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銀河鉄道の夜には、星や銀河に関係する語彙が多く登場します。
銀河の世界に浸りたい方はこちらをどうぞ。
天の川 / インデアン / 大熊座 /
銀河 / 琴の星 /
蝎の火 /
双子のお星さまのお宮 / 星
あまのがわ[天の川] 【銀河】【賢治の思い出】 午后の授業 天気輪の柱 銀河ステーション
北十字とプリオシン海岸 鳥を捕る人 ジョバンニの切符
夜空に白い川のように広がる星の集まり。太陽系の属する銀河系を地球から見た姿。星々が非常に遠いため雲のように見える。本文中では川、銀河の川などとも呼ばれる。先生が説明に用いたレンズ状銀河系のモデルはA・トムソンの『科学大系』によるもので、今日の銀河の説とは若干異なる。天の川中の星々を牛乳中の脂肪にたとえる部分は、アレニウスの『最近の宇宙観』(一戸直蔵訳、1920)の中で、アレニウスが、ジュクラウが牛乳中の分子に関して述べた一節を引用して天の川中の星の誕生を説明した部分の影響とも考えられる。賢治は天の川の光が風によって揺らめく様子を好んだ。(参考:宮澤賢治語彙辞典22p)
(牛乳 ・ 銀河 ・ すすき ・ 星 ・ 模型)インデアン 【銀河】ジョバンニの切符
北アメリカの原住民。射手座の南東に位置する南天の星座。日本からは上半分がかろうじて見える。インデアンが登場するこのあたりをコロラド高原にたとえ、新世界交響曲を流している。イメージとしては原曲のアメリカン・インデアンのそれも生かされ、天界と地上が見事に混融している。(参考:宮澤賢治語彙辞典66p)
おおぐまざ[大熊座] 【銀河】【他の物語】 天気輪の柱
北の空に輝く星座。北斗七星を含む。黒い丘でジョバンニが目にする。
神話での大熊は、大神ユーピテルの子を身ごもったことで化身させられたニンフ(女精)のカリスト。ユピテルの妃ユノの嫉妬のために一年中夜空を回らねばならなくなったという。ぎんが[銀河] 【賢治の思い出】【銀河】 午后の授業 ケンタウルス祭の夜 銀河ステーション
北十字とプリオシン海岸 ジョバン二の切符たくさんの小さな星の集まり。天の川。川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりする。
学校の先生は両面凸レンズの模型を使いながら、「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの光るつぶがみんな私どもの太陽と同じようにじぶんで光っている星だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。こっちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒即ち星しか見えないのでしょう。こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち星がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるというこれがつまり今日の銀河の説なのです。」と説明する。星が集まるところほど、ぼんやりと白く見える。
賢治の意識の中には、宇宙=銀河系(玲琉レンズ)、銀河の窓=裂け目(石炭袋)、そしてその先の異空間、といった図式ができていたようである。当時の天文書多くは、天の川の中の暗黒星雲(星間物質が後方の光を遮断したもの→石炭袋)を、空隙、穴、裂け目、と表現していた。(参考:宮澤賢治語彙辞典189p)
(牛乳 ・ 天の川 ・ 星 ・ 石炭袋)ことのほし[琴の星] 【銀河】【他の物語】 天気輪の柱
琴座。天の川の西岸にあり、天頂付近を通る。琴座のベガはわし座のアルタイル、白鳥座のデネブと共に夏の第三角を構成する。この琴はギリシャ神話にある、冥界にいる妻を連れ戻そうとして失敗した楽人オルフェウスの嘆きの琴に由来する。オルフェウスは「後ろをふりかえってはいけない」という約束を守れなかったため、妻と地上に戻ることができなかった。ジョバンニがふりかえって見るとカムパネルラの姿が見えなくなっていたという部分はオルフェウスの話と似ている。さそりのひ[蝎の火] 【銀河】【賢治の思い出】【他の物語】 ジョバンニの切符
自分の体をみんなの幸せのために使って欲しいと願い、焼け死んださそりの火。その火は、ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく燃えている。
南天の空に赤く輝く星。アンタレス。アンタレスが赤いのは表面温度が太陽の半分の3000度ほどしかないためである。表面温度が高いほど星は青白く光る。S字型のさそり座の中央、心臓のところに位置する。
さそり:尾にかぎがある。その針に刺されると致命傷を負う可能性がある。賢治が最も好んだ星座。賢治がこの星座を好んだのにはひとつにはアンタレスの赤さ、もうひとつは蝎の毒虫としての生き方にみせられたからであろう。ギリシア神話では狩人オリオンの高慢におこった女神ヘラにつかわされて、オリオンを毒殺したという。童話[銀河鉄道の夜]ではこれをふまえつつ、「わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた(中略)神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸のために私のからだをおつかい下さい。」と、弱肉強食の世界からの救済を説くためのたとえ話として少女に語らせている。蝎座が銀河の中心の方向に近く、多くの暗黒星雲(→石炭袋)が存在することと結び付けたと考えられるほかの作品もある。蝎座が球状、散開、散光星雲をたくさんかかえているのは銀河の中心方向に近いためである。天の川も複雑に入りくんでいる。
(石炭袋 ・ リチウム ・ ルビー)ふたごのおほしさまのおみや[双子のお星さまのお宮] 【銀河】【他の物語】 ジョバン二の切符
ふたご座。小さな水晶でこさえたようなお宮がふたつならんでいる。一つは白色のカストル。もう一方はオレンジ色のポルックス。それぞれを銀星、銀星と呼ぶこともある。ギリシア神話ではこの双子星はゼウスの子とされ、ポルックス(弟)は不死身で、カストル(兄)がイダズ兄弟に殺された後、弟は自分の命を兄に分け与え、一日交代で神々の世界とあの世に一緒に暮らしたという。いかにも賢治好みの神話で、双子が白鳥(ゼウスの化身)の子である点を考えると童話[銀河鉄道の夜]と[双子の星]の結びつきはかなり重大な意味をもってくる。(参考:宮澤賢治語彙辞典610p)
ほし[星] 【銀河】 午后の授業 天気輪の柱
銀河を構成するもの。夜空に輝いている小さな光の粒。星がたくさん集まるほど銀河はぼうっと白く見える。銀河を川と考えるならば、川底の砂や砂利の粒にあたり、巨きな乳の流れと考えるならば、乳の中に細かに浮かぶ脂油の球であるといえる。
(天の川 ・ 銀河)