実験で楽しくなる力学教室
Chapter 1
Chapter 2
Chapter 3
速度
速度の合成・分解
加速度
運動の法則
重力加速度と無重力
等速直線運動
等加速度直線運動
放物運動
終わりに
3-8. 放物運動
さて、平面内の運動の様子(速度とか加速度とか)は、座標軸を設定して、 成分で考えることによって縦と横とで分けて扱うことができるんだったね。
放物運動
ここでは、投げ出された物体について考えてみよう。
この運動の仕方を
「放物運動」
と呼んでいるんだ。
"放物線を描いて"ってよく言うよね?
そうだね。
さて、下の図を見て欲しい。このボールは今飛んでいるところだ。ボールは速度Vを持っているね。
それでは、このボールが受けている力って、一体なんだろう?
空気抵抗?
空気抵抗はこの際無視しよう。複雑になってしまうからね。
他には何だろう?
重力ではないでしょうか?
他にあるかな?
えーと……。
実は、無いんだけどね……。
さて、速度の縦方向の成分をVy、横方向の成分をVxと置く。
そしてこの運動の様子を、
縦と横に分けて考えてみる
んだ。
重力は縦方向、重力の大きさは一定だから、
縦方向
には、初速度が上向きVyで、加速度が下向きg
の
等加速度直線運動
をするということになるね。
"下向きに等加速度直線運動してる"ってどういうこと?
縦の部分だけ見るということは、横には全く動いてないとして考える、ということなんだ。
下のアニメーションの、帯の動きを目で追ってみよう!
では、次に縦を無視して、横向きの運動だけ考えてみよう。
横向きの力を受けていない。 ……ということは、横には等速直線運動をしていると言えるよね?
ということで、こんなに一見複雑な運動が縦と横とを分けて考えるだけで、等加速度直線運動と等速直線運動として表すことができるとわかったね。
なので、この運動を式で表すと、
物体の動きは全て等加速度直線運動と等速直線運動だけで考えることができるという訳ですね……。
いや、そういうわけじゃないんだ。
力が一定でない場合はもっと複雑な運動をするよ。
今回はたまたま、受ける力(重力)が一定だったからだね。
では、それに関連して一つ実験をしてみよう。
装置はこんな感じだ。
ここはジャングルの奥地。今、一人のハンターが樹からぶら下がっている猿を猟銃で狙っているという設定だ。
左にいるハンターが右にいる猿に照準を定めて、引き金を引くと同時に、猿は手を離してしまうんだ。
……この装置の場合、左から右の物体に向けてボールを打ち出すのと同時に、右の物体を落下させる。
さて、するとどうなるかという実験だ。
当たったね。さて、何故だろう?
わからないです。
もし
重力がなかったら、飛ばした玉の方は、等速直線運動をして目標の物体に当たる
よね。
そのはずが、両方の物体が、重力のために、同じ加速度を持ってだんだん同じ分だけ落ちてきた
。
……と考えたら、当たるのは当然だということになるよね。
同じ重力が掛かってるからってこと?
いや、重力じゃなくて、同じ重力加速度。重力は質量によって変わるからね。
だけど、二つの物体にかかる加速度は変わらない。
何故ですか?
ほら、ガリレオがピサの斜塔から大小二つの玉を同時に落として……。
という話を重力加速度のところでやったよね?
あぁ、そういえば……。
と、いうわけで猿は残念ながら撃たれてしまうんだ。
これは"モンキーハンティング"という有名な実験なんだけれどね。
運動は縦と横に分けられるので、放物運動のときは、
・縦方向に等加速度直線運動
・横方向に等速直線運動
をするといえる。