読書が苦手な人へ
1.本をついつい開いてしまう環境作り
まず、「役に立たない読書」という本の一文をご覧ください。
この本の著者、林さんは、「随時(ずいじ)読む」(=好きな時に読む)と言っています。
実は、初心者にとってはこれが高いハードルになります。
なぜなら、そういう習慣がそもそも無いからです。
ではどうやって「随時読む」習慣を付けるのか。すごく簡単です。
2つほどあるのですが
その1 とりあえず本を持ち歩く
その2 家などで、いつも居る場所に本を何冊か置いておく
この2つをまずやってみてください。
つまり、いつでも本を手にとれる環境を作る事が極めて大事なのです。
また、一冊の本をずっと読む必要もなく、同時並行で、違う本を何冊も読むのも飽きが来なくていいそうです。外に持ち歩くことで、隙間時間を使えばたくさん読み進めることもできるし、違う環境で読めるので良い気分転換にもなります。
2.達成感が大事
本の好みはひとそれぞれですが、子供から大人まで幅広く読める、個人的にもおすすめの本があります。
それは「ショートショート」というジャンルです。
「ショートショート」とは、普通のお話より極端に短いもののことで、1ページにも満たない話もあります。
読書の基礎体力が出来ていない人や、時間が無い人にもおすすめです。
この「ショートショート」のすごいところは、短い中にも伏線がしっかりと張られてあるところです。オチでは、「なるほどっ」と目を輝かせてしまいます。 また、一冊20~30分(一話1~3分程度)で読み終える事が出来ます。本を一冊すばやく読み終える事は達成感も生まれ、喜びが生じるため、自然と次の本を求める事にもつながります。
即席ショートショート4コマ タイトル 「ロボット」
①
②
③
④
また、「読書はパワー」という本によれば、漫画ですら読書への橋渡しになるようです。一見するとイメージが悪いのですが、実際に効果があると実証されています。 ただ、個人的に思うのは、「バシッ」「うぎゃー」とかの擬音語ばかりで、文字列が少ないと脳で結びつく語彙が増えないため、効果は薄いかもしれません。
3.指でガイド
私は日本語の本ならばすばやく読み進められますが、英語が苦手で洋書を読む事は苦手です。
すぐにどこまで読んでいるかわからなくなったりします。
これは読書ページの脳の活性化の項目で触れているのですが、単語とそこで使われている状況に応じた意味をつなげるための脳の回路がまだ発達しきれていないからだと思います。
このような場合、指ガイドがおすすめです。子どもがやるイメージですが、大人でも効果があります。
1か月で300冊? -プロの行う本の読み方とは
ここでは、インプット(=情報を蓄積するための読み方)を紹介します。
1.速読
本の読み方には『熟読』『普通の速読』『超速読』があると言われています[4]。
熟読は文字通り、一行一行しっかり読んだり、重要なところに線を引いたりしながら読むやり方です。1ページにおよそ1分ほどかかります。
最初に、TVでもおなじみ、第一線で活躍されておられるジャーナリストである池上彰さんと、佐藤優さんの共著である、『僕らが毎日やっている最強の読み方』から、速読法を引用します。
超速読
つまり、ほとんど試し読みのようなものです。内容を理解するというよりは、その本が熟読に値するかを見極める読み方です。これは後述しますが論文などで情報をまとめる際に極めて有効な手段だと思います。
速読
このとき注意すべきなのは、本の内容を100パーセント理解するという完璧主義をなくすことだそうです。大雑把に把握すれば良いのです。
一般的に学校の論文が苦手な人は、本を読みなれていないため、熟読に値するかも分からないのに、1冊に時間をかけすぎてしまいます。そうやっていると、何冊も読むのが辛くなり、結局ほとんどろくにテーマ全体を理解せずに、他人の文章の切り貼りだけで字数だけを埋めていくという過ちを犯しがちです。
また、速読(飛ばし読み)に関して、『東大家庭教師が教える頭が良くなる読書法』によれば、
①「質問に対応するところだけを読む」
②「著者が示した要点だけをくり返し読む」
の二つの方法があるそうです。
①について
②について
これら2つは、上記速読法の、「重要なところにあたりをつける」ための具体的な方策になると思われます。 このように速読を極めていくと、本当に大事なところに目が行くようになり、質の高い情報を集める事が出来るのだと思います。
2.情報の保存
次に集めた情報を保存していく方法の紹介です。上手く情報を整理・保存していると、何か文章を書く際にすぐに引っ張り出せるし、また、その整理する過程において脳にもある程度情報が保存されるため、現実での対面的なコミュニケーションでも役に立つでしょう。
①メモに残す
「役に立たない読書」の著者である林望さんは、読んでいて上手いなあと感心した文章に出会うと、カードにメモしておくのだそうです。
書きこむことで読書がただの作業でなくなり、自分の中(脳)に落とし込んでいけるのです。
②本をバラす(*自分で購入した本のみ)
学生は普通の本だけでなく、参考書や問題集などを読むことも多いでしょう。そんなとき、効率よく勉強するために、本をバラバラにすると読みやすいです。
*当たり前ですが、借りた本では絶対にやらないで下さい。犯罪です。
本に直接書き込んだり、折り目をつけたり、ちぎったりなどして、自分が使いやすいようにカスタマイズすると、その冊子は自然と自分に馴染んでくるものです。
自分に本が馴染むという意味では、電子書籍よりは紙媒体の本がはるかに優れていると私も思います。
3.その他
① 背表紙だけ読む
まるで作家気分。タイトルからストーリーを創作してみる。
何かを作るためや、書くために本を読む人がいるでしょう。そんな人たちの手助けとなる創作意欲を引き出すための読書法として、背表紙だけ読むという読書法があります。
本のタイトルは、タイトルだけではどんな内容の本か分からないものも多いです。
最近話題の「君の膵臓を食べたい」も、題名だけではなんのことかわからないでしょう。そんな題名から、どんな内容の本だろう、自分だったらどんな話をつくるだろう、と考えることが、創作のヒントになるということですね。
②新聞も読んでみる
もうすでに本を読んでいるという人は「新聞」に挑戦してみてもいいかもしれません。
新聞は、世の中を“知る”ための最良のツールであり、読むことで、世界の動きを俯瞰的にざっとさらうことができます。プロの読み方では
新聞は基本的に飛ばし読みで、見出しを見て読むか迷った記事は読まないが原則です。
朝刊の文字数はおよそ20万字(およそ新書一冊以上の量)と言われており、じっくりと読んでいれば時間がなくなってしまうからです。
大切なのは、新聞にかける時間を決め、
①「見出しだけで済ませる記事」、
②「リード(見出しと本文の間に書かれてある文章)まで読む記事」、
③「最後の本文まで読む記事」
の三段階に分けて読むことです。([4],p80)
読みなれた人へ
読書好きの皆さんは、面白い本をつい一気に読んでしまうことありませんか?
私は本の続きが気になりすぎて、ご飯も食べずに何時間も読書をした経験があります。
しかし、
とあるように、確かに何時間も活字を読んでいると目は疲れ、
同じ態勢なので身体も疲れてきます。
そうなってくると、なんとなくで読み進めてしまい頭には内容が残りません。
何度も戻って同じページを読む、という事態も起こります。
本を読んで疲れた時は、どれだけ続きが気になっても一度休み、脳と体をリフレッシュさせることが大切でしょう。
至高の読書法
ここまで、目的別にいくつかの読書テクニックを紹介してきましたが、最高の読書法は
好きな本を自由に楽しむ事だと言えるでしょう。本を好きな人はテクニックに頼らずとも、本をどんどん読んでいます。
好きな本を楽しむ=「自由読書」は言語教育の中で最もパワーがあると言われています(→読み書き能力のページ)。また、「自由読書」をするかどうかは、学力の習得にも意義を持っています。
自由に本を楽しめば、娯楽として充実した時間がおくれるだけでなく、充実した学力も身につくわけですね。
番外編-高校生は何のために本を読む?
高校生の現状を把握しておきます。 以下は、学校で行った『なんのために本を読んでいるのか』のアンケート結果(約300名分)です。
読書をする理由 | |
---|---|
もとから好き | 11% |
娯楽として | 43% |
何かを得るため | 15% |
強制されるから | 23% |
なんとなく | 8% |
『娯楽として』が一番多いですね。
二番目に多いのは『強制されるから』です。
先述した通り、プライベートで本を読む生徒は半数以下です。 読まない生徒は朝読などで、「読まされる」と否定的に捉えている事になります。読書を"強制する"事については賛否あると思いますが、形が強引であっても、"何もやらない"よりは読書の効果(⇒読書ページ※難解につき注意)を得られている事になりますし、それをきっかけに読書が好きになる人が出現すれば、なお良い事だと思います。
また、『何かを得るため』の内訳として「読解力を鍛えるため」「漢字の勉強になる」「国語力をつけるため」など、 自分の能力をあげるために読んでいる人が多いことが分かりました。こういった方々が将来、「読書自体が好き」というところまで行ってくれる事を当サイトでは願っています。
[1]役に立たない読書 林望
[2]読書はパワー スティーブン・クラッシェン 訳長倉美恵子・黒沢浩・塚原博
[3]東大家庭教師が教える頭が良くなる読書法 吉永賢一
[4] 僕らが毎日やっている最強の読み方 新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身に付ける70の極意 池上彰、佐藤優