処理の統合に重要な役割を担う (子どもは言語理解の中枢であるウェルニッケ野も著しく活発に働く)

側頭葉と頭頂葉 角回と縁上回 ウェルニッケ野

③三つめの領域は

ブローカ野(左半球の重要な言語野)

ブローカ野

これらに加え、脳の配電盤である視床と、脳の五層全てを中継する小脳といった 様々な領域を使っているのですから([2],221)、読書をすれば疲れるのも、当然かもしれません。

しかしながら、熟練した読書家は本を読んでも初心者ほど疲れません。

まず、熟練読書家は語彙が豊かです。文法や語彙が豊かであれば流暢な単語解読ができるため([2],196)疲れにくいと想像できます。

ここで、語彙力が豊かとは、単語のなかに存在するたくさんのものを知っているという事を指しています。([2],196-197)

英語を例にすると-sが語尾につくと複数形や三人称単数を意味する、-edだと過去形などを意味する
または、singやsingerは共通の語根を持つが、-erを追加される方singer(歌手)は名詞として使われる。

などの形態素(語根、接頭辞、接尾辞等)を多く知っている状態で、そのおかげで 関連した単語や共通のルールが次々に理解されるのでしょう。

そして、語彙力を豊かにするものが読書である事が『プルーストとイカ』にも言及されています。

単語にひたすら触れることと、新しい文脈から新しい単語の意味と機能を導く方法を見つけ出す事ことによって、古い単語は自動的に理解できるものとなるし、新しい 単語は向こうから飛び込みようにして頭に入ってくる。([2],196)

熟練読書家の脳

流暢に読解する読み手の脳は、それほど労力を必要としない。特殊化された脳領域が重要な視覚・音韻・意味情報を表象し、これを電光石火の速さで検索することを学習したからである。
(中略)
子どもたちが流暢さを獲得するにつれて、若い脳は両半球の賦活(ふかつ)(*)から、左半球のより効率のよいシステムへと切り替えていくのが普通だそうだ。([2],p216)

(*)活力を与えること

0.5秒の間で動く脳

読書家が文字を見た瞬間、細かく言うと、0~0.5秒の間になされる脳の働きを解説していきます。

時間別の脳の表

([2],p220)

まず、他のことから注意をそらし、新しい文字に注目します。(①)

次にその文字を認識し、視覚的特徴(「あ」や「え」の形)を分析します。(②)

次にその言葉が意味のある単語として成り立っているか判断ます(「bear」なのか「rbea」なのか「reab」なのか)(③)

次に、様々な情報が統合されている前頭葉の記憶を使用し、その文字を読みます。 このとき、次の文字に行くか、文字を読み返すかの眼球運動にも影響を及ぼしているのです。(④)
※ちなみに、単語の形状を認識するよりも前に、前頭葉で、文字の情報を音に変換されている可能性があるそうです。

そして、文字を構成する音、音韻(おんいん)を理解します(⑤)

様々な脳領域を使い、その単語を知ることができ、情報が積み重なります。これにより、もっと早く単語を読めるようになっていくのです。(⑥)

バビー このように、読書では様々な脳の領域を使っているため「疲れ」を感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、それを乗り越えることで、脳が格段に進化していくのです。

野球少年手を伸ばして辞書とか読んでると、確かに疲れますね

ナカムラそれは違う疲れやと思うんやわ

[1]Main Online
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2193496/Getting-lost-good-book-help-healthy.html
[2]プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか? メアリアン・ウルフ 小松淳子(訳)

想像力 Imagination power

このページでは、想像力

「Imagination」(自分が見たことも聞いたこともない事象を、頭の中で作り出すこと)

「共感力」(人間関係で必要不可欠となる、他人の気持ちを推し量ること。想像力の中でも重要な能力)

という二つの項目に分けて、解説します。

Imagination

TEDEd「The neuroscience of imagination - Andrey Vyshedskiy 」(想像力の神経科学 - アンドレイ・ヴィシェドスキー)

ここでは、この動画の要点をまとめ、想像力について解説しています。

見たことがないものを人はなぜ想像できるのか!?

「パイナップルのバランスをとるイルカ」

そんなもの見たことがないはずなのに、人はこれを想像することができます。
人々はこの行為に慣れてしまっていますが、実際にはとても複雑なことをしているのです。

新しくて奇妙なイメージを作り上げることは、写真の切れ端からコラージュを作るようなものです。 しかも、脳は何千という電気信号の洪水を手際よく処理して全てを正確なタイミングで送らなければなりません。

記憶

人は、物体の特徴を符号化します。 その符号化した情報をひとまとめにした「物体そのもの」の心像(意識に現れる像)が、頭の中で組み立てられるのです。

パイナップルであれば、「尖った」「果物」「茶色」「緑色」「黄色」が符号化され、 その一つ一つの特徴が集団を形成し、「パイナップル」を記憶するのです。
イラストでの解説

タイミング

人が、物体を符号化して記憶していることは分かりました。
しかし、「パイナップルのバランスをとるイルカ」の心像は脳に記憶されていません。
なのに想像できるのはなぜなのか。
ある仮説では、「タイミング」が重要であるとされています。

「パイナップル」と「イルカ」を記憶していた細胞が、同時に活性化されると、この二つの心像を単一の事象として認識するのです。
イラストでの解説

そして、二つのタイミングを合わせるものが、前頭前皮質であるとされています。
「パイナップル」や「イルカ」などを記憶している細胞に信号を送り、同時に活性化させ、 実際に見たことがないものを想像することができるようになるのです。

しかし、ここで一つ問題があります。
いくつかの心像を記憶している細胞は、前頭前皮質と非常に離れたところにあるのです。
同時に活性化させなくてはいけないのに、同じ速さの信号では、タイミングがあいません。
イラストでの解説

しかし、子供のころから発達している脳には、伝える速度を変える方法が備わっています。
それが「ミエリン」という脂質です。
ミエリンに覆われると、速度がスピードアップします。
100層も重なっているものだと、100倍以上の速度が出ます。
このミエリンの層の厚さによって、伝達の速度を変化させているのです。
イラストでの解説
このミエリンの形成は子供のころから起こります。
つまり、脳の発達ともに想像力は進化していくということです。

共感力

共感力が低下している!?

以下はアメリカでの調査ですが、日本でも同じことが進行しているのではないかと予想します。

Michigan大学はここ10年で大学生の間で共感する力が48%も低下している。 (自分を重視し、他者を軽視する傾向)([1])

またThe Globe and Mailによる記事(2017/08/30)では

FacebookなどのSNSが盛んになり始める2000年ころから共感力の低下が著しい。
これらの物理的に離れているというオンライン環境は、①自分を持てはやす(有名人として扱う=承認欲求)事や②各個人間に緩衝(他者との干渉を断ち切るもの)を作り出すため、 他者の痛みを無視する事を容易にし、時には他者に苦痛を負わせることさえする。([2])

想像力があるから共感できる

私たちは、想像力が本によって鍛えられると考えています。

活字というのは、音声や映像などの媒体と比べると、情報量が圧倒的に少ないです。
情報量が少ない活字では、自分で考えることが増え、想像力で補うことが必要不可欠となります。

鑑賞に値する写真や動画の画質、あるいは映画を楽しむ際の3Dクオリティなどは、当然、解像度が高いほうがいいに決まっている。 しかし、人間の脳の動きの側から見ると、話は変わってくる。 解像度が高いものを見れば見るほど人間のイマジネーションのレベルが下がってしまうからだ。すべてが詳細に見えてしまえば、あいまいな部分を想像する必要はない。([3],p51)

人は日々想像を繰り返し、想像力を鍛えていると考えられます。 脳の活性化でも引用した通り、

ページに記載されている風景、音、匂い、味を読んで想像すると、 脳が新しい神経回路を作りながら、実生活でこれらの経験を処理するために使用される脳のさまざまな領域が活性化する事が分かった。([1])

想像することで、人は自分とは全く違う人生を経験することも可能というこの現象は、テレビやゲームでは起こらないそうです。

想像するのが疲れる→見るのが楽な映像に依存する→もっと想像力がなくなる→人の気持ちがわからなくなる
解説通りのイラスト。主人公は女の子
という悪循環を打破し

少し疲れるが読書をしてみる→あいまいな部分を想像で補う→想像力が備わる→相手の気持ちが考えられるようになる
解説通りのイラスト。主人公は男の子
という脳にしていきましょう。

他人を理解する力

子供向けには「絵本」でも効果があるようです。 絵本というものは、まだ他者を理解できず自己中心的に考える幼児の脳に、 他者への理解を教える素晴らしい教材なのです。

幼い子どもたちは読むという行為に触れることによって新しい感情を体験することを学ぶ。それがひいては、より複雑な情動を理解するための心構えを与えてくれるわけだ。([4],p131)

3~5歳の子どもにとって、他者を理解し、共感することは簡単なことではありません。
なので子供たちは、絵本の物語を通して、登場人物の思考に共感し、理解しようとします。
私たちは、くまでもなければウサギでもない。お姫様ではないし、王子様も来ない。空を飛び、月の上で冒険することはできないのです。
しかし、それを「知る」ことができ、想像して楽しむことができる。それが絵本です。
こんな子供のころの経験が今の共感力の元となっているのです。

バビー 私が特に覚えているのは「おやすみゴリラくん」という絵本です。絵もお話もいまだに覚えています。
もちろんそのときは、ただ何も考えずに楽しんでいましたが、 今考えてみると、あのときの私は、
「なぜゴリラくんは、おじさんのカギを取ったのか」
「なぜ他の動物たちの檻を開けるいたずらをしたのか」
と、ゴリラくんの行動の理由を確かに探っていたように思うのです。
感情なんて言葉も知らない頃から、私は絵本を使い、人の気持ちを考えることを体験できていたのではないでしょうか。

[1]Mailonline
http:/www.dailymail.co.uk/health/article-2193496/Getting-lost-good-book-help-healthy.html
[2]TheGlobeandmail
https//beta.theglobeandmail.com/life/todays-college-kids-are-40-per-cent-less-empathetic-study-finds/article1371775/?ref=http://www,theglobeandmail.com&2017/08/30
[3]本を読む人だけが手にするもの 藤原和博

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