
一斤染(いっこんぞめ)
C 0 M 15 Y 9 K 0
紅花の花1斤(600g)で絹1疋を染めた染色の色のこと。淡いピンク色。
古代、紅花は大変高価な染料で、それを用いた紅染も、濃い紅色になるほど価格は非常に高額になりました。
そこで、一種の経済政策としての配慮もあり、濃い紅染めの一般の使用が禁じられていたのですが、
平安時代後期、色の禁制の取り締まりが一番困難であったのも紅染めで、少しでも赤く染めようとする者が
後を絶たなかったといわれています。
絹1疋を染める紅花の量を一斤と定めたことには、一般に使用が許される紅染の色を標準化するという意味も
あったらしいです。

桜色(さくらいろ)
C 0 M 18 Y 7 K 0
紅染の一番淡い色で、満開の桜の花のような色のこと。
最近は桜というと、ソメイヨシノを思い浮かべますが、この色名が使われるようになった当時の桜といえば、
山桜のことでした。
平安朝の女官が着用した重ね着の色の配合を表す襲(かさね)の色目にも桜襲があり、諸説あるものの、
どれも表は大抵白で、裏は紫または赤、そのほかも赤から紫にかけての系統色とされていて、
まさに山桜の花と若葉の色の取り合わせにならったものです。

フレッシュ・ピンク
C 6 M 22 Y 9 K 0
フレッシュ・ピンクとは、人体の肌の中でも一番美しい部位の肌(掌や指先、頬など)から
とられた色を表す色名です。
英語には、顔色を指すcomplexion(コンプレクション)という言葉があるにもかかわらず、
これは色名には使われていません。肉なのか肌なのかわからない曖昧なフレッシュがもっぱら
肌色の表現に用いられるというのは、この色名が人々の記憶の中にある肌色のイメージを
表しているからでしょう。

ベビー・ピンク
C 0 M 25 Y 11 K 0
欧米で乳幼児服の標準色として、習慣的に用いられているピンクです。
実はこの色名が定着したのは案外新しく、アメリカの権威ある色彩辞典によれば、
1928年以来のことだといいます。
19世紀後半になって、合成化学の成果としての新しい科学染料が次々に登場するようになり、
初めて商品の色として「ベビー・ピンク」という色の標準化が可能になった、と考えれば、
この色名が通用するようになった時期が新しくても不思議ではありません。

シェル・ピンク
C 0 M 32 Y 22 K 0
海岸にある貝殻の内側に見られる淡いピンクのこと。
といっても貝殻の内側がピンク色をしているわけではなく、それは光の干渉によって
見える色にすぎません。
人間が偶然に発見した自然の色の奇跡が、19世紀に新しい色名を創作するきっかけに
なったのですが、そのピンクを顔料や染料で正確に複製することは、もちろん不可能に
近いことです。

鴇色(ときいろ)
C 0 M 40 Y 20 K 0
この色名は、鴇が飛ぶときに見える風切羽の薄いピンクから付けられたものだそうです。
古来の日本語の色名には、動物から取られたものがほとんどありませんが、江戸時代になると
鳶や雀、鶯などの身近な鳥の羽から付けられた染色の色名が現れます。鴇色もそのひとつであったに
違いありません。
また、この色は若向きの和装の染色には欠かせない色です。

撫子色(なでしこいろ)
C 0 M 48 Y 16 K 4
英語のピンクは撫子や石竹の花のことでもあります。
撫子色はいわば典型的なピンク色ということになります。
撫子は秋の七草に数えられているのに、撫子襲は何故か夏の色になっています。
表は紅、裏が青(たいてい緑のこと)です。唐撫子という和名もある石竹は、
英語でもチャイニーズ・ピンクです。その石竹色という色名は撫子色の別名でもあります。

サーモン・ピンク
C 0 M 48 Y 37 K 0
現在もよく使われている英語の色名の中では、比較的古いほうでしょう。
1776年以来使われています。
1930年に発行されたアメリカの権威ある色彩辞典の編著者によれば、
本来、サーモンだけで色がわかるのだから、ピンクは気紛れな現代風のお飾りだといっています。
鳥や獣の羽毛や毛皮の色からとられた色名は、日本語にはあまり多くありませんが、
英語では珍しくありません。
しかし、魚の肉の色からとられた色名となると、英語でもほかに思い当たるものはありません。
というより、もともと魚の名前からとられた色名そのものが殆どありません。
鮭の身の色はきっと特別な印象を与える色だったのでしょう。

オペラ・モーヴ
C 8 M 48 Y 0 K 0
20世紀になったばかりの1902年に、英語の色名にオペラ・ピンクが登場します。
また1927年には、明るい紫色のオペラ・モーヴという色名が現れます。
1859年、色鮮やかな赤紫色のアニリン染料が発見され、それが絵の具にも用いられるように
なりました。一方、19世紀後半には、ヨーロッパの大都市に立派な歌劇場が次々に建設され、
新しい市民の社交場になり、髪型から服飾、装身具などにオペラ風の流行が生まれましたが、
このピンクやモーヴがそのオペラ劇場の流行から派生した色であったかどうか、色名の来歴は
明らかではありません。

紅梅色(こうばいいろ)
C 3 M 52 Y 20 K 0
平安時代、特に後半に最も愛好された染色といえばまず紅色で、禁色とされた濃紅はもとより、
その薄い染色のピンクも大変愛好されたそうです。
濃いピンクの紅梅色も人気があったと見えて、襲の色目をはじめ、当時の文献にはしばしば登場する
色名です。清少納言は「枕草子」の中で、女の表着の色として、薄色を推奨し、その中に紅梅色も
あげられています。
しかし清少納言はこの色を見飽きする色ともいっています。

コーラル・ピンク
C 0 M 50 Y 38 K 0
ヨーロッパでは地中海沿岸地方で赤珊瑚がよくとれたそうですが、最も高価なのはそれではなく、
桃色珊瑚とされています。色名でもコーラル・ピンクが一番よく知られているのはそのせいでしょう。
実は1513年に色名として記録されているコーラルは、ピンクではなくレッドだったようです。

オーロラ
C 0 M 53 Y 50 K 0
オーロラは、今では南北両極の空にかかる極光のことをいいますが、本来はローマ神話の
あけぼのの女神のことで、この色名も夜明けの空の色を表しています。色はやや黄みのピンク。
18世紀に色名として使われるようになり、黄に近い色から赤みのピンクまで、
かなり広い範囲の色を表すのに用いられています。

ローズ・ピンク
C 0 M 58 Y 20 K 0
花の色からとられた英語の色名としては、これはおそらく最古のものでしょう。
英語では最初、ローズはレッドとピンクの両方の色を表していました。
つまり赤からピンクにかけての幅広い色調を全てローズといっていたようです。
ローズとローズ・レッド、ローズ・ピンクの区別は後世に便宜的に作られたものです。

桃色(ももいろ)
C 0 M 59 Y 29 K 0
古くは桃染めの色のこと。「つきそめ」と読むという説もあります。
「万葉集」にすでに桃染めを読んだ歌があるので、当時から桃色という色はあったのです。
桃色は桃の花のピンクのことですが、英語のピーチは果実の色のことで、薄いオレンジの色名です。

珊瑚色(さんごいろ)
C 0 M 55 Y 30 K 0
赤みのある珊瑚は昔から装身具によく用いられていたので、特に赤珊瑚か桃色珊瑚の色から
この色名が生まれたと考えられます。
日本人の先祖も珊瑚の枝や幹を磨いて磨いて玉やかんざしなどの装飾品を造り
珍重していました。
仏典で七宝といわれる7つの宝物の中にも珊瑚があげられています。
英語の色名コーラルよりも珊瑚色は色鮮やかとされています。
しかし、最近では珊瑚色とコーラルとは、どちらの色名でも殆ど違いはなくなり、
ほぼ類似の色を表すようになりました。

シュリンプ・ピンク
C 0 M 61 Y 48 K 10
シュリンプは食用の小海老のこと。
プローン(prawn)というやや大きい車海老の名前も同じピンク色の色名になっています。
たぶん同じ海老のことなのでしょうが、フランス語のクルヴェット(crevette)も
やはり同じピンクの色名として用いられます。
これらはそれぞれの海老をゆでたときの甲殻の色のようなピンクなのだそうです。

東雲色(しののめいろ)
C 0 M 59 Y 55 K 0
東の空が夜明けの光に色づくのを思わせるほのかな黄赤色の染色名。
曙色ともいいます。
これも、夜明けの色に染まった空のような色を表現したものです。
平安時代からのピンク系の色を表す伝統的な色名は、紅花による染色であることを表す
一斤染、退紅、薄紅であったり、桜色、紅梅色、撫子色のように、身近な花から
とられたものが殆どでした。
近世になってはじめて、曙や東雲などが色名の材料にされるようになりました。

退紅(あらぞめ/たいこう)
C 13 M 52 Y 34 K 0
「退」は「褪」と同じ意味で、紅染めが色あせたような染色の色の形容。
やはりピンクのことになります。
「たいこう」とも読みます。

薄紅(うすくれない)
C 0 M 64 Y 32 K 24
染色の色名の薄紅は、紅梅色の薄い色で、退紅よりは濃い紅色のことになります。
そして、後世にこの色名を「うすべに」と読むようになります。
室町時代後期から江戸時代にかけての近世になると、染色専門の職人が成り立つようになり、
紅染めの染め屋を紅師、紅屋といいますが、彼らの染めた薄紅は昔よりかなり濃いピンクに
なったといいます。

オールド・ローズ
C 14 M 60 Y 31 K 15
英語の色名にオールドという形容が付くと、古い、昔の、という連想から、
灰色を帯びたくすんだ色のことになります。
グレイッシュな渋い色にはたいていオールド、またはよく似た意味のアンティック(antique)という
修飾語が付いています。
オールド・ローズはその中では最も有名な色名で、色彩辞典では1892年に記録されていますが、
ビクトリア朝(1837~1901年)を通じて、大変もてはやされた色であったそうです。

カメリア
C 0 M 77 Y 35 K 7
椿の花の色からとられた濃い紫みのピンクの色名。
キリスト教布教団体であるジェスイット会の旅行家、J・カメル(Josef Kamel)が
この植物を東洋から持ち帰ったので、彼の名前からカメリアと名づけられました。
色名は1899年という世紀末に出現しています。

パステル・ピンク
C 16 M 27 Y 18 K 0
描画材料としてのパステルは、18世紀になってヨーロッパに広まりました。
イギリスの知識人の間でパステルが愛好されるようになったのは、ビクトリア朝の頃で
19世紀になってから。
この色名は1899年という世紀末に出現しています。
パステルは炭酸カルシウムや白亜に顔料を混ぜて、アラビアゴムで練り固めたものなので、
その色の表面は細かい粉末で覆われていて、光をあらゆる方向に拡散反射します。
その結果、白っぽい柔らかな感じの色に見えます。
だから原色調や暗い色よりも、明るい中間色調にその特徴が発揮されるので、
そんな色合いをよくパステル調といいます。
このピンクも、パステル調のピンクのことです。

梅鼠(うめねず)
C 17 M 35 Y 26 K 40
「うめねずみ」と読むことも多いです。赤みの鼠色を表す江戸時代の染色名。
この時代の色名に梅の字が付いていると、一般には紅梅に関係があって、
赤みがあることを表す修飾語とされています。
また、染色の場合はしばしば梅染を意味することがあります。
江戸時代には百鼠と通称されるほど鼠系統の染色が流行しましたが、梅鼠もそのひとつです。

辰砂(しんしゃ)
C 4 M 60 Y 47 K 10
真赭とも書きます。天然の硫化水銀の原鉱のことです。
中国湖南省辰州から産出した朱が古来有名だったのでこう呼ばれたとのことです。
硫黄と水銀からつくられた人工の朱に対して、天然の朱の鉱石からとられた朱色だから
真朱ともいいます。
また、赤い鉱石だから丹砂とも書きます。

紅(くれない)
C 6 M 86 Y 43 K 10
日本古来の赤の代表的な色と思われている紅染めの赤は、実は舶来の染料という意味でした。
そのためか紅花染めは大変高価だったので、貞観(859~877年)以来、紅染めが男女貴賤に
もてはやされるようになったために、一種の経済政策として、仁和(885~889年)にこの染色を禁制しました。
しかし、その後も濃い紅染めの愛好熱は衰えず、冷泉天皇の時代(967~969年)に
やっと禁色として認められるようになったとのことです。
平安時代の憧れの色だったらしいです。

今様色(いまよういろ)
C 4 M 77 Y 40 K 18
今様色とは、当世流行の色という意味。この今とはもちろん現代ではなく、平安時代のことです。
この時代の流行の染色といえば、なんといっても紅染めの赤い色で、その当時流行の
紅花で染めた染色の色名でした。
一説には、紅梅色の濃い色だったとのことです。

牡丹色(ぼたんいろ)
C 14 M 78 Y 0 K 0
鮮やかな赤紫色を表す日本語の色名では代表的なもの。
牡丹の花の花弁の重なりによって見える濃い赤紫からとられた色名といいますが、
あの鮮やかな濃厚な色合いは、化学染料の出現以来は再現は不可能だったに違いありません。
現代では華麗な赤紫系の色を表す殆ど唯一の日本語の色名になっています。

マジェンタ
C 26 M 100 Y 22 K 0
印刷インクや染料、カラー写真などの3原色のひとつ。
現代の色再現技術に、なくてはならない色です(この場合はM100のみ)。
この赤紫色のアニリン染料は、イタリア統一戦争のクライマックスと同時期に発見されました。
1859年5月、サルディニア王ヴィットリオ・エマヌエレ2世はフランスのナポレオン3世と同盟し、
当時イタリアを支配下においていたオーストリア軍と戦端を開きました。
モンテベロ、パレストロ、マジェンタの戦いで同盟軍は優位に立ち、6月24日に豪雨の中、
ソルフェリノの決戦で遂にオーストリア軍を敗走させました。
この戦いと殆ど時を同じくして発見された新しい染料に、激戦地の名前が付けられました。
つまりマジェンタはイタリアの地名なのです。
イタリアでは最後の戦勝地ソルフェリノがこの色の色名になっています。

躑躅色(つつじいろ)
C 3 M 90 Y 16 K 0
赤躑躅の花の色から名づけられた色名で、やはり紫みの赤い色を表しています。
すでに平安時代、そのいつの頃からかはわかりませんが、躑躅という色の名前も知られていたことは
間違いありません。
襲の色目にも躑躅という色はありますが、諸説があり、色は確定できません。

ローズ・レッド
C 0 M 93 Y 36 K 0
バラは大昔から、その花の形、香り、そして色の美しさによってヨーロッパの人々に
愛され珍重されて、主要なシンボルとして用いられてきました。
そこで、色名としてのローズ・レッドの最初の記録として、既に1300年代文献にあり、
当時の著者たちに知られていた、という事実があります。
同じ期限の言語はいろいろな言葉に認められます。
バラについては、ローズレッド、ローズ、ローズピンクの3通りの色名があり、
花の色調のいろいろな段階に対応して用いられたばかりではなく、同じ観念を表す同義語としても
使用されてきたらしいです。
色彩辞典には、これらの色名の組み合わせの長い一覧表があるくらいです。
一般にはにごりのない明るい色調の赤い色のことを言います。
日本語のばら色もほぼ同じ色の色名になっています。

ストロベリー
C 0 M 100 Y 45 K 0
イチゴ色のこと。
もちろん、よく熟した苺の実のような赤を表す色名です。
苺が日本に渡来したのは明治初年ごろのことだというから、日本語にはもともと
苺色という色名があったはずはありません。
苺色は外来語の訳語です。
フランス語ではフレーズ(fraise)。

カーマイン
C 0 M 100 Y 55 K 10
日本の真紅は紅花染めの赤ですが、西洋の真紅は中南米のサボテンに寄生する
臙脂虫のコチニールから採取された動物性染色の赤です。
コロンブスの新大陸発見後、16世紀初めにはこの染料は直ちに全世界に知れ渡りました。
現在のカーマインはもちろん合成化学染料にかわっています。

紅色(べにいろ)
C 10 M 100 Y 53 K 10
紅は万葉集にも詠まれている古くからの赤の色名で、平安時代には禁制されるほど
この染色が広く愛好されましたが、鎌倉時代以降、色の禁制が緩やかになって、
紅染めが広く用いられるようになっても、やはり高価な染色に変わりはありませんでした。
紅花からとられた赤色は「くれない」と呼ばれるのが普通ですが、古くは「へに」とも
いったとのことです。
近世では「べに」が通称となりました。

シグナル・レッド
C 0 M 97 Y 70 K 0
停止信号のような鮮やかな赤の色名。
もちろん交通整理が必要になった産業革命以降にできた名前です。
英語の色名としては1902年に出現しています。
視界の中で小さな点にしか見えない遠くのものは、何色なのかまったくわかりませんが、
赤い色だけは、視野の中でほんの小さくしか見えなくてもちゃんと赤だとわかるという
特性があります。
そこで、遠くからでも識別することが必要な対象には、優先的に赤が選ばれることになっています。

スカーレット
C 0 M 93 Y 96 K 0
スカーレットという色名は、英語の色名としても古くから知られていた伝統的な名称で、
起源は1250年ごろとされています。
フランス語の色名のエカルラートはさらに古く、1160年とされています。
中世ラテン語のスカルラトゥムに由来し、さらにさかのぼれば、ペルシア語の織物の名前であり、
それもアラビア語から借りた名前だったのこと。
元来は青のことであったり、また赤のことであったりしたそうです。
こんなことからスカーレットとエカルラートとは、起源は同じですが、必ずしも同じ色になるわけでは
ありません。

ファイア・レッド
C 0 M 90 Y 97 K 0
火のような赤。
日本語の火色、緋色と同じような燃える火の色の形容です。
それでも日本語の緋色よりやや黄みがあり、オレンジに近い色になっています。
ここには熱とともに光の輝きのイメージがあります。
この系統の色を表す色名の中では歴史の古いもののひとつで、1382年と記録されています。

緋色(ひいろ)
C 10 M 90 Y 95 K 0
茜染めの最も鮮やかな黄みの赤を緋色といいます。
黄色で下染めをして上から紅染めした色も緋色といいます。
緋縅(ひおどし)の鎧の緋色はすでに紅染めであったらしいです。
平安時代には、緋色を「思いの色」と呼ぶこともありました。

猩々緋(しょうじょうひ)
C 4 M 91 Y 97 K 0
猩々というのは中国の伝説上の獣で、酒を好むという猿の姿に似た生き物です。
インド人はこの猩々の血で紅色を染めるのだろう、と古代中国人は信じたらしいです。
そんな伝説が生まれるくらい、当時の人々には驚くばかりに鮮やかに感じられる赤い色が
あったということです。
そんな色に昔の人が名づけたのが猩々緋という色名だったわけです。

ヴァーミリオン
C 0 M 83 Y 83 K 0
中国や日本では朱色は歴史的に大変重要な意味を持つ色ですが、
西洋ではそれほど根源的な色ではなかったようです。
しかし、鉱物顔料としての歴史は同じように古く、
ヴァーミリオンという色名は1289年、辰砂と同じく
硫化水銀の原鉱の色とされるシンナバー(cinnabar)は1382年が
起源とされています。
西洋の朱色は中国や日本の朱色よりもやや黄みがあり、
オランダ、イギリス、フランスを冠したヴァーミリオンはオレンジ色に近いです。

朱色(しゅいろ)
C 0 M 83 Y 70 K 0
日本人が社会生活を営むのに、印鑑と朱肉は絶対に欠かすことはできません。
どんな書類にも必ずといっていいほど朱印がちゃんと印刷されています。
今は本物の朱肉ではなく、たいていスタンプインクで間に合わせるようになってますが、
それでも日本人には朱色がどんな色なのか解説するまでもないでしょう。
習字の直しや試験の答案にも、たいてい朱が入っているものです。
これらの朱色は、天然の真朱の色ではなく、硫黄と水銀を混ぜ、昇華させてつくられた
人造の朱で、天然朱よりも鮮明な黄みの赤になります。
真朱に対してこれを銀朱ともいいます。

丹色(にいろ)
C 0 M 78 Y 84 K 10
丹というのは一般に赤い色のことで、硫化水銀の辰砂も丹砂というように、
朱色も丹色もあまり区別されずに使われていたらしいですが、丹色のほうが
朱色よりもやや茶色を帯びた色をいうことが多いようです。
丹色はまた、酸化鉛の鉛丹の色のことでもあります。
古くから顔料、絵の具として用いられてきました。

ポピーレッド
C 10 M 90 Y 94 K 0
ポピーの花のような赤色の色名。
ポピーには赤、ピンク、白などの色がありますが、その中の赤い花が
英語の色名に選ばれています。
イギリスでは麦畑(cornfield)の間に自生するので、コーンポピーともいわれています。
かなりありふれた花らしいです。
色名になったのも比較的早く、1705年といわれています。
このように自前の色名があるのに、1795年にはコクリコ(coquelicot)、
1835年にはポンソー(ponceau)という色名を使い始めていますが、
どちらもフランス語で同じ花のことです。

ポンペイアン・レッド
C 20 M 90 Y 90 K 0
紀元前4世紀以来、繁栄を誇っていた古代都市ポンペイは、紀元79年、
ヴェスヴィアス火山の大噴火によって埋没してしまいました。
18世紀以降の発掘調査によって、当時の都市遺構が次第に明らかになり、
それが近代人の好奇心を大いにそそりました。
古代貴族の邸宅跡から、有名な「秘戯の間」をはじめ、色鮮やかな赤い色を
惜しげもなく使った壁画が発掘され、それらの大胆な表現が人々を驚かしました。
この色名が登場したのは、1882年のことで、メトロポリタン美術館に復元された
フレスコ画の赤から取られています。
勿論色は当時のままではありませんが、その中の鮮明な部分の色からとったそうです。

カッパー・レッド
C 18 M 93 Y 95 K 10
銅(copper)が酸化して表面が赤茶色になったような状態を表す色名らしいです。
この色名も古くから使用されていたようで、登場は1590年となっています。
1954年にはただカッパーという名前になってレッドをつけなくなるから、
銅の色は赤っぽいのが本来なのだと思われていたのでしょう。
日本でも銅は「あかがね」といわれるし、赤銅色という形容もあります。
全く同じ色というわけでもありませんが、銅製の湯沸しの色からとられた色名に
コールドロン(cauldron または caldron)というのがあります。
これは1920年にできた新しい色名ですが、同じ銅のケトルの色から付けられた
スペイン語のカルデラ、フランス語のショウドロンなどと共通の意味と色を持っているので、
大変ポピュラーな色名になっています。
やや暗い赤茶色のこととされています。

ワイン・レッド
C 37 M 100 Y 48 K 0
ワインという色名は、英語では1705年から使用されていたことになっていますが、
実際はそれ以前からあったらしいです。
ある人は、この色名はポルトガル原産のポートワインの色に由来するといいますが、
ポートワインは実は1727年までは開発されていないから、これはおそらく誤りだろうとのことです。
1703年以前にイギリスで一番用いられていたのは、クラレット(claret)だったそうです。
このクラレットもフランス語で明るいという意味のクレール(clair)の英語訛りだから、
イギリスのワインの来歴も心細い限りです。
アメリカでワイン・カラーというと、シャンパン(champagne)の色のことだったというので、
こちらのワインの経歴もたいしたことはありません。
結局、ボルドー産の赤ワインのような鮮明な赤紫色がワイン・レッドということになっています。

ルビー
C 39 M 100 Y 49 K 0
主産地としてはビルマ(現ミャンマー)が有名で、西洋では希少価値があった
赤い宝石ルビーから付けられた色名です。
本来、鋼玉の一種変とのことで、色も濃紅色から明るいピンクまでいろいろあるのですが、
色名のルビーは紫みのある濃い赤にもっぱら用いられます。
色名は1572年以来の古い名称です。

クリムスン/クリムゾン
C 45 M 100 Y 55 K 0
カーマインとラテン語の語源を同じくする深紅色の色名です。
カーマインはコチニールという貝殻虫を原料としていましたが、
クリムスンもやはりケルメスという貝殻虫の一種の雌を原料とする古来の赤色染料に
由来しています。
クリムスンという名前は、カーマインよりもかなり古く、既に15世紀には
英語の色名として記録されています。

唐紅(からくれない)
C 28 M 100 Y 54 K 0
韓紅という字を当てることも多いです。
異説もあるようですが、一般には海の向こうから渡来した紅を意味する、ということに
なっています。
舶来の紅ともいえるし、紅の赤い色を強調した色名ともいえます。
どちらも「しんく」と読みます。
これこそ赤、というような名前です。

チェリー
C 0 M 100 Y 88 K 32
日本語の桜色は花の色の淡いピンクのことですが、英語のチェリーは
さくらんぼの実のような赤い色の色名です。
フランス語のスリーズ(cerise)も同じ意味の色名です。
チェリーという色名が現れたのは非常に古く、1442年とされています。
しかし、さくらんぼの色を表す色名としては、英語でも昔はスリーズが
よく使われたとみえ、この色についてはいろいろな説があるようです。
だから赤といってもいろいろな色調の赤がサンプルに選ばれてきました。
現在はさくらんぼの実物に近い赤のことになっています。

ターキー・レッド
C 14 M 93 Y 68 K 18
1747年に英語の色名になったトルコ赤の赤色のこと。
1900年にはターキッシュ・レッドという名前で呼ばれるようになりますが、
いずれも特産の綿布を茜染めした赤色のことです。
この茜染めはおそらくインドから伝わった東洋茜によるものだったと思われますが、
やがて合成染料の発見によってアリザリンによるトルコ赤に変わったに違いありません。

茜色(あかねいろ)
C 0 M 100 Y 57 K 32
茜は日本の山野にも自生している蔓草で、その根が黄赤色をしているので
赤根といわれました。
いわゆる東洋茜といわれる種類です。
これに対してヨーロッパには西洋茜、英語でマダー、フランス語でガランスと
いわれる種類がありますが、品種改良によってきれいな紫みの赤を染められるようになったのは、
18世紀になってからのことです。
茜色は暗い赤の色を表す色名として用いられるのが通例です。

臙脂色(えんじいろ)
C 32 M 100 Y 72 K 7
現在の北京は古くは燕京といって、燕(えん)という中国古代国家の中心でした。
臙脂の名はその燕の赤い色に由来するといいますが、その赤の正体は何だったのでしょうか。
色名の起源は大変古いですが、それだけに本来の臙脂色がどんな色であったかは
確かめようがありません。
中国渡来の紅を臙脂紅といいますが、コチニールの赤も同じく臙脂紅といいます。

アガット
C 28 M 100 Y 90 K 23
宝石のメノウのような深い赤茶色のことです。
英語でメノウを表すアガットは1598年以来の伝統的な色名です。
おそらく由緒ある宝石からこの色がとられたものと思われますが、
その由来は語られていません。
フランス語でもアガトで綴りも同じ、こちらは12世紀から知られていたそうです。
ギリシア語経由のラテン語で、この鉱物がその岸辺で発見された川の名前に
由来するとのことです。
メノウという石の名前は日本語でも古くからありましたが、色名には使われていません。

煉瓦色(れんがいろ)
C 20 M 85 Y 80 K 28
本来は英語のブリックレッド(brick red)のほうをとりあげるべきだったかもしれません。
赤煉瓦の色は、日本人にとっては西洋の色です。
この色名が日本人によく使われるようになったのも近代のことで、
英語のブリックレッドの訳語に違いありません。
英語の色名としては、既に1667年から使われていた古い歴史があります。
さらに昔、1656年頃まではラテン語でブリックレッドを意味するラテリシゥス(latericius)という
色名が使われていました。
英語の色名ができるはるか以前から、この色はヨーロッパでは広く知られていたに違いありません。
日本語で煉瓦色といえば赤茶色に決まっていますが、英語ではブリックの色はいろいろあって、
ブリックレッドの標準となる色を定めるのも本当は困難なのだそうです。

蘇芳色(すおういろ)
C 56 M 88 Y 61 K 0
蘇枋はインド、マレー半島などが原産の豆か植物で、その芯材の煎汁を染料とします。
赤、赤紫、紫などの色を染めることができますが、蘇枋色といえば深い紫みの赤の色のことです。
この染料は、かなり古くから日本に渡来していたといわれ、
桓武天皇の延暦16年に撰進されたとされる「続日本紀(しょくにほんぎ)」にも
その記述があります。

カーディナル
C 12 M 90 Y 50 K 42
カトリック教会で教皇に次ぐ行為の教職にある枢機卿(すうきけい)のことを
カーディナルといいますが、その地位の象徴として、枢機卿は常に赤い帽子と
赤の法衣を着用しているところから、その色を表す色名としても古くから用いられています。
英語の色名にカーディナルが登場したのは、1698年とされていますが、
この色は勿論それよりずっと古くからローマ教皇庁の権威の象徴として知られていました。

パーシアン・レッド
C 50 M 100 Y 100 K 15
ペルシア赤と呼ばれる顔料には2つの意味があり、
1835年のパーシアン・レッドはインド赤と同じく酸化鉄顔料の赤、
1897年の色名はヴァーミリオンのイミテーションに付けられたものだから、
当然、朱色です。
おそらくどちらも同じ顔料なのだろうから、黄みのある赤土色のことに
違いありません。

オクサイド・レッド
C 0 M 72 Y 52 K 56
酸化鉄の色のことで、赤茶色の色名。
これは主に塗料や絵の具の色に用いられ、19世紀の市場で通用していた色名です。
もちろん酸化鉄の赤茶色は人類最古の鉱物性顔料で、旧石器時代の洞窟壁画にも
既にこれが使用されていました。
赤土や赤鉄鉱のように天然の顔料として古代から広く知られており、
その中でも有名なのがインド産のものでした。
英語の色名インディアン・レッド(Indian red)は17世紀のこの色の色名です。

小豆色(あずきいろ)
C 0 M 75 Y 50 K 56
小豆が日本に渡来したのは、奈良時代以前のことだそうですが、
染色の色名に小豆色が使われるようになったのは、ずっと後のことで、
おそらく近世の色名でしょう。
近松門左衛門の浄瑠璃や、同時代の浮世草紙などの染色の色の形容に
使われているところを見ると、17世紀の終わり、天和、貞享、元禄あたりから
一般に知られるようになった色名ではないかと思われます。

檜皮色(ひわだいろ)
C 0 M 55 Y 40 K 69
当初はヒノキの樹皮で染めた染色の色だったとも言われていますが、
一般にはヒノキの樹皮のような黒ずんだ赤茶色のことを言います。
襲の色目にも檜皮という色目があり、表が黒ずんだ蘇枋、
裏は縹色(はなだいろ)となっていて、若者はこれを用いず、
中年以降の人が着用することになっていたそうです。

赤銅色(しゃくどういろ)
C 18 M 79 Y 81 K 60
日本では古来、金は「こがね」、銀が「しろがね」、鉄を「くろがね」、
そして銅を「あかがね」と呼んできました。
この銅色(あかがねいろ)はカッパー・レッドにほぼ近いと考えていいです。
しかし赤銅色とはちょっと違います。
赤銅は銅に金を3%~6%、銀を1%ほど加えてできた日本独特の合金で、
本来細工物に用いられてきました。
すでに東大寺大仏の鋳造が始まった天平19年(747年)の
「法隆寺伽藍縁起并流記資財帳(法隆寺がらんえんぎならびにるきしざいちょう」に
赤銅の記載があるくらい古くから使用されていました。

葡萄色(えびいろ)
C 31 M 94 Y 56 K 53
山葡萄は古くは「えびかずら」といわれていました。
紫葛とかくことからもわかるように、昔も深い赤紫色の実をつけました。
この色名はその色のことですが、杜若(かきつばた)の花のような色だったとも
いいます。
紫系の色が大変好まれた平安時代の文章には、葡萄染(えびぞめ)の記述が
よく出てきます。
たとえば「紫式部日記」、「源氏物語」、「枕草子」などです。

オックスブラッド
C 30 M 100 Y 62 K 57
日本語の赤という言葉は、「明し(あかし)」に由来すると考えられ、
日または火の色と関係が深いのですが、多くの言語では赤い色は
血と関係付けられることが多いようです。
また、赤い色はどの民族でも魔よけ厄除けの呪い(まじない)によく用いられてきたのですが、
西洋では家畜の血を門口に塗って魔よけの呪いにしたという話もあります。
雄牛の血を意味するこの赤の色名にもその名残があるといえるかもしれません。

海老茶(えびちゃ)
C 27 M 88 Y 100 K 65
暗い赤紫色の古来の伝統色名は葡萄色(えびいろ)だったのですが、
近世になると人々のこの色からの連想は、山葡萄の色ではなく伊勢海老の殻の色に
なってしまいました。
そして葡萄色は海老色に変わったのです。
葡萄の古名である「えび」が忘れられ、えびといえばとっさに思いつくのが
海老になったという次第です。

ボルドー
C 55 M 100 Y 77 K 42
赤ワインの色を表す英語のクラレットは色名としてはワンレッドよりずっと古く、
1547年には既に赤の色名になっていたそうです。
そのまたはるか昔からフランスのボルドーはワインの集積、出荷の中心地として有名で、
クラレットはその赤ワインの英語独特の名称で、そのほかの言語では使われることはありません。
もともとフランス語のクレールの語尾に、-etの指小辞がついて、やや鮮明な色を表す言葉として
英語化したもので、どうやら赤と白のワインの混ぜ物の色だったという推測があります。
一般に暗い赤紫色のことを表します。

バーガンディ
C 80 M 100 Y 100 K 30
これもフランス南東部のブルゴーニュ産のワインの色を表す英語独特の言葉で、
本来はブルゴーニュ(Bourgogne)といわなければならないはずですが、
イギリス人がこの地方特産のワインを賞味するようになったのは、
ボルドーよりだいぶ後になってからのことなのか、バーガンディという色名の誕生は1915年で、
クラレットより400年も遅いです。
ワインの色名よりも、マンガン化合物の絵の具、バーガンディ・ヴァイオレットという
色名のほうが1870年代に、先に知られていたらしいです。
色見本もワインの色にしてはずいぶんと暗いです。

ピーチ
C 0 M 18 Y 23 K 0
日本語の「桃色」が花の色から名づけられたピンクの色名なのに、
英語のピーチは桃の果実の色からとられた薄いオレンジの色名です。
フランス語のペッシュ(peche)も同じです。
どちらも果実の表皮というよりは果肉のような色をしています。
ピーチジャムの色を連想すればよいのです。
英語の色名として通用するようになたのはかなり古くからのことで、
1588年と記録されています。

フレッシュ
C 0 M 22 Y 30 K 5
これが英語の肌色に相当する色名です。
元来、フレッシュは人間や動物、または果実の肉のことなので、
肉色というべきかもしれません。
そこで欧米の顔料メーカーがこの名前で取り上げている色はまちまちで、
実際のアングロサクソンの肌色にしては綺麗すぎる色が多いとのこと。
裸の人体を現すヌードという色名もありますが、こちらは日焼けしていない部分の
色だから多少色が白すぎてもそれほど不自然ではないといいます。
フランス人の裸体フレンチヌードという色名もありますが、これは裸体画のヌードの色で、
やや黄みのある肌色です。
これらの中ではフレッシュが色名としては一番古く、1611年に出現しています。

肌色(はだいろ)
C 0 M 30 Y 35 K 0
英語のフレッシュと同じく、昔は宍色といって肉の色のことでした。
肌という言葉も古くから使われていたのですが、肌色という色名が
一般に通用するようになったのがいつ頃からなのかは、はっきりしていません。
大変一般的な色名ですが、これもフレッシュ同様に、日本人の実際の肌色とは
まるで似ていない綺麗すぎる色になっています。
やはり絵に描かれた人物の肌のような理想化された色のことにちがいありません。

赤白橡(あかしろのつるばみ)
C 10 M 37 Y 37 K 8
つるばみはどんぐりの古名で、昔はこの実を煮詰めた汁で濃い灰色を染めました。
ところが、この赤白橡という色名は、橡の字がついているのに、実は橡を染料として
用いていない、という珍しい例に挙げられています。

杏色(あんずいろ)
C 8 M 49 Y 60 K 0
杏は中国渡来の植物で、日本では唐桃の名で知られていましたが、
その果実の色からとられた色名が昔からあったわけではありません。
この種の色名はたいてい英語のエイプリコット(apricot)、
フランス語のアブリコ(abricot)などの訳語として近代になって
使われるようになったものでもあります。
英語の色名になったのは1851年となっているので、化学染料が発見される
ほんの数年前にできた色名でした。

メイズ
C 6 M 30 Y 45 K 10
色名としてはmaiseと書かれています。
玉蜀黍(とうもろこし)のことです。
コロンブスの新大陸発見により全世界に知られるようになった穀物なので、
インディアンたちの穀物を意味するzeamaysに由来するとのこと。
フランス語のマイス(mais)も同じ色の色名です。
フランス語のほうが先にあったので、英語の綴りも当初は、zではなくsが
語尾についていたのでしょう。

そひ
C 0 M 70 Y 68 K 4
蘇比という字を当てたものもあります。
古くから装束の染色に用いられた色の名称で、道鏡を寵愛したことで知られる
称徳女帝の御代、神護景雲年間(767~770年)に、諸王の四世に正六位上、
五世に従六位下を授け、その朝服をそひ色に定めたという記録があります。
緋色の薄い色のこと、または薄赤い色のことといわれています。

赤朽葉(あかくちば)
C 0 M 65 Y 70 K 0
平安時代の貴族たちは、自然の風物の中からさまざまな色の変化を見つけ出して、
その発見を色の命名に用いました。
季節の風情を感じさせるような優美な色名が、この時代にたくさん生まれています。
秋に枝からおいて地に散り敷く木の葉にはいろいろな色のものがあります。
それらが土に朽ちようとする色を朽葉色(くちばいろ)といいますが、
その中でも紅葉した朽葉を赤朽葉といいます。

小麦色(こむぎいろ)
C 10 M 53 Y 59 K 0
小麦色という色名はもともと日本語にはありませんでした。
英語のホイート(wheat)の訳語で、近代になって日本語として使われるようになったものです。
健康な日本人の肌が程よく日焼けした状態を、小麦色の肌と形容するようになったのも、
近代文学が開発した新しい表現法が定着したものといえるでしょう。
英語の色名ホイートは、18世紀のはじめ1711年から使われるようになったものです。

萱草色(かんぞういろ)
C 0 M 48 Y 76 K 0
夏に百合に似たオレンジ色の花をつける植物がカンゾウで、
本来は中国産の植物ですが、日本でも平安時代からこの名前が物語などに
登場しています。
そして「源氏物語」では、袴や単(ひとえ)などの色の色名として
萱草色が用いられています。
ところがこの色は、当時の宮廷では必ずしも喜ばしい時に用いられる色では
なかったようで、なにか忌事があると、服の色に華やかな紅の色を遠慮して、
やや赤の色みを落とした萱草色を着用したということです。

タンジャリン
C 5 M 77 Y 90 K 0
モロッコの港町タンジール産のオレンジという意味のオレンジ色の色名ですが、
オレンジの色名には中国産蜜柑から名づけられたマンダリン・オレンジ(mandarine orange)もあり、
タンジャリンはマンダリン・オレンジより単に皮の色の赤みが濃いものをいいます。
タンジャリンの色名は1899年、マンダリン・オレンジは1883年から通用しています。

柿色(かきいろ)
C 0 M 77 Y 76 K 0
柿色という色名には2種類あり、後で茶系の色の中に出てくる柿渋で着色した柿渋色も
しばしば柿色と通称されています。
ここでとりあげる柿色は柿の実の様なオレンジ色の色名で、近世の染色の名前としては
照り柿といいます。

キャロット
C 0 M 70 Y 95 K 0
現在のにんじんの色なら、キャロット・オレンジということになるでしょうが、
人参色がはじめて色名として使われるようになった頃は、キャロット・レッドと呼ばれていました。
その最初の記録は1684年です。
しかし、この名前はどう見ても間違いとしか思えません。
人参の色は、赤より寧ろ黄のほうに近いオレンジ色のはずだ、と
アメリカの有名な色彩辞典の編著者は書いています。

クローム・オレンジ
C 0 M 68 Y 100 K 0
フランスの化学者ヴォークランが1809年に鉛酸とクローム塩から初めて
クローム顔料を作ることに成功しました。
その色は緑みの黄色からオレンジまでの変化がありました。
もともとクロームはギリシア語で皮膚の色を表す言葉だったのですが、
この金属から色々な色の化合物が作られるので、それが金属の名前に
なったのだそうです。
英語でクローム・オレンジの名前が使われるようになるのは1818年からです。

黄丹(おうに)
C 0 M 68 Y 68 K 0
古来、宮廷で着用された朝服を袍(ほう)といいます。和名で表衣(うえのきぬ)。
皇太子専用の袍を黄丹の衣といって、黄丹はその袍の染色の色名です。
黄丹とは、黄と赤との両方の色合いを持つ色のことで、「おうたん」と読むこともあります。
つまりオレンジ色のことです。

洗朱(あらいしゅ)
C 0 M 68 Y 71 K 10
洗という字が色名に付くと、薄い色のことになります。
布を洗うと染色の色がだんだん薄くなることからこんな形容が生まれたらしいです。
淡い紅染の色名の退紅を洗紅とも書くようになったのは、かなり古く、
9世紀末の漢和辞書にすでに用例があるとのこと。
洗朱は、朱色の薄い色を表す色名です。

橙色(だいだいいろ)
C 0 M 70 Y 100 K 0
もとは中国語の色名「とうしょく」が日本語化したものらしいです。
橙の「とう」が「だい」になり、橙の実は次年の実がうくまで落ちないので代々になり、
縁起がいいというので正月の飾りに使われるようになったとのこと。
この色名は一時、英語のオレンジに対応する日本語名として使用されていたのですが、
橙の字が教育用漢字に採用されなかったため、赤と黄との中間色相は日本でも
オレンジ色というほかはなくなりました。

蜜柑色(みかんいろ)
C 0 M 56 Y 100 K 0
1985年に改訂された日本工業規格「物体色の色名」の慣用色名では、
橙色(またはオレンジ)。
お蜜柑色とは別々に取り上げられていて、蜜柑色のほうがわずかに黄みの
オレンジ色になっています。
学校の描画材料である「クレヨン及びパス」の色を定めた日本工業規格でも、
だいだいと蜜柑色は別の色として記載されており、やはり蜜柑色のほうが
いくらか黄みのオレンジです。

樺色(かばいろ)
C 0 M 75 Y 90 K 15
蒲(がま)の穂のような色、ということで蒲色とも書きます。
樺は桜の樹皮のことで、アイヌ語のカニハに由来するということです。
つまり樺は借字ということになります。
ところが、平安朝の襲の色目には樺桜という色目があるので、
この名前は古くから知られていたようでもあります。

フォイーユ・モルト
C 20 M 80 Y 80 K 15
これはシャンソンでおなじみの枯葉を意味するフランス語で、
日本語の色名を当てはめれば朽葉色ということになります。
これが英語の色名に導入されたのは、1690年のこと。
1892年に英語でオータム・リーフ(autumn leaf)と呼ばれるようになりました。

狐色(きつねいろ)
C 25 M 68 Y 91 K 0
古くからの日本語の色名には、動物の色からとられた色名というのは
ほとんどありません。
「万葉集」の中に鴨の羽色というのがありますが、それが当時の人の間で
色の名前として通用していたかどうかは疑問です。
平安時代の王朝文学の中にも動物に由来する色名は殆ど見当たりません。
動物の毛皮などの色からとられた色名は、鎌倉時代以降の中世になって、
やっといくらか現れるようになります。
この狐色という色名も、中世になってから日本語の中に登場した
動物の名前の付く色名の走りといえるに違いありません。
英語の狐色フォックス(fox)は、1796年に色名になっています。

白茶(しらちゃ)
C 14 M 26 Y 40 K 0
色の外見は英語やフランス語のベージュに近いですが、
繊維素材のままの色から付けられた色名ではなく、薄い茶染の色のことです。
「白茶ける」という形容もあって、これは茶の色がさめて白っぽくなったことを
表します。
英語でベージュが「ベージュ意識」といわれたような、
高級な感覚を表す色名であったのとは違って、日本の染色での白茶は、
それほど珍重された色であったとは思われません。

ベージュ
C 0 M 18 Y 32 K 18
ベージュが英語の色名になったのは、1887年です。
これはもともとフランス語の色名でした。
そしてその起源は、語源辞典によれば1220年です。
さらにさかのぼるとイタリア語のバンバジア(bambagia)に結びつくといいます。
これは詰め物の綿くずのことです。
しかしフランス語の最初の意味は、素材のままの毛織物の色のことだったそうです。
一説には、イタリア語のビジオ(bigio)に由来するともいいます。

香色(こういろ)
C 5 M 20 Y 40 K 10
丁字などの香りの高い香木を用いて染めた色のこと。
平安貴族に好まれた染色で、「源氏物語」「枕草子」など、当時の文学作品にも
この色はよく使われています。
色はダンボールや事務用封筒のような薄茶色なのですが、芳香が匂うような、
いかにも風雅な色名です。
この染色は仏教でも尊重されて、僧衣にもよく用いられていました。

エクリュ
C 5 M 18 Y 42 K 0
これも1869年にフランス語から英語になった色名です。
色としてはベージュとそんなに変わりませんが、1910年頃から
大変一般的に用いられる色名になったそうです。
この色名も、フランス語では既に1268年に成立しています。
日本で生成りの色といわれるようになった流行色は、まさにこのエクリュの
翻訳です。

亜麻色(あまいろ)
C 14 M 22 Y 34 K 0
一応日本語名で亜麻色としていますが、もともと日本語の色名に
これがあったわけではありません。
西洋人の場合は、ごく薄い黄褐色の髪の毛の色の形容にこの色名が
使われますが、日本人の身体的特徴を現すのには特に必要のない色名です。
英語では亜麻の繊維とその色を表す言葉はフラックス(flax)です。
この色名は1915年にできていますが、それより以前にその形容詞
フラクスン(flaxen)が、すでに1602年から色名として使われていました。

丁字茶(ちょうじちゃ)
C 10 M 40 Y 46 K 30
丁字色の説明の中でもとりあげていますが、古来の丁字染が、江戸時代に
茶染に応用されて丁子茶という染色が一般に愛好されたとのことです。
江戸でこの染色が男女貴賤を問わず大流行したのは、宝暦年間というから、
1751年から1764年頃のことらしいです。

バフ
C 10 M 42 Y 57 K 13
バフはバッファロウ(buffalo)に由来します。
そのもとはイタリア語、さらにさかのぼればギリシア語で、旧大陸の牡牛のことです。
それがアメリカで北米産の水牛のバイスン(bison)のことになりました。
これはバフという言葉の由来ではありますが、バフという色名の由来ではない、
というところが厄介です。
バフという色名ができたのは1788年、アメリカの独立が承認された5年後で、
この年に合衆国憲法が発効しています。
それまで兵士の征服に用いられた柔らかな軽い皮革の黄みの茶色の通称が
バフだったとのことです。

砥の粉色(とのこいろ)
C 5 M 29 Y 57 K 10
刃物を砥石で研ぐと、これらの石から当然細かい粉が出ます。それが砥の粉です。
やや黄みのある鈍い砂色をしています。
その色から砥の粉色という色名が生まれました。
砥の粉は白木の目をつぶす化粧材、漆器の塗下地などに使われるのが普通ですが、
男優のメイクアップ化粧にも利用されたそうです。
こういった利用法があったので、砥の粉色に限らず、そのような色一般を表す色名に
なったのでしょう。

シャモワ
C 5 M 32 Y 57 K 10
シャモワはヨーロッパの高山に生息するカモシカの仲間で、そのフランス語名です。
この名前は既に1387年にフランス語になっていました。それがその毛皮のような
茶褐色の色名にもなりました。
後にこのカモシカの精製された上質のなめし革が知られるようになり、やがてその色も
シャモワと呼ばれるようになりました。

朽葉色(くちばいろ)
C 5 M 39 Y 57 K 5
朽葉色と呼ばれる色は、茶色くなった落ち葉の色のことです。
朽葉48色などといわれますが、朽葉色はその本家ともいうべき色名でしょう。
秋の風情は平安朝の貴族にもののあはれを覚えさせ、とりわけ詩情をそそったようで、
この色名は当時、たいへん愛好されたようです。
「源氏物語」にも「枕草子」にも、やや後の「平家物語」にも朽葉色の染色や織物が
取り上げられています。

肉桂色(にっけいいろ)
C 20 M 70 Y 70 K 0
肉桂が香料として中国から日本に輸入されるようになったのは、18世紀、
徳川吉宗が将軍の地位にあった頃のことだそうなので、この色名も昔から
日本語で使われていたわけではありません。
英語のシナモン(cinnamon)などの外来色名の訳語でしょう。
英語のシナモンはすでに1679年に色名として用いられるようになっており、
1797年には、やや濃い茶色をソナモン・ブラウン(cinnamon brown)と呼ぶ
新しい色名もできています。

ラセット
C 40 M 69 Y 75 K 0
ラセットという色名は、1562年という早い時期にできた古いものですが、
1748年以降は、ラセット・ブラウンという名前のほうが一般的に通用するように
なりました。
この色名は、英語の色名としては最も広く使われているものの一つですが、
きわめて曖昧に使用されている色名のひとつでもあります。
最初は赤褐色の粗いホームスパンの生地に用いられた言葉だったそうです。
それが次第に赤みの茶褐色一般を指す色彩用語になり、ブラウン系の代表的な
色名になっていったとのことです。
日本では朽葉色と訳されますが、ラセットに朽葉の意味はありません。

バーント・シェンナ
C 30 M 76 Y 80 K 0
旧石器時代の洞窟壁画には、赤土がそのまま絵の具として使用されていますが、
古代ギリシアでも、赤褐色の絵の具には天然の赤土が用いられていたそうです。
中世になると、黄土を焼いた褐色絵の具が使われるようになり、ルネッサンス以降、
もっと色の美しい焙焼土の絵の具が利用できるようになりました。
イタリア中部のトスカナ地方の中心都市シェーナから名づけられたシェーナ土は、
代表的な茶褐色顔料とされていました。
そしてこのシェーナ土を焼いて濃い赤みの茶色にした顔料の通称、バーント・シェンナで、
それはそのままその絵の具の色名にもなっています。

代赭色(たいしゃいろ)
C 24 M 74 Y 83 K 0
天然の土からつくられる絵の具として、ヨーロッパではイタリアのシェーナの土が
有名ですが、東洋では中国の山西省代県産の赭土が古来よく知られていたので、
その顔料を代赭といい、その絵の具の色を代赭色と呼ぶようになりました。
今では褐色の一般的な色名としても用いられるようになりました。

土器色(かわらけいろ)
C 8 M 57 Y 63 K 20
うわ薬をかけずに焼いた素焼きの陶器のことを昔は「かわらけ」といいました。
平安時代の宮廷ではこれがよく使われていたとみえて、「宇津保物語」に
「かくて御かはらけ始まる」とあるように、土器は酒宴と同じ意味に使われていたほどです。
この色名が生まれたのは中世になってからのことで、古びて茶色くなった布地の
形容などに用いられた色名だったようです。

胡桃色(くるみいろ)
C 36 M 60 Y 72 K 8
これは胡桃のような色という意味ではなく、胡桃の樹皮や果皮を煎じた汁で染めた色で、
その上に墨で文字が書けるような明るい茶色でした。
しかし、この色に染められた衣は、身分の低いものが用いることになっていたようです。
高級な染色ではありませんでした。

団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
C 32 M 70 Y 74 K 18
代々の市川団十郎が狂言に用いた柿色のことです。
柿渋と酸化第二鉄顔料である弁柄(べんがら)で染めた赤茶色の色名になっています。
この柿色は歌舞伎の定式幕にも、墨と萌黄と並んで用いられています。

トパーズ
C 31 M 55 Y 74 K 0
日本語の色名には、動物の名前を名乗るものも少ないですが、
鉱物、特に宝石類の色から付けられた色名もはなはだ乏しいです。
黄玉といわれるトパーズも、昔の日本人にはあまり縁のない宝石でした。
英語の色名としてはかなり古く、既に1572年から使われていたそうです。

ヘイズル/ヘーゼル
C 28 M 68 Y 92 K 20
はしばみ(ヘイズル)の実は日本でも昔から食用になっていたはずですが、
あまり一般的に用いられるものではなかったのか、それほど珍重されたという形跡は
ありません。
ところが、西洋ではこの実は昔から食用、油の原料として用いられ、その色から
色名が生まれるほどよく知られていました。
その色名も1592年という古い時期から使われています。
フランス語のヌワゼット(noisette)はもっと古く1280年に登場した言葉だったとの
ことです。

タン
C 18 M 60 Y 92 K 80
タンという色名はかなり古いもので、1590年に使われ始めたことになっていますが、
もっと古くからあったかもしれません。
樫の樹皮をつぶして、そこに含まれるタンニンで牡牛の皮をなめしてできる
皮革の色を表す色名です。
1892年からレザーという英語らしい色名で呼ばれるようになり、1902年の
レザー・ブラウンは新しいタン革に付けられた色名で、なめし方が変わったのだそうです。

丁字色(ちょうじいろ)
C 30 M 57 Y 80 K 0
丁字のつぼみを煎じた汁で糸や布を染めると、香色となるのですが、それに鉄分や
灰汁(アク)を加えて染める染色を丁字染といい、その色を丁字色といいました。
香色より濃い色になったとのことです。
平安時代から用いられていた染色の色名でしたが、もともと丁字のつぼみは
産出量も少なく高価であって、主に香料に用いられていたので、染色には
丁字の花柄や果実も利用されたといいます。

コルク色
C 8 M 44 Y 59 K 40
英語のコーク(cork)に当たる色を表します。
日本ではコルクという名前で通用しています。
コルク樫の樹皮の下にあるコルク組織のような色からとられた色名です。
ワインの栓などによく用いられるコルク栓が世界中に普及したのは
17世紀以降のことで、英語のコークが色名として使われるようになったのは、
1902年になってからのことです。

キャメル
C 11 M 40 Y 55 K 30
駱駝色(らくだいろ)のこと。
キャメルが英語の色名になったのはそんなに古いことではありません。
1916年のことだったそうです。
色名としては新しいですが、駱駝は中央アジアやアラビアでは
紀元前から家畜化されていて、日本にも599年に百済から1頭が
贈られたことがあるそうです。

桑茶(くわちゃ)
C 10 M 44 Y 82 K 30
桑の樹皮やその根を煎じた汁に灰汁を媒染に用いて染めた桑染の
黄褐色のことを、桑茶という色名で呼びます。茶の染色の一種です。
灰汁ではなくミョウバンを用いたとの解説もあります。
江戸時代の桑茶は、主に木綿の足袋の色として珍重されていたそうです。
桑染めの足袋は当時の伊達者が好んで履いたものだといいます。

路考茶(ろこうちゃ)
C 40 M 62 Y 100 K 10
江戸時代の役者色の中では最もよく知られた流行色がこの路考茶です。
路考は、瀬川菊之丞の代々の俳名で通称でもありました。
この路考茶はその二代目菊之丞が用いた色で、大変流行したそうです。
鶯色に似た緑みの茶色が路考茶の色です。

フォーン
C 18 M 42 Y 55 K 28
仔鹿の毛皮のような黄みの茶色を表す英語の色名で、1789年以来、
一般に広く用いられてきました。他国との色名の違いもなく、
特に解説することはありません。

芝翫茶(しかんちゃ)
C 21 M 40 Y 60 K 29
この芝翫茶は19世紀の初め頃、大阪で人気のあった芝翫こと
後の3代目中村歌右衛門の好みの色として、京坂で流行し始めた色で、
着倒れの町の新造や娘たちが好んでまねた染色の色だったそうです。

ウォルナット
C 18 M 42 Y 58 K 18
英語のウォルナットも胡桃色のことです。
しかし日本の胡桃色は胡桃で染めた染色の色だったのに、ウォルナットは
胡桃の実の外殻のような色ということで、色は似ていますが色名の起源は
違っています。
この色名ができたのは1654年ということなので、かなり古くから
使われていたことは確かです。

飴色(あめいろ)
C 13 M 44 Y 72 K 32
飴は砂糖から作られるだけではありません。
でんぷんを麦芽などで糖化させて作られた水飴が、日本でも古代から
作られていました。「延喜式」には、もち米と小麦のもやしで
飴を作る方法がちゃんと記載されているそうです。
当然、多くの人がその味だけでなく色もよく知っていたので、
飴のような色の形容としてすでに用いられるようになっていました。

ロー・アンバー
C 14 M 53 Y 65 K 49
フランス語でテール・ドンブル(terre d'ombre)といいます。
影の土という意味です。
しかし、そこらの日陰の土の色のことを表す一般的な色名ではなく、
このアンバーは実はイタリアの中央部にあるウンブリア(Umbria)地方のことで、
その地方原産の土から作られた顔料の名前でした。
ローというのはその土そのままの意味で、ウンブリアの土そのままの
茶褐色絵の具の色名になっています。
英語の色名としては1658年以来、用いられています。

ヴァンダイク・ブラウン
C 0 M 41 Y 54 K 59
ヴァン・ダイク(Anthony Van Dyck)は、17世紀ベルギーの画家で、
宗教画、肖像画の名手として知られ、晩年はイギリスに渡り、後に
ピューリタン革命によって処刑されることになるチャールズ1世の
宮廷画家となりました。
彼の作品における暗褐色の色調の効果が絶妙であったため、
この暗褐色に彼の名前が付けられました。
英語の色名は彼の死後209年たった1850年にできたものです。

キャラメル
C 12 M 43 Y 70 K 56
キャラメルは焼き砂糖のことです。アルコールの色づけにも用いられますが、
やはり蜜代わりの甘味付けによく使われ、誰でもその色を知っているように
濃い茶色です。
しかし、料理の国、フランスでも、この言葉ができたのが1680年というのだから、
意外に新しいです。
これが英語の色名にも用いられるようになったのはさらに新しく、1921年のことです。

煙草色(たばこいろ)
C 0 M 3 Y 49 K 48
乾燥したタバコの葉の色に由来する色名です。
英語の色名には、これらの嗜好品からとられた色名がかなり多いです。
英語のタバコ・ブラウン(tobacco brown)という色名は、
1789年になってから出現したものです。

桑染(くわぞめ)
C 17 M 30 Y 70 K 31
養蚕のために栽培されていた桑の木の根や樹皮を戦時、灰汁で染めた
黄褐色のこと。
色名らしくありませんが、古来の衣服令には桑という名前で
記されているから、桑色としてもいいかもしれません。
先に取り上げた桑茶は、桑染の江戸時代の生まれ変わりといってもいいです。

利休茶(りきゅうちゃ)
C 14 M 22 Y 62 K 50
桃山時代の大茶人、千利休が好んだ色利休色といいます。
利休好みの色は、彼が生前から用いていたものの色に残っていたはずですが、
この色名は、後世の人間が勝手に彼の名前を付けたもので、利休本人が
こんな色名を付けておいたわけではありません。
利休は深みのあることの形容になっています。

ヘンナ
C 17 M 94 Y 100 K 28
エジプトや近東地域に生える草で、古代からこの草の葉や若枝から
黄赤色の染料が搾取され、人体の部分や毛髪などを染めるのに用いられていました。
日本では指甲草(しこうそう)の名前で呼ばれているように、
アラブの女性は爪をこの草からとられた染料で染めていました。
英語の色名になったのは1613年のことです。

栗梅(くりうめ)
C 22 M 78 Y 77 K 55
梅というのは、紅梅の色と関係があったようで、梅の字が付く染色の色名は
たいてい赤みがあることを示している例が多いです。
この色名も赤みのある栗色を表しており、別に栗梅茶という色名もあります。
江戸中期、8代将軍吉宗の時代、元文年間に流行した染色だったといわれています。

雀色(すずめいろ)
C 28 M 77 Y 78 K 23
雀の羽毛のような赤みの茶色の色名。
雀頭色とも書くので、雀の頭から背にかけての色からとられた色名に違いありません。
雀茶という呼び方もあります。
これは赤みのある色だったためか、雀色は夕暮れ時のイメージを表す形容にも
なっていて、たそがれ時を雀色時といいます。雀色の空という形容もよく見られます。

弁柄色(べんがらいろ)
C 18 M 77 Y 77 K 37
インドの北東部、ガンジス川下流地帯がベンガル地方といいます。
現在はバングラデシュという国になっています。
この地方に産する赤褐色顔料が日本に伝えられて、こんな色名ができました。
つまり「べんがら」はベンガルの日本語訛りで、漢字の色名は当て字です。
弁柄とも書きますが、紅柄や紅殻と書くこともあります。
天然の酸化第二鉄顔料をとにかくこの名前で呼びます。
いわば赤土の色です。

褐色(かっしょく)
C 10 M 68 Y 100 K 60
褐はごわごわした粗末な衣服のことで、それから転じて、
そんな衣服を着る身分の低い人のことになり、さらにその衣服の
黒ずんだ茶色のことになったといいます。
茶褐色というのは、褐色のやや念入りな言い方ということに
なるのでしょうか。あるいは褐色をさらに茶に染めたような色のことを
言うのでしょう。
黄みのある茶色は黄褐色、赤みがある茶色が赤褐色となります。

黄櫨染(こうろぜん)
C 48 M 66 Y 77 K 15
歴代の天皇が、正式の際に着用される袍(ほう)を黄櫨染の袍といい、
禁色の最もたる色です。
日光を象徴したといわれる赤茶色で、文様は桐、竹、鳳凰と麒麟を
織り出したものだといいます。
この袍が公式に制定されたのは、嵯峨天皇の弘仁11年(820年)といわれており、
以後、代々の天皇がこれを着用されてきました。

柿渋色(かきしぶいろ)
C 48 M 77 Y 85 K 5
柿渋色は、単に柿色ともいわれました。
柿の果実のような黄赤色の染色も柿色だし、団十郎茶の、柿渋と弁柄で染めた
赤茶色も別名柿色といいます。
しかし一番古くからか黄色といわれていたのは、布や紙に柿渋を塗った
柿渋色でしょう。
柿渋塗の柿色は、一般の身分社会を離脱した人の特異な風俗を
あらわしたという説があります。

ドラブ
C 42 M 57 Y 57 K 18
これは本来、色名というよりも、あまり芳しくないことの形容みたいな言葉です。
無関心で、面白くなくて、陰気で、不快で、輝きや明るさや色彩にかけていることを
表す言葉だそうです。
これがそのまま、色の形容になると、鈍いモノトーンの茶褐色ということになります。
このような色名は大変珍しいものです。

櫨色(はじいろ)
C 0 M 40 Y 53 K 60
天皇の袍の色、黄櫨染も櫨(はじ)を用いた染色で、黄櫨色とも書きます。
古くは「はにし」といったそうですが、それが「はじ」になり、
近年は「はぜ」というようになりました。
「はじ」といっていた頃の染色の色名です。
櫨の木材は材質が深黄色をしているので、これを煎じて染料にしました。
くちなし色よりもやや赤みのある黄色になります。

ココナッツ・ブラウン
C 50 M 78 Y 100 K 10
ココナッツ・ブラウンという色名は1902年に英語の語彙のひとつになっています。
1927年にはココナッツという色名ができていますが、色がいくらか違います。
古いココナッツ・ブラウンは、やしの実の外皮の色からとられた色名でしょうが、
ただのココナッツは、それよりもやや赤みに寄った色のことになります。

茶色
C 46 M 75 Y 100 K 38
現在では英語のブラウン(brown)に対応する言葉として茶色が当てられますが、
英語のブラウンは10世紀以前から使われていた基本色彩語なのに、茶色は17世紀以降の
近世になってできた色名で、日本語の基本的な色名とも言えません。
江戸時代になり、煎茶が一般庶民にも普及し、その副産物として茶の煎汁による
茶染めが行われるようになりました。
その茶染めの染色が茶色になり、やがて茶色になる染色をすべて茶染というように
なりました。
つまり、日本人が誰でも茶を飲むようになって初めて、茶色という色名が
成立したわけです。

ロー・シェンナ
C 12 M 65 Y 100 K 48
シェンナは、イタリア中央部のトスカナ地方の都市の名前です。
この地方の土は昔から天然顔料として、絵の具や塗料に用いられてきました。
この地方の土には、酸化鉄と大量のコロイド珪酸が含まれており、
それが顔料の特性とされています。
英語の色名になったのは、18世紀になってからですが、イタリアの黄土、
つまりイタリアン・オーカー(Italian ochre)という別名で呼ばれることもあり、
典型的なイタリアの大地の色とされていました。
この顔料は、シェンナ地方に限らず、トスカナ地方全域と
サルディニア島産出の黄土まで、すべてロー・シェンナと名づけられています。

梅幸茶(ばいこうちゃ)
C 26 M 28 Y 63 K 48
初代の尾上菊五郎が好んだといわれる緑みの茶色のことです。
梅幸は3世から菊五郎になる前の名前になりますが、最初は初代菊五郎の俳名でした。

マルーン
C 28 M 100 Y 70 K 58
これはスペイン産の大粒の栗の名前が英語化したもので、最初はイタリア語の
マローネ(marrone)、次にフランス語でマロン(marron)となり、さらに英語の
マルーンという色名になったのは1789年といいます。
最初はイタリア語のままで16世紀から色名として用いられ、17世紀には
フランス語のマロンが借用され、18世紀の終わり近くになって、やっと英語の色名が
定着したらしいです。

栗色(くりいろ)
C 28 M 85 Y 95 K 70
栗色というのが一番一般的な呼び方で、栗皮色という色名はもっと具体的です。
栗の実の表皮のような赤茶色のことであることがよくわかります。
栗の樹皮やイガのタンニンを染料として色を染めた栗染もあるといいますが、
栗色はこの染色の色のことでなく、やはり栗の実の色に似ている染色の色に付けられた
色名とされています。

ココア
C 20 M 70 Y 63 K 61
これは嗜好飲料からとられた英語の色名のひとつです。
1881年から色名になっています。
1925年には、ココア・ブラウンと呼び直されて、今はこちらのほうが
一般に通用しています。
同じカカオ豆を原料とするチョコレートよりも、
明るい色調の茶色を表す色名として用いられます。

コーヒー
C 57 M 74 Y 100 K 28
コーヒーの色からとられた英語の色名が生まれたのは1695年というから、
この飲料が知られてからたちまち色名になったものと思われます。
モカ(mocha)も色名になっていますが、こちらはだいぶ遅れて、
1921年とのこと。
コーヒーの主産地がブラジルに移った時代にできた色名です。

チェスナット・ブラウン
C 5 M 45 Y 55 K 66
英語の色名としてかなり古くから使われており、起源は1555年のことです。
ブラウンを付けないで単にチェスナットと表記されていても、
色名としてちゃんと通用するほどこの色は広く知られていました。
これはスペイン栗のマルーンが色名になる以前から知られていたもので、
やはり食用栗の表皮の色のような茶色を表します。
マルーンより小型の栗で、色もマルーンより赤みが少ないことになっています。
フランス語ではシャタンといいます。

ヘアー・ブラウン
C 0 M 28 Y 37 K 57
毛髪の茶色を表すこの色名は、1766年につくられています。
このヘアー・ブラウンはごくありふれた毛髪の平均的な色です。

媚茶(こびちゃ)
C 0 M 15 Y 37 K 68
ちょっと艶っぽい色名ですが、昆布茶という名前がなまったものだと
いいます。訛ったついでに媚という当て字になったようです。
これも江戸時代に流行した茶系の色のひとつで、色はかなり黒味のある茶色で、
昆布茶の色というより昆布の色のほうに近い濃い茶色です。

グレージュ
C 0 M 30 Y 23 K 46
ベージュやエクリュとほぼ同系統の色と色名にこのグレージュもあります。
フランス語として誕生したのが1679年、羊や山羊の群れを意味するイタリア語の
グレッジア(greggia)に由来するというのも似ています。
そして、英語の色名に定着したのはごく新しく、1928年のこととなっています。

モロッコ
C 49 M 73 Y 62 K 50
モロッコ赤の色と名前は、いろいろな言語で使われているそうです。
その呼び方は英語にも各種あって、ほかにもモロッコ・レッド、
モロッカン(Moroccan)などがあります。
モロッコ・レッドが最初で1905年、次がモロッコで1919年、
モロッカンは1925年の色名とされています。
この最後の色名は、古来、赤色人種と信じられてきたエジプト人の肌色の連想から
生まれた色名らしいです。

バーント・アンバー
C 51 M 70 Y 66 K 50
古来、褐色の天然顔料として有名なウンブリア地方特産の土を、焼成して
暗褐色にしたものをバーント・アンバーといいます。
これが英語の色名として知られるようになったのもかなり古く、
1650年と記録されています。

焦茶(こげちゃ)
C 51 M 77 Y 80 K 51
特定の基本色彩語で呼ばれる色が、標準的なその色より色が暗くなると、
一般に、暗いとか濃いという修飾語が付きます。
また、染色の色を濃く染めて暗い色調にすると、しばしば深という修飾語が
付きます。ところが茶系統の色に限っては、焦げたと言う意味の修飾語が付きます。
木や土が焼けたときに、その表面がだんだん焦げて暗い色になるのを
誰でも経験しているからでしょう。
バーント・アンバーという色名はまさに焦茶のことです。

チョコレート
C 59 M 83 Y 100 K 58
チョコレートの英語の色名は1737年にできています。
しかし、1928年にチョコレート・ブラウンという色名が新しく
登場しているところを見ると、これが現在のチョコレートの色の色名に
違いありません。
しかし、この2つの色名で呼ばれる色の違いは殆どありません。

鳶色(とびいろ)
C 50 M 71 Y 66 K 68
雀や鼠は英語でも色名になっていますが、鳶は英語の色彩辞典にも
でてきません。その点で、これはいかにも日本的な色名といえます。
鳶茶ともいいます。この名前は江戸風です。

煤竹色(すすたけいろ)
C 56 M 51 Y 76 K 46
近世の染色の色名で、汚れて赤黒くなった竹のような色を表します。
昔は天井などの汚れを払うのに、先に枝や葉をつけた竹を用いました。
この煤払い用の竹が煤竹です。あまりきれいな色の形容ではありません。
ところがこの色が、宝暦5年頃から江戸の町々で大流行したという話です。

ビスタ
C 78 M 82 Y 100 K 10
木材や石炭、油などを燃やすと煤が出ます。
その煤を柔らかく溶剤に溶かしたものが、ビスタ絵の具です。
ごく暗い茶褐色をしていて、画家はこれで下絵を描いたり、
ペン画などに用いてきました。
この絵の具の色が、英語の色名になったのは1727年で、
bisterと書いたものもあります。

セピア
C 60 M 74 Y 85 K 57
イカが墨を出す墨汁嚢を切り取り、太陽に晒して乾燥させ、
それを細かく砕いて絵の具にしたのがこの色の始まりで、
甲烏賊の意味のセピアという名前も、ギリシア語からラテン語を経由して、
英語でもそのまま使われるようになりました。
つまり、この色の歴史はきわめて古いということです。
古代にはセピアは文字を書くインクとして用いられていたとのことです。
近世になってイカ墨をアンモニアやアルカリで溶かし、
塩酸で沈殿させて乾かし、顔料とするようになりました。

仙斎茶(せんさいちゃ)
C 58 M 50 Y 61 K 53
仙斎というのは、この染色を工夫した創始者の名前であったかも
しれません。しかし、今となってはその本名を知る術はありません。
それがいつの間にか、縁起のいい千歳茶の字が当てられるように
なってしまいました。江戸時代の色名にはこんな当て字の例が多いです。
宝暦年間(1751~1764年)の流行染色だったともいうし、
文政の頃(1818~1830年)京坂で流行った色ともいいますが、
60年もの差があるので、この色が使われた時期も甚だ曖昧です。

アイヴォリー
C 8 M 10 Y 20 K 0
象牙色のことです。
西洋では古代から象牙は工芸材料として珍重されていたし、
古代ローマでは宮殿建築の装飾としても使われていました。
アイヴォリーが英語の色名になったのもかなり古い時代のことで、
1385年のことです。
アイヴォリーは象牙そのものの色を表わす薄い灰黄色です。
これを磨いて加工すると、アイヴォリー・ホワイトになります。

蒸栗色(むしぐりいろ)
C 5 M 8 Y 23 K 0
蒸した栗の実のような柔らかな感じの淡黄色です。
栗色が栗の実の外皮の色であるから、それと区別して
蒸した中身の色としたそうです。
日本語には、食べ物や料理の名前をつけた色名はほとんどありません。
フランス語や英語には食べ物、菓子、嗜好品から付けられた名前が
いっぱいあって、それがいろいろな時代の人々の食生活の向上の過程を
想像させるのですが、日本人は日本人は日常的な食品の色を
色名に残すという発想はまったくなかったそうです。

練色(ねりいろ)
C 0 M 10 Y 24 K 0
黄ばんだ単よりはましなのでしょうが、練色はごく薄い黄色です。
本来の練色は、練糸練絹のように艶のある素材のままの色のことですが、
漂白した絹を染めた練色もあったそうです。

鳥の子色(とりのこいろ)
C 0 M 7 Y 28 K 0
平安時代の酒落た色名です。
鳥の卵の殻のような薄い黄みの灰色のことを言います。
英語にも、駒鳥の卵の殻の薄青緑の色名に
エッグシェル・ブルー(eggshell blue)というのがあります。
この色名は、鴈皮と楮との液に三椏を混ぜて漉いた上質の和紙が
滑らかで光沢もあるところから鳥の子紙といわれるように、
いろいろなものに用いられています。
襲の色目にも卵襲と書いて「とりのこがさね」と読ませるのが
あるそうです。

クリーム
C 3 M 7 Y 39 K 0
明治初期の教科書に、酥色という色名が紹介されていますが、
中国語を借りてクリームを強引に漢字表記したものです。
英語の色名としては、1590年から使われている基本的な色名で、
淡い黄みの白の色調を表わすには欠かせない名称です。
フランス語でも13世紀からクレーム(creme)という言葉が使われていて、
やはり英語のクリームと同じ色を表わす色名でもあります。

サンライト
C 0 M 15 Y 42 K 0
英語の色名で太陽のサン(sun)が付くものの大部分は、黄色の色です。
サンセット、サンライズ、サンダウンなど、朝日や夕日を表わす色は
オレンジかオレンジよりの黄色になります。
日光は、サンライトと言おうがサンレイ(sunray)と言おうが黄色です。
日本は太陽を書くときは必ず赤いクレヨンで書きます。
これは国際的に少数派で世界中の子供たちは太陽を書く場合ほとんどが
黄色で書きます。
欧米では黄色は太陽の象徴なのです。

ストロー
C 5 M 15 Y 42 K 0
日本で藁といえばたいてい稲を乾かしたものですが、英語の藁、
ストローは麦藁のことです。
薄いくすんだ黄色のことです。
ストローという色名は1589年から使われています。
ストロー・イエローとも言います。
日本の色名辞典にも藁色というのがありますが、
ほとんど見かけることはなく、近代文学ではむしろ麦藁色のほうが
よく使われています。

マシコット
C 8 M 20 Y 40 K 0
紀元前1世紀頃、アテネの外港ピレエフスで、白い顔料の鉛白を積んだ船が
火災を起こし、その焼け跡から偶然発見されたのが、赤い鉛丹と黄色の
マシコットだったという伝説があります。
東洋では、蜜陀僧という名前で、古くから知られていたそうです。
一酸化鉛を原料とする絵の具で、古代から壁画などの彩色に用いられてきました。

枯草色(かれくさいろ)
C 7 M 24 Y 48 K 0
草が枯れた状態の色だから、当然、くすんだ薄黄褐色です。
この色名がいちばん大衆的だから、おそらく色名ができたのも一番新しいと
思われています。
平安朝の色名はこれほど具体的ではありませんが、もっと風情があります。
この色のことを、枯色といいます。
襲の色目にも、枯色の名称があり、表は白または香色、裏が薄紫か、
青となっています。

雄黄(ゆうおう)
C 0 M 32 Y 65 K 0
昔、絵の具や工芸品の塗色に使われてきた黄色で、またの名を
石黄といいます。
英語の名前はいちばん古いのがオーピメントで1386年、1548年には
フランス語になってオルパン、別名ロイヤル・イエローと格が上がりますが、
硫化砒素化合物を意味するイエロー・リァルガーとその正体を名乗るようにも
なりました。

玉子色(たまごいろ)
C 0 M 25 Y 57 K 0
平安朝の鳥の子色は卵の殻の色ですが、近世の染色で
玉子色または卵色というのは、卵の中身の色からとられた色名です。
つまり、黄色の色名のことです。
ゆで卵の黄色の色だったという説明もありますが、
かなり薄い黄色のことだから、生卵の色といってもおかしくありません。
それも、無精卵みたいな水っぽい色の黄色のことです。

ブロンド
C 3 M 25 Y 65 K 0
色名としてはやや特殊で、主に金髪の色だけに用いられます。
1080年にフランス語の色名となり、1481年に英語でもブロンドが
使われるようになりました。
起源は古ゲルマン語にあったようで、もとは明るい黄色、または
単に明るい色という意味の言葉だったそうです。

ネープルス・イエロー
C 0 M 25 Y 60 K 0
ナポリの黄色という意味の、この英語の色名は1738年に
できたものですが、その前は1728年以来、イタリア語の
ジァロリーノの名前で呼ばれていました。
この黄色は、ヴェスヴィアス火山の鉱物からつくられたと
信じられていたので、ナポリの黄色という名前で
知られるようになりました。
ルネッサンス期のイタリアでは、多くの画家がこの絵の具を
使っていたそうです。

ジャスミン
C 5 M 18 Y 62 K 0
ジャスミンはもともと熱帯・亜熱帯産の植物で、日本には自生しません。
当然、この色名に適当な訳語もありません。
しかし、この花の姿と香りが好まれて観賞用に栽培されるようになり、
ついに黄色の色名となりました。
つまり、この名前を言えば黄色を思い出せるほど、
多くの人が知っている花になったのです。

ライム・イエロー
C 20 M 20 Y 60 K 5
この色名は、20世紀の初めにできたもので特に由緒ある名前ではありません。
しかし、きわめて紛らわしい色名として、色彩辞典ではわざわざ特別の項目を設けて
解説されています。
まず、ライムの色で呼ばれる色は、黄色と黄緑色の中間色のどちらともつかない
色のことだから、ライム・イエローとライム・グリーンの両方が使われています。

芥子色(からしいろ)
C 20 M 20 Y 64 K 0
この色名が昔から使われていたとすると、和芥子の色で
、黄みが強い色になりますが、これが英語のマスタードの訳語だったとすると、
やや緑みのある黄色のことになります。
英語のマスタードは、1886年の色名とされています。
マスタード・イエローという名前でも呼ばれています。

ミモザ
C 9 M 16 Y 78 K 0
ミモザはアカシアの一種で、フランスでミモザと呼ばれている種類は、
ブラジルから渡来したものだといわれています。
パントマイムみたいに収縮するというので、この連想からミモザという名前が
ついたそうです。
この植物は17世紀には知られていたようですが、色名は19世紀までの間に
できたそうです。

シャルトルーズ
C 26 M 20 Y 80 K 0
この色名も黄色とも黄緑ともつかない色の色名だから、
シャルトルーズ・イエローとシャルトルーズの両方があります。
1892年に、フランス語がそのまま英語の色名に借用されましたが、
その後、1912年に、まずシャルトルーズ・イエローという黄色の色名ができ、
やがて1926年にグリーンの名前ができました。

マリーゴールド
C 0 M 52 Y 100 K 0
マリーゴールドが英語の色名として知られるようになったのは、
1654年のことです。
日本ではあまりなじみがなくても、英米ではたいへんポピュラーな
伝統色名です。
いわば西洋の山吹色のことです。
山吹色はしばしば黄金の大判、小判の形容になりますが、
マリーゴールドは色名の中にすでに金色の名前、ゴールドを含んでいます。
マリーゴールドと山吹色の両方に共通するのは、黄金の色の連想です。

サフラン・イエロー
C 0 M 48 Y 100 K 0
サフラン・イエローは13世紀にはすでにあった色名です。
この色名は花の名からとられたものではなく、花の雌蕊(めしべ)の
黄色い柱頭を乾燥させてつくった染料の色につけられたものです。
この染料は今も使用されており、糸や布を染めるだけではなく、
食品の色付けにも、あるいは香料にも用いられていて、用途はかなり広いです。

インディアン・イエロー
C 0 M 44 Y 100 K 0
インドからヨーロッパに渡った黄色の絵の具の名前です。
変わっているのは、この絵の具の作り方で、牛にマンゴーの葉を食べさせ、
それで育った牛の尿を蒸発させ、非容解性の尿酸マグネシウム塩をとり、
それを精製して顔料にしました。
ヨーロッパ人はこれを油絵の具と水彩絵の具に用いたといいます。

黄金色(こがねいろ)
C 10 M 46 Y 98 K 0
仏教関係では金色を「こんじき」と読みます。
今はたいてい「きんいろ」といいます。
金は、他の金属とは違って、錆びることがなく、
それが生まれたままの色を保つところから、生色とも
いわれています。
黄色みの上等な鼠色の染色を黄金鼠とも名づけたりしています。

山吹色(やまぶきいろ)
C 0 M 37 Y 94 K 0
日本の伝統色には、紫やピンクの花から付けられたものは
たくさんあるけれど、黄色の花からとられた色は山吹色しかありません。
他に款冬色という色名もありますが、これはしばしば山吹色と同一視されています。
山吹色は、日本語の色名では黄色の代表というべき色名で、後には、

鬱金色(うこんいろ)
C 0 M 35 Y 100 K 0
熱帯アジア原産の生姜の一種で、その根茎を鬱金といいます。
この根茎に黄色の色素が含まれていて、英語ではターメリックといい、
1607年には黄色の色名になっています。
日本で染料として用いられるようになったのも、ほぼ同時代の
江戸時代の前期からのことです。

サンフラワー
C 0 M 36 Y 100 K 0
最近は日本でも向日葵色という名前が使われるようになり、
日本工規格にも定められる色になりましたが、これはもともと
日本語にあった色名ではありません。
おそらく英語のサンフラワーの訳語だそうです。
サンフラワーが登場したのは、1892年のことです。

支子色(くちなしいろ)
C 0 M 28 Y 77 K 0
昔は梔子のことをたいてい支子と書いていました。
当時の支子染には、深支子と浅支子があり、支子に紅花を加えた
黄赤色だったので、丹黄と紛らわしい色になったそうです。
そのほかにも、支子だけで染めた黄支子という染色があり、
これがいわゆる支子色です。
梔子の実の黄色い色素を染料として染めた色です。

クローム・イエロー
C 0 M 25 Y 100 K 0
クロームやカドミウムからつくられた鮮やかな黄色や
オレンジ色の絵の具が登場したのは19世紀のことです。
絵の具の色としては、クローム・イエローもカドミウム・イエローも
ほとんど変わりません。
英語の色名になった時期はクローム・イエローの方が早く、
オレンジと同時期で1818年で、カドミウム・イエローは1859年代となっています。

雌黄(しおう)
C 0 M 26 Y 78 K 0
別名を藤黄ともいいます。
中国語の藤黄(トンホアン)の日本語読みで、これも
日本画の黄色として使われた絵の具の名前です。
黄色を塗るだけでなく、藍に混ぜて草色を作ったり、
墨に混ぜて木の樹皮を描くというように利用されてきました。

蒲公英色(たんぽぽいろ)
C 0 M 17 Y 100 K 0
蒲公英の花からとられたこの黄色の色名も、日本古来の色名では
ありません。
英語の蒲公英色であるダンディライアンという色名も、
そんなに古くからある由緒ある名前ではありません。
これが現れわたのは1919年のことです。

レモン・イエロー
C 10 M 20 Y 100 K 0
英語のレモン・イエローという色名の歴史はかなり古いです。
1598年にはこの色名は存在していました。
1875年に、緑みのあるクローム・イエローの絵の具がつくられ、
これにクローム・レモンという色名が付けられました。
これが現代のレモン・イエローです。

金糸雀色(かなりあいろ)
C 3 M 0 Y 97 K 0
外来語のまま日本語の色名になったのは、このカナリア色が一番
早かったのではないかといわれています。
英語の色名キャナリーは1789年にできました。
金糸雀という当て字がカナリアに用いられるようになった理由は
まだ分かっていないそうです。

檸檬色(れもんいろ)
C 8 M 4 Y 98 K 0
1875年、クローム顔料の絵の具にクローム・レモンという名称が生まれ、
別のメーカーではクローム・プリムローズ(chrome primrose)という
黄色の桜草から付けられた色名が誕生しました。
また、19世紀後半から大量に生産されるようになったカドミウム・イエローの中で、
緑みを含む黄色をレモン・イエローというようになりました。

サルファー・イエロー
C 10 M 5 Y 90 K 0
サルファー・イエローは赤みも緑みもない黄色のことです。
科学染料の鮮やかな黄色の色名としてサルファー・イエローがよく使われています。
硫黄が黄色いことは昔から多くの人が知っていたから、中世から
黄色の絵の具の材料になってきました。

黄蘗色(きはだいろ)
C 13 M 18 Y 92 K 0
黄蘗は日本の山地に自生する落葉高木で、この樹皮の内皮が
鮮やかな黄色をしているので、これが昔から黄色の染料に用いられてきました。
それが黄蘗色です。
天平時代の色紙にも黄蘗染の紙があるそうで、この染料の歴史は
かなり古いです。
しかし、この染料も宮廷の服色として尊重されたような形跡はありません。

刈安色(かりやすいろ)
C 16 M 2 Y 100 K 0
刈安は、日本の近畿・中部地方に自生する薄に似た草で、この草を細かく切って、
それを煎じた汁を染色に用いていました。
この草の名前は刈り安いということから付けられたもので、
昔は手に入れやすい染料でした。
鮮やかできれいな黄色に染まるので、天然の植物染料としては重宝なものでした。

琥珀色(こはくいろ)
C 0 M 41 Y 75 K 35
琥珀は太古の樹皮が化石になったもので、装飾具、装飾品などに
用いられていました。古代から貴重な材料だったそうです。
この名前は、日本でも中世以前から知られていたようですが、
その黄褐色の色が色名として通用するようになったのがいつ頃なのかは、
はっきりしていないそうです。

黄土色(おうどいろ)
C 23 M 49 Y 85 K 0
日本画の黄土の絵の具は、水酸化鉄を含む泥土からつくられた顔料であり、
これを焼くと代赭という赤茶色の絵の具になります。
黄土色は天然の黄土の色の色名でもあるけど、これは黄土で染めた色
というわけではなく、黄土に似た色のことをいいます。

黄橡(きつるばみ)
C 24 M 42 Y 70 K 28
橡は櫟の古名で、橡という名の染色はその実の団栗を煎じて染めた色のことを
いいます。
この染料は団栗の殻のタンニンを利用するのですが、媒染に鉄を用いると
黒っぽい色に染まり、一般に橡と呼ばれる色はこのことを言います。
灰汁を媒染とした染色、または媒染なしで染めた橡染の色を黄橡というそうです。

ハニー・イエロー
C 38 M 45 Y 75 K 0
蜂蜜色のような色のことです。
1611年という早い時期から使われている色名で、最初はイエローが
付かなかったそうです。
近代になってから、ハニー・ベージュ、忍冬を表わすハニーサックル、
ある種の蜜のことをいうハニーデューというような紛らわしい色名ができたので、
イエローをつけるようになりました。

菜種湯色(なたねゆいろ)
C 28 M 28 Y 100 K 0
つまらない名前の色名ですが、これはオリーヴ系の色を表わす
日本語の色名の数少ない例のひとつです。
日本で菜種から油をとるようになったのは、近世になってからのことで、
それ以前は荏胡麻油を灯火に用いていました。

カーキ
C 0 M 40 Y 77 K 40
この色名は思わぬことから英語の色名に採用され、それが
たちまち世界中に広がって、日本でも軍国主義時代に、
カーキ色という名前でよく知られるようになりました。
カーキは、ペルシア語・ヒンズー語で塵・埃のような、という意味の言葉で、
旧大陸の岩と土埃でできた大地のような色を表わします。

ゴールド
C 0 M 33 Y 100 K 38
本当の金の色に正確に合わせた色見本は、塗料や繊維製品の色では
きわめてまれだといわれています。
金属光沢は観察条件によってさまざまに変化して見えるからです。
黄色と金色の見え方の違いは、主に現象的な違いにすぎないとも言えます。

生壁色(なまかべいろ)
C 13 M 18 Y 52 K 55
水を混ぜて練りあげた壁土が、まだ乾かない状態のことを生壁といいます。
これがすっかり乾いてしまうと、白茶けた色になりますが、水気を含んで
湿ったままだと、黒ずんだ緑みの黄褐色に見えます。
そんな色を表わす色名ですが、これは左官職人の用語だけではなく、
主に染色の色名として用いられていました。

抹茶色(まっちゃいろ)
C 33 M 15 Y 60 K 0
日本語の色名には飲食物からとられたものは極めて少ないけれど、
これは飲む抹茶の色のことです。
しかし、この色名は昔からあったわけではなく、抹茶が茶の中では
特殊な作法をともなう特別な茶になったことで、新しく作られた色名だそうです。
渋い薄緑色を表わしています。

若葉色(わかばいろ)
C 35 M 0 Y 47 K 4
冬枯れの後に必ず春が巡ってきて緑が再生されるのを毎年経験する人間だけが、
若葉の色の輝きを尊いと感動します。
英語の色名にもスプリング・グリーンという黄緑色の名前があり、1766年以来、
英語圏の人たちに愛用されています。
欧米人にとっても、若葉の色は、また巡ってきた春を迎える喜びと密接に
結びついています。

ピスタチオ・グリーン
C 40 M 10 Y 50 K 0
現在の日本人には、銀杏に似たピスタチオ・ナッツがよく知られていますが、
この色名はピスタチオの殻の中身の色からとられています。
1789年という早い時期から色名として用いられてきました。
1892年にはフランス語のヴェール・ピスタシュが英語に取り入れられ、
やはり同じ色のことを指すようになりました。

浅緑(あさみどり)
C 42 M 0 Y 42 K 0
昔から染色の色の濃い薄いは、深と浅で表わされるのが普通だったのですが、
深紫、浅紫というように、文字は深と浅でも、訓みは「こき」「うすき」となると
されてきました。
それが、後世になると濃紫と書くようになり、あるいは濃紺と読むようになりました。

白緑(びゃくろく)
C 32 M 0 Y 25 K 0
文字のとおり淡い緑色の顔料の名前です。
緑青を細かく砕いて粉末にしたもので、日本画などの絵の具として
主に用いられてきました。
染色でも、ごく淡い藍染を白藍色と呼ぶことがありますが、
一般に染色の薄い色の修飾語には、薄、浅などがよく使われ、
白という形容がつくことは珍しいです。

グラス・グリーン
C 45 M 11 Y 64 K 0
英語の色名としては、最古のものの一つとされています。
遅くとも、8世紀以前に成立したと考えられています。
牧草地の緑を表わすメドウ・グリーンも草色の一種であり、
芝草の緑のローン・グリーンもやはり西洋の草色といえます。
これらはどれも、グラス・グリーンの仲間です。

柳色(やなぎいろ)
C 42 M 12 Y 61 K 0
柳色は春の色であり、しばしば緑色の代表にとりあげられてきました。
襲の色目にも柳、青柳、黄柳などの名称があり、どれも春に用いられます。
柳は表が白、裏が青。青柳は表裏とも濃青。黄柳は表が浅黄、裏が浅青と
なっていますが、これらの青はいずれも色は緑色とされています。
近世の染色では、柳の字はしばしば緑みのあることを表わす修飾語に
用いられたほどです。

リーフ・グリーン
C 40 M 12 Y 56 K 10
英語の色名としては、リーフ・グリーンは1891年から知られていますが、
もちろん萌黄という和名に比べれば色名の歴史はずっと新しく、
いくらかくすんだ萌黄色になります。
葉の緑といっても、葉には表と裏があって、表の色のほうが緑色が濃いものですが、
この色名は木の葉の表の色から名付けられたそうです。

ピー・グリーン
C 39 M 11 Y 56 K 11
これも古い英語の色名で、1752年から使われているそうです。
豌豆の緑のことです。
この色名はもっぱら絵の具や塗料のメーカーが使用し始めたといいますが、
今では繊維製品の染色の色などにもよく使われるポピュラーな色名となっています。
豌豆は葉も豆の莢も豆もみんな緑色だから、どの部分の色でもかまわないようですが、
解説によれば、やはり豆の色からとられた色名のことだそうです。

若苗色(わかなえいろ)
C 40 M 10 Y 50 K 5
今でも田植えの終わった水田一面に稲の苗が緑色に広がっているのが
見られますが、あの苗の色のような緑を苗色といいます。
それよりもやや緑がかった薄い色が若苗色です。
「源氏物語」の中にも若苗色の小袿という名称が出てきます。
おそらく10世紀頃から11世紀の初めにかけて、この色の染色が宮廷でも
よく用いられるようになっていたようです。

青磁色(せいじいろ)
C 56 M 7 Y 45 K 0
中国の唐の時代、越州窯で開発製造された薄緑色の磁器が青磁といいます。
これはたいへん貴重なもので、時の天子に献上され、臣下は用いることが
できなかったため、この青磁の色は秘色と呼ばれていました。
秘色は青磁色の別名でもありますが、染色の青磁色も薄緑色というよりは、
かなり青みのある染色の色名になりました。

ライム・グリーン
C 40 M 22 Y 67 K 0
ライム・イエローと同じ混乱が、この色名の場合にも存在します。
柑橘類のライムが果実の色であるとも言えるし、菩提樹の種の色ともいえます。
混同を避けるためにはリンデン・グリーン、またはフランス語の
ヴェール・ティユールの名前で、菩提樹の色であることを示すほうがいいかも
しれません。

フォリッジ・グリーン
C 50 M 20 Y 74 K 10
葉の茂った集まりがフォリッジですが、草や野菜の茂みではなく、
茂った木立の色のことだと解説されています。
フォリッジ・グリーンは陽光の中に包まれた茂みの緑色のことです。
この色名が使われ始めたのは1892年からとされています。

若竹色(わかたけいろ)
C 62 M 0 Y 50 K 0
この色名の若の字も若草や若苗などの色名と同様に若い竹の色のことです。
ただし、若草色や若苗色の濃い色は、ただの草色であり苗色でしたが、
若竹色にはそれらに相当する竹色という色名はなく、老竹色に対する若竹色であって、
まさに老若を対照する色名ろして使用されています。

ヴェルディグリ
C 61 M 0 Y 53 K 17
これも西洋で緑青の色を表わす色名です。
フランス語で灰色の緑がかった色の意味の緑青の名前、
ヴェール・ド・グリが詰まって英語の緑青となりました。
それが1336年のことです。
この緑青は天然のマラカイト・グリーンではなく、
銅版を酢や酸性の葡萄酒に漬けて緑色の錆を生じさせる
古来の方法で作られました。

ターコイズ・グリーン
C 63 M 7 Y 40 K 0
英語で青緑色の色を表わす代表的な呼び名がターコイズです。
青と緑との中間の色だから、ターコイズ・ブルーでも、
ターコイズ・グリーンでもどちらでもかまわないそうです。
この色名はトルコ石のような色を表わします。

鶸色(ひわいろ)
C 28 M 10 Y 95 K 0
日本の色名には、動物の羽や毛皮の色からとられたものは
多くはありませんが、鶸色という色名は鳥の羽毛からつけられた名前としては
早くから知られていたもののひとつで、中世の終わりにはすでに
用いられていたのではないのか、と考えられています。

アップル・グリーン
C 45 M 8 Y 100 K 0
日本では、りんごは赤ということになっていますが、英語の色名では、
アップルはグリーンの代表として選ばれています。
日本式にいえば青林檎の色になります。
イギリスやアメリカでも林檎は緑と決まっているわけではないから、
解説では、グリーン・アップルの色とことわっています。

若草色(わかくさいろ)
C 48 M 3 Y 100 K 0
鮮やかな黄緑色を表わす一般的な色です。
若という修飾語は新鮮なことを表わす形容で、染色の場合は、
しばしば明るい色のことをいいます。
つまり草色の明るい色のことです。
また、若草色のような色のことを若緑ともいいます。
本来は、待つの若葉のような色のことですが、
色は若草や若菜とほぼ類似の黄緑色のことです。

萌黄色(もえぎいろ)
C 56 M 8 Y 95 K 0
萌葱とも書きます。
葱の若芽のような緑斧ことで、黄と書くよりも緑みが濃いような感じがします。
萌木と書くこともあります。
木々の若芽がいっせいに萌えでる情景が目に浮かびます。
萌黄はいちばん黄色に近い色を連想させ、草木が芽を吹いたような
黄緑色すべてに当てはまります。

コバルト・グリーン
C 63 M 0 Y 65 K 0
西洋の画家たちが、コバルト・グリーンの絵の具を利用できるように
なったのは、19世紀中頃のことなのですが、コバルト顔料はそれ以前の
1777年に実験によってすでに発見されていました。
この英語の色名はその発見から間もない1780年に出現しました。

コバルト・グリーン
C 63 M 0 Y 65 K 0
西洋の画家たちが、コバルト・グリーンの絵の具を利用できるように
なったのは、19世紀中頃のことなのですが、コバルト顔料はそれ以前の
1777年に実験によってすでに発見されていました。
この英語の色名はその発見から間もない1780年に出現しました。

エメラルド・グリーン
C 75 M 0 Y 74 K 0
古来、緑色の宝石として有名なエメラルドのような色のことです。
もちろんエメラルドを顔料や絵の具にしたわけではありません。
この色名は、最初はやはり宝石のエメラルドの色のことで、
1598年にグリーンの名前になっています。
それ以前も1572年以来、エムロードのフランス名で呼ばれていました。

エンペラー・グリーン
C 75 M 0 Y 73 K 10
この緑色は1814年にドイツのシュヴァインフルトでつくられたことから、
シュヴァインフルト・グリーンと称し、ナポレオン好みの色としてパリの緑、
パリス・グリーンとなりましたが、その通称がエメラルド・グリーンです。
毒性が明らかになるまで、多くの人身事故を引き起こしたことでも有名です。

マラカイト・グリーン
C 85 M 15 Y 78 K 8
マラカイト・グリーンは天然の炭酸銅の岩緑青の名前です。
古来のコバルト系緑色顔料のバイス・グリーン、あるいは
山からとれたという意味のマウンテン・グリーン、油の緑のオイル・グリーン、
または、ラテン語の緑の意味から派生したヴァ-ディター・グリーンなど、
さまざまな名前で呼ばれてきましたが、結局、マラカイト・グリーンという色名に
落ち着いたそうです。

クローム・グリーン
C 90 M 15 Y 80 K 0
クローム・グリーンという名前の緑色絵の具には、
ライト、ミディアム、ディープの3段階があります。
どの色名も1815年に登場しています。
18世紀まで西洋の風景画の草木の葉の色は黄褐色に近い緑色だったのに、
この絵の具の登場により緑色に輝く新鮮な草木の表現が可能になりました。

ヴィリディアン/ビリジアン
C 90 M 33 Y 70 K 30
この絵の具の色名はラテン語の緑、ヴィリディスからの造語と
思われますが、これに類する緑の色名が古くから英語でもいろいろと
使われていたそうです。
1600年頃にはヴィリディリッド、1680年にはヴィリディアスなどの
名称があり、いずれもグリーンのことだったそうです。
現在では、クローム・グリーンとともに緑色絵の具の代表です。

鴨の羽色(かものはいろ)
C 90 M 30 Y 62 K 20
日本語の色名には、昔から動物の体色からとられたものは、
英語の色名に比べるとかなり少ないです。
これは鴨の首や羽の中に見られる濃い青緑色を表しています。
この色名は「万葉集」の中の2首に、鴨の羽の色を詠んだ歌が
あるところから、それらに由来するといいますが、当時、それが
色名として通用していたという証拠はありません。

ピーコック・グリーン
C 100 M 30 Y 60 K 0
これも青と緑との中間の色の名前です。
孔雀の羽の色からとられた色名で、確かに真孔雀や印度孔雀の羽毛には
青いところも緑色のところあります。
本来は、ただピーコックといえばターコイズと同じく青を表わす色名でした。
1589年起源というから、これも相当古くからあった色名です。
そしてこの色名の場合も、後からピーコック・グリーンができました。
ブルー・パオンといいます。

モス・グリーン
C 25 M 13 Y 75 K 46
最近は日本語の苔色よりも英語のモス・グリーンのほうが
よく知られています。
しかし、この英語の色名ができたのは1884年で苔色という色名より
はるかに新しいです。
最初から染色物の色名として使われはじめたようで、おそらく
近代繊維産業における流行色として登場したといわれています。
絵の具業者がモス・グリーンと呼んだ色は、単にクローム・グリーンに
ロー・アンバーやクローム・イエローの色調を加えた色のことです。

ウィロー・グリーン
C 31 M 22 Y 62 K 30
ウィロー・グリーンという色も日本の柳色のような明るい緑ではなく、
かなり黄みの強いくすんだ黄緑色のことです。
解説がないので、なんともいえませんがこの色名は葉の色を表わすのではなく、
ことによると絹毛を密生させた猫の尾のような花穂からとられた色名なのかも
しれません。
色はサローと同じ同系統です。
この色名もサローほどではありませんが、かなり古く1672年起源となっています。

青丹(あおに)
C 46 M 33 Y 78 K 6
丹は土の意味です。
染色や織物の色名にも青丹があります。
古くは、青丹そのもので染めたこともあったでしょうが、
青丹のような色に染められた色も青丹と呼んでいたそうです。
織色の青丹は、経糸が青、緯糸が黄で、黄みの萌黄色になったと
いわれています。
これらの青の表記もたいてい色は緑のことなのです。

ゲイ・グリーン
C 38 M 11 Y 100 K 50
鸚鵡の羽の緑色を表わす色明なので、本来なら
パロット・グリーンとするべきなのですが、それが
ゲイ・グリーンになってしまいました。
色名そのままの意味は、愉快な、または陽気な緑ということです。
ところが、この色名のもとは、フランス語で鸚鵡のことをいうパプゲに由来し、
そのpapeの音がとれてしまったそうです。

苔色(こけいろ)
C 62 M 42 Y 85 K 8
苔の色にはいろいろあって、本当の苔色とはどんな色なのか
断定することは難しいですが、染色などで苔色とされてきたのは、
一般に渋みのあるくすんだ黄緑色のことで、最近は英語の
モス・グリーンの色になりつつあります。
染色や絵の具の色名に苔色という名称は見あたらないですが、
襲の色目には苔色の色目があり、表も裏も濃い萌黄とされています。

青白橡(あおしろつるばみ)
C 55 M 35 Y 73 K 28
橡というのは団栗の古名で、昔はこの実の煎汁で濃い灰色を染めることが
多かったそうです。
ところがこの色名は、橡染とは無関係なのに橡の字が使われている、なんとも
特殊な色名なのです。
「延喜式」によれば、この染色には、黄色を染める原料の刈安草を大96斤、
紫染の原料の紫草を6斤、灰3石、薪840斤が綾1疋分として必要だったそうです。

きく塵(きくじん)
C 55 M 34 Y 70 K 24
麹の黴のような色のことで、中国式の名称です。
昔、天皇が平常着として着用された袍の色のことで、
文様は桐、竹、鳳凰、麒麟を織り出したものだったそうです。
臨時祭、舞御覧、庭座、賭弓、弓場始などの機会にも、麹鹿の袍を
着用されたとのことです。

草色(くさいろ)
C 72 M 40 Y 87 K 0
英語のグラス・グリーンにかぎらず、同類の色を表わす同種の色名は、
たいていの言語にあるにちがいありません。
緑色を表わす最も一般的な色名ともいえます。
草葉色ともいいますが、わざわざ葉の色とことわるまででもないし、
また、草緑ともいったようですが、草といえばたいてい緑を連想するから、
この緑も余計であって、結局、草色に落ち着いたといえます。

アイヴィ・グリーン
C 60 M 20 Y 75 K 25
最初にこの植物の緑が色名になったのは、1892年で、
フランス語でリュールと呼ばれていました。
それが1902年に、イギリス原産の木蔦の色からとられた
アイヴィ・グリーンになったそうです。
蔓によって生長する木蔦の一種のアイヴァは、
特に神聖な植物として珍重されているわけではありませんが、
やはり常に緑を絶やさない植物として、イギリス人には極めて身近なものに
なっているそうです。

松葉色(まつばいろ)
C 60 M 27 Y 70 K 30
狩衣の染色に松の葉のような緑色が用いられていたことが分かります。
襲の色目にも松重という色目があり、表が青、裏は紫とされています。
この色目には決まった季節がなく、雑の部に入れられているのは、
松が常緑樹だからです。
ここで青と書かれているのは、もちろん緑色のことです。

緑青(ろくしょう)
C 76 M 24 Y 65 K 21
仏教伝来とともに中国から伝わった顔料の一つで、天然のものを石緑といいます。
つまり孔雀石のことで、原料は英語のマラカイト・グリーンと同じものです。
古来、絵画の緑色絵の具の代表的なもので、彫刻や建築などの塗装にも
用いられてきました。

木賊色(とくさいろ)
C 78 M 34 Y 75 K 0
昔は濃い緑色の染色を表わす伝統的な色名でした。
襲の色目にもこの名前があり、表が黒ずんだ青、裏が白です。
表が萌黄、裏が白、または表と同色ともいい、主に老人が着用したと
いわれています。
昔は、木賊色という名前はごく一般的な緑色の染色名だったそうです。

青竹色(あおたけいろ)
C 76 M 0 Y 55 K 30
青竹色は煤竹色とは対照的な色のことで、青々と生育した竹の幹の色のような
濃い青みの緑色を表わす染色の色名です。
日本語の緑系統の色名は、ほとんどが自然の植物の緑にちなむ色名なので、
たいてい黄緑系統の濃淡になってしまいますが、この青竹色はその中では珍しく
青みの強い緑色を表わすのに用いられます。

ジャスパー・グリーン
C 80 M 28 Y 68 K 10
緑色の鉱物からとられた色名には、翡翠の緑を表わす
ジェード・グリーンがありますが、ジェードと呼ばれる鉱物には2種類あって、
それぞれ別の化合物なので色を決めることができない、とアメリカの辞書には
書かれています。
緑色の鉱石がジャスパー・グリーンという色名になっており、1902年から
使われています。

セラドン・グリーン
C 50 M 20 Y 50 K 10
17世紀初めに、英語の色名にセラドン・グリーンと
セラドン・イエローが出現しました。
イエローのほうは、緑土のテール・ヴェルトのことですが、
グリーンの色名は中国渡来の青磁の色を表わします。
セラドンを青磁のような柔らかな緑色の色名、そして
青磁の別名にしてしまってそうです。

老竹色(おいたけいろ)
C 55 M 20 Y 65 K 25
これも若竹に対する老竹で、生長途上の若竹の反対で、
年を経て、もはや勢いの衰えた竹のことです。
しかし、まだ生の竹だから、煤竹のように枯れて黒ずんだ
黄褐色なっているわけではなく、まだ青さを残しています。
ただ青竹色のように青々とはしていません。
くすんで灰色を帯びています。

老緑(おいみどり)
C 50 M 40 Y 70 K 10
若緑の対語としてこの老緑があります。
成熟した草木のような、くすんだ緑色をいうそうです。
若緑は若葉のような鮮やかな黄緑色のことでもありますが、
しばしば自然に対する美称でもあります。
しかし老緑が緑色の美称とは思えません。
もしそこに何かの美があるとすれば、無常観、達観した諦念のような
侘びの美とでも考えるほかはありません。

リンカーン・グリーン
C 37 M 22 Y 60 K 54
この色名は、ロビン・フッドのいたノッティンガムシャーではなく、
その東のリンカーンシャーで織られた羅紗布の染色に用いられた緑褐色に
由来しています。
当時のことだから、植物染料の黄色と藍の青とで染められた、
かなり黄みのあるくすんだ緑色です。
単独で緑色を染める植物染料はありませんでした。

海松色(みるいろ)
C 60 M 50 Y 75 K 30
多くの人に身近な海藻だから、古くからこの色のような
染色の色名として用いられてきました。
襲の色目にも海松の名称がありますが、その色目には諸説があって、
どれが本当の海松なのか確定できないそうです。
この色目も雑の部に入っていて、季節の別ではなく、主に
年輩者に用いられてきたそうです。

サップ・グリーン
C 78 M 60 Y 80 K 15
サップというのは樹液、または活力や元気を意味する言葉ですが、
絵の具の緑色にこのサップ・グリーンという色名があり、その色は
樹液ではなく「くろうめもどき」という植物の実から採取された
緑色のことだというそうです。
この色名はすでに1578年から使われている歴史的な名前ですが、
19世紀には、リーク・グリーンという色名でも呼ばれるようになりました。

鶯色(うぐいすいろ)
C 37 M 24 Y 97 K 62
渋い茶色の色が粋とされた江戸時代から登場した色名で、
しばしば鶯茶という色名と混用されています。
英語のオリーヴのような暗い緑みの黄色を表わします。
本来の鶯茶のほうはもっと茶色に近い色であったそうです。
どちらも鳥の鶯の羽毛のような色のことです。

セイジ・グリーン
C 53 M 27 Y 74 K 35
セイジはサルビアの一種でシソ科の多年草のことです。
その葉は、昔から薬用、調味料として用いられたので、花の色ではなく、
葉の緑からとられた色名が生まれました。
それも1596年起源という長い歴史をもつ伝統的な色名となりました。

根岸色(ねぎしいろ)
C 39 M 22 Y 60 K 50
根岸壁には鼠根岸、茶根岸、青根岸の種類があり、特に鼠根岸の色を
根岸色といっていたそうです。
鼠根岸の色は、鼠色といってもやや緑みがあります。
根岸は鶯の名所としても有名で、初音の里とも呼ばれていました。

オリーヴ
C 45 M 38 Y 100 K 53
これが色名になるのは当然で、18世紀からではありますが、
グリーン、イエロー、ブラウン、グレイなどの色名になり、
オリーヴ・ドラブ、オリーヴ・シーン、つまり冴えないオリーヴ色とか
オリーヴ光沢というような名前もできています。
一般に、黄の色相に黒が混じって暗くなったような色調を
すべてオリーヴという名称で分類します。

オリーヴ・グリーン
C 60 M 36 Y 100 K 60
英語のオリーヴという色名は、黄色に黒を混ぜ合わせた
黄の暗色全体を現す色名で、基本的な色の分類を表わす用語の
一種としても用いられています。
オリーヴと呼ばれる色の範囲はかなり広く、黄に近い
オリーヴ・イエロー、茶褐色のオリーヴ・ブラウン、
それより暗いオリーヴ・ドラブ、灰色よりのオリーヴ・グレイなど
個々に色名でも呼び分けられています。

深緑(ふかみどり)
C 90 M 18 Y 85 K 60
深緑は文学的な名称でもありますが、色名としては濃い緑色、
あるいは濃い藍色を表わします。
日本語では、緑が濃いことをしばしば青いと形容する習慣があり、
襲の色目で青と表記されているのはたいてい緑色のことなのですが、
和歌の場合は濃い緑色もちゃんと深緑となっており、
それぞれの表現に応じて使い分けられていたことが分かります。

ミント
C 90 M 35 Y 70 K 18
ミントは薄荷のことですが、ヨーロッパ原産の薄荷は
西洋薄荷という種類です。英語では、これをペパーミントといいます。
緑薄荷と呼ばれる種類もあり、こちらは英語ではスペアミントといいます。
薄荷の葉に含まれるメントールの独特の香りと風味は菓子、化粧品、
歯磨きなどに活用され、薬品としても用いられています。

ビリヤード
C 100 M 50 Y 80 K 20
この色名ができたのは1920年のことだからそんなに古いものでは
ありませんが、ビリヤードが19世紀初め頃から世界各国に普及するにつれて、
にわかにポピュラーな色名になりました。
この色は目が疲れないという古来の伝承と、緑色には、精神を統御し、
集中力を高める効果があるということがこの頃から信じられてきました。

ハンター・グリーン
C 90 M 56 Y 100 K 30
狩猟用の装備の色で、主に狩猟者の服の色に用いられた
暗いくすんだ緑色の色名として、19世紀に一般に使われるようになりました。
1892年には、ハンターズ・グリーンという色名もできました。
フランス語にも、狩猟用の意味のシャッスゥールとか、
狩の色のトン・ド・シャスという名前があります。

ボトル・グリーン
C 95 M 57 Y 75 K 43
英語では1816年にボトル・グリーンという名前が使われはじめ、
それより先か後かは分からないけど、フランスでも同じ意味の
ヴェール・ブーティユという色名が使われるようになりました。
最近では、ガラス瓶の色もいろいろになったから、この色名も
歴史的な特殊用語になってしまったようです。

鉄色(てついろ)
C 97 M 60 Y 78 K 40
日本語の鉄色は染色の色につけられた色名で、鉄の焼肌のような色
ということになっていますが、それほど鉄の色に似ているとはいえず一般に、
黒ずんだ青緑色のことをいいます。
染色の色では鉄は緑みのある青の色を表わす色名です。
アイアン・グレイは、鉄の実物に似ていますが、これも緑みの
グレイのことです。銑鉄の色には本当に緑みがあるのかもしれません。

白藍色(しらあいいろ)
C 30 M 0 Y 12 K 0
「延喜式」には、藍色の染色が紹介されており、そこでは藍色に
黄蘗を加えた染色を藍色と名付けています。
それはさらに4段階に区分されていますが、その藍色の染色区分は
次のようになっています。
一番濃い藍色は深藍色、次が中藍色、そして浅藍色、最後が白藍色
となります。
つまり白藍色は藍色の中では一番薄い色の色名となっています。
これらの染色の色名は、すべて使用する染色材料の数量によって規定されています。

瓶覗(かめのぞき)
C 32 M 0 Y 14 K 0
白藍色と同じように、藍色の一番薄い色につけられた色名で、
別名覗色とも言います。
室町時代末期にはすでに染色業が成立していたようですが、
その時代の薄い愛色は、一入染と言っていました。
つまり、藍瓶の中に1回布を潜らせただけ、という染色だったようです。
藍瓶の中をちょっと覗いただけの色、という意味のユーモラスな命名です。

ホライズン・ブルー
C 35 M 0 Y 20 K 0
英語の空色、スカイカラーの一種で、地平に接する淡い緑みの空色を
表す色名です。
日本語では、晴天の色を表す色名は空色ひとつしかないのですが、
英語にはいろいろな空色の呼び方があります。
西洋人は空に対して関心が強く、その色についても細かく観察していました。

水浅葱(みずあさぎ)
C 45 M 4 Y 14 K 0
浅葱水色や水色浅葱などという名前もあるので、浅葱色とも水色とも
どちらともいえないような薄い青のことと見当がつきます。
牢屋にいれられた罪人のお仕着せの色も水浅葱だった、と考えられる
川柳もあります。
「親分は水浅葱迄着た男」というものです。
もちろん、この色になんの罪も、ありません。

水色(みずいろ)
C 42 M 0 Y 10 K 0
薄い緑みの青から水の色を連想するのは、昔も今も、
また日本人も西洋人も同じです。
「万葉集」で水縹となっている色名も後世の水色のことだとされています。
平安時代には既に水色という色名が用いられていました。
今では子供たちが使うクレヨンや絵の具の色にも水色があり、
子供でも知っているような、たいへん一般的な色名になっています。

空色(そらいろ)
C 50 M 0 Y 3 K 0
可視範囲の光は、赤外線よりの長い波長では人間は赤い色を感じ、
波長が次第に短くなるにつれて橙色から黄などの色を感じ、
中波長域では緑を、さらに短波長の光になると青から青紫の色を感じるように
なります。
前記の法則によって、よく晴れた昼間の空では短波長の散乱光が強く、
空色として見えます。
これが日本語で空色と呼ばれてきた色の正体です。
一般には空のような明るい青のことです。

アザー・ブルー
C 60 M 10 Y 10 K 0
アザーもやはり空色のことです。
定冠詞をつけてthe azureと書くと、空色の詩語になるそうです。
フランス語ではeがとれてアズュール(azur)となり、海や空などの
青い色のことになります。
スペイン語ではアズール(azul)となってやはり青の基本色名に
なっています。
イタリア語でもアッズロ(azzurro)は空色や青空のことになります。

セレスト
C 53 M 20 Y 0 K 0
ラテン語の空(caelum)の形容詞(caelestis)に由来する
空色の色名として、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語などで
用いられていますが、これはただの空色のことではありません。
セレストは、神がいる至高の天空のことです。
この色名はこの世のものならぬ、妙なる空色の美称なのかもしれません。

スカイ・ブルー
C 39 M 11 Y 8 K 7
大気中の水蒸気や都市上空の埃によって空の色が変わり、
天頂と地平では青の色みが変化すると言われています。
そこでスカイ・ブルーの色を示す条件を付けています。
それは、夏の晴天の午前10時から午後3時までの間、水蒸気や
埃の影響の少ない大気の状態におけるニューヨークから
50マイル以内の上空を、厚紙に1インチ角の穴をあけて、それを
目から約30cm離してかざし、その穴を通して観察する、という
念の入ったものです。

ゼニス・ブルー
C 45 M 22 Y 0 K 20
天頂の青、という意味の空色の色名です。
1586年以来用いられてきたスカイカラーの色の変化が
だんだん細かく分類されるようになり、
ただのスカイ・ブルーだけでは間に合わなくなってきました。
そこで、散乱光が特に強い天頂の空色を表すゼニス・ブルーという色名が
1892年に登場し、やや紫みの深い青のことをさすようになりました。

千草色(ちぐさいろ)
C 52 M 10 Y 35 K 0
井原西鶴の「日本永代蔵」では千種色となっています。
草にもいろいろな種類があるので千草色になったようです。

新橋色(しんばしいろ)
C 67 M 4 Y 26 K 0
江戸が東京になり、明治新政府の政治家や官員、
新興実業家たちが利用する待合いや料亭が集まって、
にわかに繁盛するようになったのが新橋界隈でした。
そこの新橋芸者好みの色ということで、その色に
新橋色という名前が付けられました。
金春色という別名もあります。

ケンブリッジ・ブルー
C 63 M 5 Y 25 K 0
イギリスのテームズ川で行われる伝統のボートレースの際に用いられる、
ケンブリッジとオックスフォード両クルーの用いるスクールカラーは、
ケンブリッジがライト・ブルー、オックスフォードはダーク・ブルーと,br>
決まっています。
あるレースの時、ケンブリッジのコックスがボートの船首につける旗を忘れ、
急遽イートン・カラーのスカーフで間に合わせたのがケンブリッジ・ブルーの
始まりだったといわれています。

ベビー・ブルー
C 36 M 0 Y 7 K 15
ベビー・ピンクと同様、乳幼児服の標準的な色として用いられてきた
淡い青の色名です。
一般に知られるようになったのはベビー・ブルーのほうが36年の早く、
1892年から色名として使われました。

ポースリン・ブルー
C 50 M 7 Y 9 K 28
東洋渡来の青絵陶磁器の色から名付けられた色名で、
1789年から使われています。
中国製陶磁器に用いられているコバルト化合物の釉薬の色から
とられたようです。

オールド・ブルー
C 50 M 10 Y 18 K 25
アメリカのファッションカラーのサンプルに2つの異なる名前と色があり、
片方はオールド・ブルー、もう片方はフランス語でブルー・パッセと
なっています。どちらも1928年の流行色です。
オールドもパッセも、年取った、古い、昔の、という意味ですが、
色の形容としてはくすんだ灰色がかった色を表すのによく用いられます。

アクアマリン
C 75 M 60 Y 60 K 18
水のラテン語はアクア(aqua)なので、この色名は
海の水色を表しているように見えますが、実はこれは
緑柱石の一種で藍玉といわれる鉱石の名前であり、
その色の色名でもあります。
別名シー・グリーン(sea green)ともいうそうです。

フォーゲット・ミー・ノット
C 56 M 11 Y 5 K 0
勿忘草の花の名から付けられた1877年の英語の色名です。
日本では勿忘草色として訳されています。

ナイル・ブルー
C 75 M 27 Y 44 K 0
19世紀の80年代になって、エジプトの母なる大河ナイル川が
英語の色名に登場します。
この川は太古の昔からエジプトの大地を潤し、古代文明を
育ててきたのだから、その名前はヨーロッパでも古くから知られていて
当然ではありますが、なぜこの時期になってナイル川が色名に選ばれたのか、
その事情は不明です。
何かエジプトに対する社会的な関心が生じるような出来事があったと
予想されます。

ターコイズ・ブルー
C 80 M 7 Y 30 K 0
トルコ石といわれる青緑色の鉱石がターコイズです。
この石は青と緑の中間色相の色ともいえるので、色としても
たいへん貴重な存在で、色名になったのもかなり早く、
1573年に登場しており、しばしば青緑の色相を代表する
基本色彩用語としても用いられています。
一般の色名としてはブルーとグリーンの両方に使われていますが、
ターコイズとだけ呼んだ場合はブルーの色名とされています。

浅葱色(あさぎいろ)
C 94 M 26 Y 32 K 3
日本語の色名には葱色という色名はありませんが、葱の字は、
色が青くなることを示す染色の色名に使われています。
この色名も、薄い葱の葉のような色という意味です。

白群(びゃくぐん)
C 60 M 10 Y 10 K 5
百録と同類の色名で、こちらは群青の薄い色のこと。
やはり岩絵の具の色名です。
百群青ともいわれます。

シアン
C 100 M 20 Y 20 K 25
古代ギリシア語で暗い青、または単に暗いことを意味する
cyanosという言葉から派生したサイアニアス(cyaneous)という言葉が、
どうやらシアンという色名の起源だったそうです。
イエロー、マゼンタとともにシアンは混色の3原色にあげられ、
現在では普通の色名というよりは色彩の専門技術用語に近いです。

エジプシアン・ブルー
C 100 M 24 Y 18 K 28
アレキサンドロスが建設した古代エジプトの都で、ヘレニズム文化と
地中海貿易の中心だったアレキサンドリアの名前をとった
アレキサンドリア・ブルー(Alexandria blue)という色名があります。
これが後にエジプト青という名前で呼ばれるようになりました。

セルリアン・ブルー
C 100 M 35 Y 10 K 0
1590年に英語の色名になったセルリアンはスカイ・ブルーの一種でした。
それも当然で、この言葉も、セレスト同様、ラテン語のcaelnmを起源とする空色、
caeruleusに由来しています。
ところが19世紀になって、硫酸コバルトと酸化亜鉛と珪酸から作られる
美しい青色絵の具が工業生産されるようになり、この絵の具の名前にラテン語風の
カエルレウム(cae-ruleum)とか、セルレウム(ceruleum)というような名前が
付けられるようになり、1859年にはセルリアン・ブルーという色名が与えられるように
なりました。

露草色(つゆくさいろ)
C 90 M 40 Y 0 K 0
日本の青い花の代表とされていたのは露草の花です。
日本の染色では最初期の染料であったかもしれません。
「万葉集」では「つきくさ」の名で詠まれています。

縹色(はなだいろ)
C 98 M 64 Y 18 K 0
縹の字は中国名の借名だったようですが、日本古来の衣服令にはすでに
この名前が使われていました。藍染の色を表す色名です。
この色も階級によって深縹、中縹、次縹、浅縹というように
「延喜式」では4段階に分かれています。

コバルト・ブルー
C 95 M 62 Y 0 K 0
この青の色名が英語の語彙に登場したのは1777年ということですが、
まさにその年にこの顔料が吹管実験の副産物として発見されています。
このコバルトアルミン酸塩の顔料出現は、たちまち色名ができるほどの
事件だったのです。
それまでの絵画の歴史に登場した青色絵の具はどちらかといえば貧困だったので、
この新しい絵の具の登場は大いに歓迎されることになったそうです。
1799年にフランスの化学者テナールがアルミン酸コバルトの析出に
成功したことから、テナールズ・ブルーと呼ばれたこともありました。

ウルトラマリン
C 100 M 79 Y 0 K 0
瑠璃という青い宝石は仏教では七宝のひとつにあげられ、インドから
海を渡って日本に来ましたが、ヨーロッパへは青い石の意味の
ラピスラズリという宝石として渡来しました。
その青色は海の彼方から渡ってきたという意味でウルトラマリンと
呼ばれるようになりました。
この石から作られた顔料は最上の青とされ、聖母マリアの色となりました。
しかし、1828年に人工のウルトラマリンの製法が発見され、1830年代には
工場生産されるようになってから、この色もただの青色になり、青色絵の具の色名に
なってしまいました。

シュプリーム
C 90 M 70 Y 0 K 0
イギリスでガーター勲章の保持者は、25人に限られるといいます。
つまりこの勲章は最高の栄誉の象徴になります。
そこで、そのリボンの青も最高の青という意味で、シュプリームという色名が
できました。
やはり最高級のシュピァリアー(superior)ともいいます。
イギリスでは、何事にもよらず青が最高の色とされています。

ガーター・ブルー
C 93 M 68 Y 0 K 0
ガーターは靴下どめのこと。
このブルーの名前にはひとつの伝説が伝わっています。
それは1348年頃のイギリスの話で、ある日の宮延舞踏会での出来事になります。
時の皇帝エドワード3世をパートナーとして踊っていたさる伯爵夫人が、
踊りの最中に左足のガーターを落とし、見失ってしまいました。
それを見て笑ったものがいたので、騎士道精神を称えるために
ナイト爵位の最高勲章を創設することを思いついたのだそうです。
この勲章は紺青色の帯に、フランス語で「悪を思う物は悪である」と
金色で縫い取りをして、王が見つけたガーターにならい左足につけることと
されていました。
これが最高の栄誉を象徴するガーター勲章の起源になります。
色名は300年以上後の1669年にできました。

花色(はないろ)
C 81 M 65 Y 0 K 0
江戸時代まで着物の裏地などに最も多く使われていたのが
花色木綿であったことから、主に木綿の染色に用いられた藍染の通称が
花色という色名だったといえるかもしれません。
江戸後期のある資料には「花いろ古名はなだいろ又つきくさの花のいろ」と
書かれています。

ロイヤル・ブルー
C 92 M 70 Y 0 K 0
王室の青を意味するロイヤル・ブルーは、16世紀には
コバルトガラスの顔料スマルトの別名でした。
また19世紀にはプルシャン・ブルー(prussian blue)の別名でも
ありました。
それが1892年以来、イギリス王室の公式の色という文字通りの
ロイヤル・ブルーになりました。
濃い鮮やかな青の色名として一般にもよく知られています。

プルシャン・ブルー
C 100 M 87 Y 0 K 6
この青い顔料は1704年に発見されました。
それもドイツとフランスでほぼ同時に発見されました。
ドイツの絵の具商ディースバッハとフランス人ミロリが
その発見者になります。
動物性カリウムを熱し、硫酸第一鉄を加えて偶然できた
青い沈殿物からつくられた最初の合成無機顔料は、まさに
画期的な発見でした。
そこで、この青は勝手な名前で製造されることになりました。
発見地からベルリン・ブルー(berlin blue)とパリス・ブルー(paria blue)、
発見者からミロリ・ブルー(miloli blue)、鉄が原料なので
スティール・ブルー(steel blue)、ブロンズ光沢の2色性があるので
ブロンズ・ブルー(bronze blue)など、その他多くの別名があります。
結局、発見当時のベルリンはプロイセン王国の首都だったので
プルシャン・ブルーに落ち着きました。

パウダー・ブルー
C 92 M 82 Y 0 K 0
パウダー・ブルーという色名は1707年にはすでに用いられていたそうですが、
これはフランス語のプードル・ブルー(poudre bleu)に由来するものだそうです。
パウダーもプードルも粉、粉末という意味で、青い粉末のことだと言います。
何の粉末かというと、コバルトガラスの顔料として古くから知られていた
スマルト(smalt)の粉末のことだそうです。

群青色(ぐんじょういろ)
C 95 M 80 Y 0 K 0
青の集まりとという意味の名前です。
日本画の代表的な青色絵の具の色名でもあります。
また岩絵の具の群青のことにかぎらず、それに似た色を表す
一般的な色名としても用いられています。
主に藍銅鉱のアズライト(azurite)の粉末から作られた絵の具が
群青になります。
英語のアズライトは別名バイス・ブルー(bice blue)と呼ばれています。

ピーコック・ブルー
C 100 M 50 Y 47 K 0
孔雀の首の羽に見られるような鮮やかな青の色名です。
本来コーピックという色名はブルーのことで、1598年頃には
すでに使われていました。
1882年にコーピック・グリーンという呼び名ができたので、
それと区別するためにピーコック・ブルーというようになったそうです。

納戸色(なんどいろ)
C 100 M 40 Y 31 K 35
藍染の色名のひとつとして納戸色というものもあります。
御納戸色ともいいます。
これは江戸時代の代表的な藍染の色名で、古来の藍色のような緑みはなく、
縹色ほど鮮やかな色でもなく、いくらかくすんだ色調の濃い青のことをいいます。

サックス・ブルー
C 66 M 14 Y 0 K 30
サクソニー人(saxony)の、またはサクソン人(saxon)の青
という意味の色名です。
もともとサックスはフランス語だったとのことだそうです。
ドイツのエルベ川流域のザクセン地方。
このあたりは歴史的にも青い色に縁が深いようです。
1550年頃まではサクソニー・ブルーはコバルトガラスの顔料である
スマルトのことだったそうです。
またフランス語のブルー・ド・サックス(bleu de saxe)は、
プルシャン・ブルーの別名でした。
しかし、1753年以来、サクソン・ブルーは藍染の名前として
広く一般に用いられるようになり、1915年からサックス・ブルーは
主に繊維製品のための色名となりました。

錆納戸(さびなんど)
C 90 M 47 Y 40 K 30
納戸色の変種で、錆御納戸と御の字が付くこともあります。
錆というのは金属の錆びたような色の形容ではなく、どちらかというと
「寂び」の美意識に近く、ややくすんで灰色を帯びた納戸色という意味です。

ジェイ・ブルー
C 80 M 50 Y 20 K 5
ジェイはアメリカ大陸に棲息する懸巣の一種で、この色名になっているのは
どうやら青い羽をもつ瑠璃懸巣のことだそうです。

ウェッジウッド・ブルー
C 557 M 30 Y 5 K 25
J・ウェッジウッド(1730~1795年)がつくりだした美術陶磁器の色から
名付けられた色名です。
これは単にその色のことを指すにとどまらず、何の色にも用いられるほど
広く知れ渡った色名になっています。
そのウェッジウッド製焼き物は、無光沢の青の地色の上に小さな白いカメオが
浮き出ている優美なデザインが有名ですが、色名になったのはその地色の青でした。
その青い色にもウェッジウッド・ライトとウェッジウッド・ダークの2種類があります。
どちらも色名になったのは1892年です。

スレート・ブルー
C 60 M 40 Y 20 K 20
屋根瓦として薄く板状に切って用いられる粘板岩がスレートで、
これにもいろいろな色調があるので総称してスレート・カラーといいます。
その中で1番早く個別の色名になったのは1705年のスレート・グレイ(slate grey)です。
次に登場したのがスレート・ブルーです。
ほかにも幾つもの色名がありますが、どれも灰色に近いくすんだ色になります。

ティール・ブルー
C 100 M 30 Y 10 K 48
ティールは小鳩のことです。
図鑑の写真では青い羽のところは殆どないのですが、それでも青緑色の色名に
なっています。
真鴨色というのは、おそらくティール・ブルーの訳語ではないかと言われています。
色名の起源は比較的新しくて、1927年となっています。
その10年前にティール・ダック(teal duck)という色名もありましたが、
色はティール・ブルーとほとんど変わりません。

サファイア・ブルー
C 90 M 45 Y 12 K 38
この宝石の名前の語源は、セム族が使っていたセム語の言葉だったといいます。
つまりヘブライ語、アラビア語、エジプト語などに属する言葉だったのだから、
これらの民族がこの宝石の発見者だったに違いありません。
それがギリシア語、ラテン語に伝わって青い宝石のラピスラズリのことになりました。
東洋で瑠璃という宝石のことです。
それが後に青玉と呼ばれるサファイアのことになったといわれています。
英語の色名サファイアが登場したのは、1430年という早い時期のことでした。

デルフト・ブルー
C 95 M 83 Y 0 K 19
デルフトはオランダの年の名前ですが、18世紀の初めに、初めて中国産陶磁器の
独特の色合いを作り出すことに成功し、デルフト焼きの名声を高めたことで知られています。
英語でも19世紀以来、青の色名として広く知られています。

スマルト
C 90 M 65 Y 0 K 48
古代エジプトやミケーネ文明の時代、コバルト鉱を焼いて石英やアルカリを
一緒に溶解させるとコバルトガラスができます。
これを粉末にしたものが人類最古のコバルト顔料といわれるスマルトです。
日本では花紺青の名で知られるようになりました。

エナメル・ブルー
C 90 M 65 Y 0 K 40
エナメルは砕いて溶解させた色ガラスのことです。
この色名は1550年代にできたものなので、この時代の色ガラスの粉末といえば
スマルトのことにほかなりません。
スマルトの青には数多くの別名があり、エナメル・ブルーもそのひとつです。

茄子紺(なすこん)
C 73 M 86 Y 43 K 60
本来、紺色は濃い紫みの青のことですが、その紺の中でも紫が強くなると、
紫紺となります。
紫紺がさらに暗い色になると茄子の実のような色になるので、茄子紺といわれるように
なりました。

鉄紺(てつこん)
C 78 M 40 Y 23 K 78
濃く染めた藍染の色を一般に紺色といいます。
藍は濃く染めるほどやや紫みを含む青になるものだそうです。
その中であまり紫みの青にならない紺色を鉄紺と呼びます。
染色の色名に修飾語として鉄の字が付くと、一般に緑みの青のことになります。

マリン・ブルー
C 100 M 58 Y 30 K 33
この色名は19世紀になってからできたもので、由来は水夫、水兵などの
海事従業者が伝統的に藍染の制服を着用していたことから名付けられたものだそうです。
実際のところ海軍の青を意味するネイヴィ・ブルー(navy blue)と同じ色名だそうです。

藍色(あいいろ)
C 100 M 68 Y 20 K 42
染料の藍と溶いて流したような海の色を、海の藍と形容します。
藍色とはそんな色を表す色名です。
ところが縹色も純然たる藍染の色名だから藍色とはどこか違うはずです。
「延期式」によれば、藍色にも4段階があったようです。
深藍色、中藍色、浅藍色、そして白藍色です。
これらの色はいずれも藍染ではありますが、藍のほかに黄色の染料である
黄蘖を併用して染めるところが、縹色の染色とは違います。
つまり同じ藍染でも、縹色よりやや緑みを含む青が藍色なのです。

紺色(こんいろ)
C 100 M 90 Y 30 K 38
藍染の暗い色の通称が紺になります。
天然染料の時代には、色が濃いほど高級な色とされ、古来の衣服令でも
濃い色のほうが必ず高位の色と決まっていました。
しかし、藍染の濃い色は高位高官の色ではありませんでした。
濃い紫や濃い紅色は禁色とされ、近世になっても奢侈禁止令などで
赤や紫などの濃い色はしばしば使用が禁止されてきたにもかかわらず、
濃い藍染は禁じられた形跡がありません。
紺色はいわば日常生活に欠かせない必要な色だったのです。

ネイヴィ・ブルー
C 100 M 88 Y 23 K 46
海軍の青、水兵の青という意味の色名で、意味はまるで違いますが、
日本語の色名を当てはめれば紺色が色としては1番近いです。
どちらも藍染の濃い青の色名です。
しかし歴史は紺色のほうがずっと古いようです。
ネイヴィ・ブルーという色名の最初は1840年となっていて、1915年には
ただのネイヴィと呼ばれて一般の色名になってしまいました。

インディゴ
C 100 M 70 Y 8 K 71
藍の色を表す色名です。
藍は茜とともに人類最古の植物染料だから、インディゴという色名も
記録に登場したのは非常に早く、1289年となっています。
もちろん藍染の歴史はそれよりはるかに古く、紀元前の時代にまでさかのぼります。
この色はインド藍に由来しています。
インド藍はマメ科、日本の藍は蓼藍というタデ科、大青はアブラナ科と、
植物は違いますが、いずれも葉にインディゴの前駆体を含みます。

濃紺(のうこん)
C 100 M 90 Y 38 K 50
もともと紺色は濃い藍染の暗い青の色名なのですが、その中でも
紺をさらに濃く染めた暗い紺色を濃紺といいます。
これもおそらく近世の色名に違いありません。
この濃紺を褐色ということもあります。
江戸時代の武家の伝承を記録した資料によれば、これを
「かちんいろ」と読むこともあり、日露戦争の頃には勝色とか軍勝色などとも
いわれたそうです。

ミッドナイト・ブルー
C 100 M 93 Y 50 K 70
日本語の濃紺あるいはもっと黒に近い留紺のような暗い青は、英語では真夜中の青、
つまりミッドナイト・ブルーという色名になります。ブルーは付けなくてもいいそうです。
一説によれば明の時代の中国製磁器の釉薬の青い色からとられた色名で、本来は
ミン・ブルー(ming blue)だったと書かれている資料もありますが、やはり
ミッドナイト・ブルーのほうが色名としてはずっといい名前なので、
こちらが使われるようになったのは当然ということでしょう。
1915年に登場した色名です。

藤色(ふじいろ)
C 40 M 38 Y 0 K 0
明るい青みのある紫色を表す色名に、西洋では
ラベンダーの花の色が選ばれましたが、日本語の伝統色名では
藤の花房からとられた藤色に代表されます。
襲の色目では、藤は紫と薄紫、または薄紫と青などのほか、
諸説があります。

竜胆色(りんどういろ)
C 50 M 50 Y 10 K 0
竜胆は、桔梗と並んで日本の秋を代表する青紫色の花で、
その花の色からとられた色も桔梗色とともに古くから用いられてきました。
襲の色目ではスオウとハナダ、あるいは濃ハナダと紫などの組み合わせが
表裏の色とされています。
1865年に英語でも色名があり、ジェンシアン・ブルー(gentian blue)と
いいます。
しかし英語ではブルーの色名になっています。

ラヴェンダー
C 38 M 47 Y 6 K 0
ラヴェンダーの花のような明るい青紫色の色名ができたのは、
1858年のことです。
これと同じ色は、1796年には青い色ということになっていて
ラヴェンダー・ブルーと呼ばれ、さらにさかのぼって1705年には
ラヴェンダー・グレイであったといいます。
この花は、昔から水浴の際の香水に用いられたことから
ラテン語で洗うことを意味するラヴァレ(lavare)、
青みのあることに関係のあるリヴェレ(levare)などから
名前が付いたといわれています。

ライラック
C 32 M 46 Y 0 K 0
ライラックの花の色からとられた薄紫色の色名。
英語の色名として定着したのは1775年前後とされています。
この時代にはまだ紫や赤紫の化学染料は発見されていないので、
単にライラックの花のような色という一般的な色名だったのかも
しれません。
化学染料の出現の後の1905年には、フランス語のリラ(lilas)
という名前に変わって流行色の色名になります。
ラヴェンダーよりも赤みの薄紫色です。

若紫(わかむらさき)
C 40 M 50 Y 0 K 0
「古今和歌集」、「伊勢物語」、「源氏物語」に若紫が出てきますが、
これは色の名前ではなく、紫草の若い根のことと、人の名前です。
ところが、江戸時代になると若紫は染色の色名として登場します。
元禄の頃には、若向きの明るい紫色の色名になっていました。

藤紫(ふじむらさき)
C 40 M 50 Y 0 K 5
藤色のやや青みの少ない明るい紫色を藤紫といいます。
主に染色の色名として用いられました。
紫藤ともいったようですが、結局、藤紫に統一されました。
この染色は江戸末期に現れたそうですが、流行色として
注目されるようになったのは明治になってからだといわれています。
化学染料が知られるようになり、古来の藤色よりも鮮やかな染色が
可能になったことから、藤紫という名前がその新しい色に使われることが
多くなったようです。

半色(はしたいろ)
C 42 M 50 Y 10 K 5
端色とも書きます。
一風変わった名前で、この文字からはどんな色のことかわかりませんが、
これも薄紫の伝統的色名です。
といっても、いわゆる浅紫のことではなく、もちろん深紫のことでも
ありません。
そのどちらの名前でも呼べないような、どっちつかずの色のことを
半色という名前で呼んだのです。

薄色(うすいろ)
C 25 M 3.5 Y 10 K 30
薄色というのは一般には薄い色全般を指すのですが、
伝統色名としては紫の薄い色のことになります。
日本で官位を象徴する衣服の色の最高位は、古来、
紫と決まっていて、紫は常に色の王者であったので、
濃色、薄色といえば、紫の濃淡であることはことわるまでも
なかったのです。

紫苑色(しおんいろ)
C 72 M 80 Y 0 K 0
紫を至上の色として尊重しただけでなく、色としても
この上なく美しく、奥ゆかしいと感じていた平安時代の貴族社会では、
花の色も紫が特に愛好されていたとみえます。
青紫から紫にかけての花からとられた色名もいろいろあって、
それらの色を衣服や装飾に用いて愛用していたようです。
紫苑もそのひとつで、当時の文学作品にもよく登場します。

桔梗色(ききょういろ)
C 75 M 80 Y 0 K 0
桔梗は、昔は秋の花と決まっていました。
平安時代には、襲の色目の桔梗が、衣装の色として
当時の物語などに登場します。
近世になっても、桔梗色は青紫の染色では代表的な色名に
なっていました。
桔梗花色、桔梗納戸のように紫みのある青の染色の修飾語に
使われるほど、桔梗は紫系の色として一般に知られた色名に
なっていました。
桔梗色は日本の秋の季節を代表する色名であったばかりでなく、
青紫の代表的な伝統色名だったともいえます。

菖蒲色(しょうぶいろ)
C 72 M 85 Y 0 K 0
これを「あやめいろ」とも読みます。
菖蒲はもともとサトイモ科で、花を観賞するアヤメ科の花菖蒲や
アイリスとは別種なのですが、昔はこれらの区別が曖昧で、全て花の色は
紫とされていました。
菖蒲色は尚武にかけて端午の節句の服色ともされていました。

ウィステァリア
C 58 M 65 Y 0 K 10
ウィスタリアというほうが日本ではわかりやすいかもしれません。
藤色の色名として比較的よく知られています。
しかし藤はなんといっても日本の花で、欧米ではこの色名は
それほど由緒ある名前ではありません。
ウィステァリアという色名も1892年にできた名前です。

杜若色(かきつばたいろ)
C 70 M 82 Y 0 K 0
杜若は燕子色とも書きます。
もとは「書きつけ花」であって、それから転訛したもの
とのことです。
露草の着草と同じように、昔、この花の汁で布を染めていた名残です。
この花の汁を布に摺り付ければ紫色になったのでしょう。
この名前の由来からして、この色が古くから知られていたことは
想像できます。しかし、杜若色という色名が記録に現れるのは
平安朝の襲の色目の名称からです。

菫色(すみれいろ)
C 68 M 79 Y 0 K 0
菫色も、襲の色名にもその名前があるように、
古来から使われてきた伝統色名には違いありませんが、
色名として一般に知られるようになったのは近代に
なってからのことで、現在、菫色とされている色は
英語でヴァイオレット(violet)と呼ばれる色のことと
考えられます。
英語のヴァイオレットは1370年代から使われています。

楝色(おうちいろ)
C 63 M 70 Y 0 K 0
楝は栴檀(せんだん)の古名で、やはり薄紫の花を咲かせるので、
その花色からこの色名が生まれました。
「あふち」ともいっていたようです。
襲の色目としては、これは夏の色とされていました。

モーヴ
C 60 M 82 Y 0 K 0
1856年、イギリス王立カレッジの18歳の化学生が
マラリアの特効薬キニーネをコールタールから合成しようとして
偶然発見した化学染料に、フランス語で葵を意味する
モーヴェイン(mauvein)と命名しました。
こうして、コールタールから作られた新染料で染められた
紫色の色名として、モーヴが誕生しました。
モーヴは葵の花よりも鮮明な紫色です。

本紫(ほんむらさき)
C 50 M 86 Y 0 K 0
紫という色は、赤と青の中間に感じられる色で、
長波長端の赤の光と短波長側の青の光が同時に
視覚を刺激することにより、初めて見える色です。
しかし古来の植物染料には、紅と藍との交染によらなくても、
単独で紫色に染色できる植物が存在していました。
それが日本に自生していた多年草で、紫草と呼ばれていた植物です。
その根を紫根といい、それを砕いて粉にし、水を加えると
紫色の液体になります。
それに灰汁を媒染として、布を付けたり出したりを数十回も繰り返して
紫色を染めたといいます。
この紫根染による伝統的な染色の紫が、本紫です。
江戸時代にもっと簡便な材料と方法で染められた似紫(にせむらさき)と
区別するために、近世に作られた色名です。

チリアン・パープル
C 37 M 94 Y 20 K 10
西洋における古代紫のことで、チル(Tyr)またはテュレ(Tyre)の紫、
という意味の色名です。
色見本は1926年のチリアン・ヴァイオレットの色です。

マロウ
C 18 M 75 Y 0 K 0
マロウは葵のこと。
その花の色から付けられた色名は1611年から記録されています。
色は葵の花のような濃い赤紫色で、主にマロウ・パープル(mallow purple)
の名で紫の色名として使われていました。
1912年にはマロウ・ピンクという色名も登場しています。

江戸紫(えどむらさき)
C 70 M 90 Y 30 K 0
「古今和歌集」と「伊勢物語」にある歌によって、
紫色は縁(ゆかり)の色と呼ばれ、紫草は武蔵野の名草と
されていました。
江戸時代にこの故事が思い出され、江戸は紫の本場と
考えられるようになり、江戸特有の紫染めが誕生しました。
これが江戸紫と呼ばれ、江戸っ子自慢の色になりました。
京の緋色とともに、美しい色の双璧とされていました。

古代紫(こだいむらさき)
C 60 M 85 Y 22 K 13
古代紫という色名は、新しい今風の派手な紫を
今紫と命名したのに対照させた呼び方です。
その古代紫を、古代そのままの染め方で染めたという
保証はありません。古代を思わせる紫ということでしょう。

京紫(きょうむらさき)
C 62 M 84 Y 33 K 10
古来の古代紫や本紫に近い、やや赤みの紫は、江戸紫に対して、
京紫と呼ばれていました。
「貞丈雑記」という文書によると、紫色は今世では京紫という色で、
昔の葡萄染が今の江戸紫だと書いてあります。
また紫は花菖蒲の色、葡萄は杜若の花の色で、京紫は赤みがあり、
江戸紫は青みがあるとも書かれています。

ヘリオトロープ
C 64 M 100 Y 20 K 0
これも花の色から名づけられた紫色の色名です。
1882年前後の色名とされているから、化学染料による紫色の流行が
発生した後に登場したものです。
一般的には薄紫色を連想する人が多いのですが、
英語のヘリオトロープは鮮やかな赤紫色の色名になっています。
日本人がヘリオトロープと思っている色は、1912年にできた色名、
ヘリオトロープ・グレイ(heliotrope grey)のほうに近いです。

ロイヤル・パープル
C 60 M 95 Y 20 K 13
この英語の色名は1661年以来の有名な名称ですが、王室の紫
という意味の由来は、これよりはるか昔にさかのぼるのでは
ないでしょうか。
この色名で呼ばれる色については、辞書には濃い赤みの紫としか
書かれていませんが、その由来は古代皇帝の権威を象徴した赤紫色です。
本来この紫は地中海に生息した骨貝の一種のパープル腺から
分泌される粘液で染められた色です。
ロイヤル・パープルの色は、勿論後世の染料により、
古代の幻の色を創造力により復元したものです。

ピアニー
C 35 M 100 Y 10 K 28
ピアニーとは芍薬のこと。
東洋では牡丹が赤紫の色名にとり上げられていますが、
英語の色名には同じキンポウゲ科の芍薬の花が選ばれ、
ピアニー・パープルまたはピアニー・レッドと呼ばれています。
ピアニー・パープルが色名になったのは1918年、
ピアニーレッドは1926年です。

二藍(ふたあい)
C 56 M 60 Y 22 K 50
2種類の藍で染めた色、という意味の伝統色名です。
この藍というのは、青を染める藍に限らず、昔は染料の代名詞でした。
織物の色の名前にも二藍があり、経糸が紅、緯糸が藍で染められた
織物の色名になっています。

鳩羽鼠(はとばねず)
C 40 M 50 Y 0 K 60
鳩の背羽のような紫みの鼠色のこと。
もっと灰みの少ない色を鳩羽色といいましたが、
最近は波止場色と錯覚する人が多いです。

マーリー
C 70 M 85 Y 50 K 34
本来はマルベリー(mulberry)というべきでしょう。
桑の実のような濃い赤紫色のことです。
日本語の桑の実色という色名で呼ばれる色のことです。
ただし、マーリーという色名が起源は一番古く、
1403年とされていて、これは古フランス語から派生したのだそうです。

濃色(こきいろ)
C 43 M 65 Y 41 K 60
これもただ濃い色のことではなく、深紫(こきむらさき)のことでした。
昔は色といえば紫のことで、特に紫と断るまでもなかったのです。
至極色とも呼ばれています。
英語のシュプリーム(supreme)と同じ由来です。

滅紫(けしむらさき)
C 50 M 70 Y 30 K 50
音で「めっし」とも読みます。
現在なら、灰みの色は灰み、という修飾語をつけるか、
くすんだ、にごった、などと形容するところですが、
昔はその色らしさが枯れる、滅びるという意味で「滅」という字を
修飾語に選びました。

似紫(にせむらさき)
C 80 M 100 Y 50 K 0
本紫に比べるといくらか赤みのくすんだ色であったようで、
紫根染より気品にかけていたようだから、井原西鶴は「好色一代女」の中で
客引きの茶屋女に似紫の着物を着せています。

レイズン
C 53 M 90 Y 34 K 53
紫の葡萄を表すグレープ(grape)は1916年、
グレープ・ブルーが1928年、グレープ・ジュース(grape juice)は
1921年の色名です。
レイズンは1892年から使われており、1912年にはレイズン・パープルに
なります。
一番色の暗いレイズン・ブラックが1905年に色名として登場しますが、
ブラックといっても黒ではなく、ごく暗い紫色のことです。

アマランス・パープル
C 17 M 80 Y 30 K 50
昔のヨーロッパの人々は永遠にしぼむことのない常世の花を
空想の中で作り出しました。
その花の名がアマランスです。色名になったのは1690年といいます。
アマランスによく似た色の宝石が、紫水晶のアマシスト(amethyst)で、
これが色名に採用されたのも非常に早く、1572年とされています。

スノウ・ホワイト
C 3 M 0 Y 2 K 0
この英語の色名はすでに1000年も昔から存在していました。
はるか太古の時代から、地に降り積もる雪は白いに決まっていたのだから、
この色名もまったく当たり前といえばそれまでですが、
色名のイメージ喚起効果をこれくらい鮮やかに示すサンプルはあまり多く
ありません。
この色名は昔から、日常の話し言葉でも、また文学的な修辞においても、
いわば白に対する最上の美称として用いられてきました。

鉛白(えんぱく)
C 3 M 0 Y 3 K 0
人工の白色顔料としては非常に古くから知られていたのですが、
塩基性炭酸塩の鉛白です。
英語のホワイト・レド(white lead)と同じです。
どちらも白の色名というより顔料の名前といったほうがいいです。
この白の歴史は古代までさかのぼります。

乳白色(にゅうはくしょく)
C 3 M 0 Y 10 K 0
色名としては英語のミルク・ホワイト(milk white)を
とりあげるべきですが、昔から日本語の色名には動物に由来するものが少なく、
とりわけ酪農関係の名称は乏しいので、ここは乳白色を取り上げることに
しました。
しかしこの色名には別に語るべき歴史も由来もなく、
乳のように不透明な白い色を表す慣用色名というだけのことです。
流石に英語のミルク・ホワイトは歴史が古く、1000年頃から使われていたと
いいます。

生成り色(きなりいろ)
C 3 M 10 Y 15 K 0
「生成り」とクラシックな表現をしていますが、これは伝統的な色名には
ありませんでした。
生成りという言葉は江戸初期から既に使われていて、それ自体は確かに
古くからあった言葉です。
しかしその意味は、素朴で飾り気がないこと、或いは気の赴くまま、ということで、
むしろ「気成り」と書くほうが本来の意味に近いでしょう。
ですがこれがあるとき、新しい流行色名として取り上げられるようになりました。
黄みの白色です。

灰白色(かいはくしょく)
C 5 M 6 Y 12 K 0
「はいはくしょく」と読ませる色名資料もありますが、
どちらにしてもこの色名はたいした由来も来歴もありません。
ごくわずか灰色みのある白のことだといいます。

オイスター・ホワイト
C 0 M 0 Y 10 K 5
オイスターは蠣(かき)のことです。
生蠣の身の色は、ある部分はほとんど白に近い灰色であり、
またある部分はグレイともいえるような色なので、
オイスター・ホワイトとオイスター・グレイの両方の色名があります。
ホワイトは1893年、グレイはその翌年にできた色名です。
ホワイトでもグレイでも、いずれにしても白に近い黄みの灰色をあらわす
オフ・ホワイトの代表的な色名とされています。

卯花色(うのはないろ)
C 5 M 0 Y 10 K 0
幹が中空のため空木(うつぎ)という名の付いた植物があります。
その花が卯の花で、雪かと紛うと形容される白い花を咲かせます。
日本古来の白の色名に、この花からとられた卯の花色があります。
豆腐のおからも卯の花といいますが、あれはそんなに白くありません。

パール・ホワイト
C 0 M 0 Y 10 K 18
真珠の白という色名。
この色の名前は既に1590年に現れます。
そして1604年にはただのパールになります。
真珠の色は白というのが一番常識的ですが、実際は
パール・グレイという呼び方が最も正確でしょう。

パティ
C 0 M 10 Y 20 K 18
日本では最近、建具はすっかりアルミサッシになって、
ガラスを窓枠に固定するパテを見ることは殆どなくなりましたが、
古い建物が昔のままに残っている欧米では、まだ木製の窓枠に
パテで留めたガラス窓がたくさんあります。
パティはガラスを窓枠に固定するパテのことです。
色名としては1889年から使われていて、なんとなく白に近い
黄みの灰色のこととされています。

アッシュ・グレイ
C 13 M 7 Y 32 K 22
英語にも灰色に相当するアッシュグレイという色名がありますが、
ただのグレイではなく灰のアッシュが付いているので、
これは無彩色の灰色ではないということがわかります。
やや緑みを含むグレイで、グレイを付けずにアッシュだけでもいいです。
1374年の色名となっていて、ずいぶん昔から使われていたことがわかります。

フォッグ
C 10 M 0 Y 5 K 18
水蒸気の膜によって、その向こうにあるものを
ぼんやりと灰色がかった色に見せるのは、霧のフォッグ(fog)と
靄(もや)のミスト(mist)と霞のヘイズ(haze)で、
英語ではどれも薄い灰色がかった色の形容に用いられています。
一番濃いフォッグは1922年の色名です。

シルヴァー・ホワイト
C 5 M 0 Y 0 K 18
日本語では鉄の「くろがね」、金の「こがね」に対して
銀のことを「しろがね」といいます。
白銀色というのも銀色の美称です。
つまり銀色の美しさは白にあると思われていたのです。
シルヴァー・ホワイトも、1481年以来用いられてきた
シルヴァーの名前が、1928年にシルヴァー・ホワイトに
なっただけで、色は変わらず名前だけ白さが強調されたに
すぎません。

シルヴァー・グレイ
C 5 M 0 Y 0 K 30
英語の銀色のシルヴァーは1607年にシルヴァー・グレイとなり、
シルヴァー・ホワイトとも呼ばれるようになりますが、どちらの名前も
同じ色のことです。
これとは別にニュー・シルヴァーとオールド・シルカーという
2つの名前でも区別されています。
色自体にはそんなに差があるわけではないので、繊維関係や塗料や
絵の具の色として、どちらの色もシルヴァー・グレイの名前で通用しています。

柴色(ふしいろ)
C 38 M 40 Y 50 K 0
柴染(ふしぞめ)のことです。
江戸時代にこれが流行色になったそうで、昆布茶というのは
柴染の色の近世の色名であったといいます。

スレート・グレイ
C 5 M 18 Y 18 K 41
ヨーロッパ諸国で屋根のかわらとして使われている粘板岩の薄板は、
日本では石板または石盤と訳され、それが色名になって石板色といいます。
このスレート・グレイの色名は一連のスレート・カラーの中では
一番早く出現したもので、1705年にできています。

サンド
C 30 M 42 Y 50 K 12
サンドとは砂色のことです。
砂の色はいろいろあるので、この名前から連想される色も
人によってさまざまでしょう。
1627年から色名になっているサンドの色は、
かなり黄褐色を帯びたグレイです。
波打ち際の湿った砂の色のようです。
そこで、この同じ色が1923年には砂浜の色、
ビーチ(beach)の名前でも呼ばれるようになりました。

マウス・グレイ
C 49 M 59 Y 70 K 30
英語にも鼠色があります。
しかし、これもグレイという名は付いているものの、
無彩色のねずみ色のことではありません。
グレイが付いていなければ、寧ろ茶色の仲間に入れたほうが
いいような色をしています。
もともとグレイを付けず、ただマウスという名で呼ばれていたらしいです。
この色名が登場したのは1606年で、日本では江戸時代が始まったばかりです。

空五倍子色(うつぶしいろ)
C 0 M 20 Y 30 K 68
白膠木(ぬるで)の葉軸にアブラムシの一種のムシシチュウが刺激を与えると、
そこに虫瘤ができます。これを五倍子といいます。
内部が空洞だから空の字が付きます。
この瘤には大量のタンニンが含まれているので薬用や染色に用いられました。
この色が空五倍子色です。

灰汁色
C 0 M 9 Y 29 K 55
灰汁色は、灰を水に浸して沈殿させ、ろ過してできた上澄みになる前の
にごった、灰汁のような色のことです。
英語のアッシュグレイと同じく完全な無彩色の灰色にはならず、
黄褐色を含む灰色になったようです。

深川鼠(ふかがわねず)
C 33 M 8 Y 30 K 35
鼠という名前が付く色がすべてグレイの濃淡とは限りません。
いろいろな色みのあるくすんだ色が、どれもこれも鼠を名乗っていたのが
江戸時代後半の染色事情の特色でした。
深川鼠は川筋の粋な場所にあやかってつけられた名前です。

シメント/セメント
C 0 M 10 Y 10 K 45
日本でセメントといっている土木建築材料の接合剤のことです。
その色を表す色名がシメントです。1922年にできた色名で、
やや青みのある灰色のことをいいます。

銀鼠(ぎんねず)
C 0 M 0 Y 0 K 50
白鼠(別名、銀色:しろがねいろ)についで明るい
銀のような鼠色のことです。
この明るい鼠色は、昔は喪の色でもありました。
しかし江戸時代には粋な流行色に生まれ変わりました。

薄墨色(うすずみいろ)
C 8 M 5 Y 6 K 50
墨染の薄い色のことで、グレイを表す日本古来の色名でした。
不吉な色とされていました。

灰色(はいいろ)
C 15 M 8 Y 8 K 50
現在、日本工業規格の「物体色の色名」では、
英語のグレイに対応する無彩色の日本語の基本色名として
灰色を採用していますが、この色名はグレイのように
1000年以上も昔から使われていた名前ではありません。
これが一般に使われるようになったのは比較的近代に
なってからのことらしいです。

グレイ
C 0 M 0 Y 0 K 75
グレイには今は2つの綴りが使われています。
実際の使用状態には殆ど変わりはないそうですが、
イギリスではeと書くのが普通で、アメリカでは
繊維業界ではeと綴りますが、塗料など顔料を主とする業界では
aを使う場合が多いといいます。
また19世紀にはgreyというのは、何かの色味が感じられるグレイで、
grayは完全な無彩色のグレイのことだといいます。
しかしこんな区別は殆ど意味がないので、現在はどちらも
グレイの色のことになっています。
英語では8世紀以前から用いられていた基本色彩語のひとつで、
白と黒との間に感じられる一連の色を表すのに用いられるのが普通です。

鼠色(ねずみいろ)
C 0 M 0 Y 0 K 78
起源が判然としない灰色に比べれば、鼠色の始まりは
江戸中期の頃ということがわかっています。
茶と並んで当時の庶民大衆に最も愛好された流行色でした。
混じり気のない鼠という意味で素鼠(すねずみ)ともいいました。

涅色(くりいろ)
C 62 M 62 Y 62 K 54
黒という言葉の語源は暗ではないかという説もありますが、
黒土などの「くり」であろうという推測もあります。
この涅は、川底などに堆積している黒土のことで、
古代の原始的染色では、この黒土に布や糸を浸して着色することが
行われていたそうです。
ことによると、これが日本の墨染の始めだったかもしれません。

アスファルト
C 60 M 80 Y 72 K 42
アスファルトは1922年にできた新しい色名ですが、
この同種の物質ははるか昔から知られていて、
色の名前としてもいろいろな名称で呼ばれていました。
日本でも天然アスファルトは瀝青(れきせい)の名で知られています。

トープ
C 70 M 85 Y 100 K 47
トープとはモグラのことです。
そしてこれはフランス語です。
起源は19世紀。
この色名はそれ以外は何もわかっていません。

憲房色(けんぽういろ)
C 50 M 50 Y 50 K 68
室町時代に足利将軍の剣術指範であった京流の達人、
吉岡憲房が始めた染色の暗褐色が憲房色といわれました。
技術特許も新案登録もなかった時代に、染色の名前に
個人名が付いているのは昔ではきわめて珍しいことです。

モス・グレイ
C 23 M 6 Y 42 K 50
苔のような緑色を表すモスは、この場合はグレイの修飾語になっています。
モス・グリーンも一般に渋い黄緑色のことですが、それがグレイの形容になって、
いっそうくすんだ色のことになっています。
くすんだ黄緑みの灰色をあらわすモス・グレイの色名は1902年にできたものですが、
これと全く同じ色が、1905年にはオールド・モス・グリーン(old moss green)と
呼ばれるようになるので、この色がグリーンとグレイのどちらの名前であってもいいような、
ごく彩度の低い色であることがわかります。

利休鼠(りきゅうねずみ)
C 35 M 10 Y 30 K 50
北原白秋作詞の「鳥の雨」に「利休鼠の雨が降る」とうたわれているので、
この色名は今でも有名です。
利休は、茶葉の連想から、色名では緑身のあることを形容するので、
この色名も緑みの鼠色をさします。
これは後世の人間が勝手に名づけたもので、江戸時代から
風流で高尚な色というつもりで使われたらしいです。

鈍色(にびいろ)
C 20 M 10 Y 15 K 60
この色の染色についてはいろいろな説がありますが、
薄墨染に青花(露草)を混ぜたような青みの灰色のことだったようです。
「にぶいろ」ともいいます。
喪服などに用いられた凶色とされていた色でもあったので、
今はまったく記録の中の色名になってしまいました。

鉛色(なまりいろ)
C 25 M 16 Y 13 K 60
鉛はかなり古い時代から使用されていた金属で、
その酸化物は顔料として知られていました。
現在鉛色という色名で呼ばれる色は、
表面が酸化してやや黒ずんだ状態の金属鉛の灰色のことです。
この金属が非常に重いことからの連想なのか、
雲が低く垂れ込めた息苦しい曇り空の色の形容によく使われます。
また、顔色が悪いことの表現になったりもしています。

黒橡(くろつるばみ)
C 20 M 12 Y 7 K 85
橡はクヌギの実であるどんぐりの古名で、
この実のかさを煎じて鉄媒染で染めると黒橡という色になります。
墨染というのはおおむね黒橡のことだったようです。
この色は、古代の衣服令では家人奴婢が着る色とされていて、
あまり高い身分の人が用いる色ではなかったそうです。

チャコール・グレイ
C 60 M 60 Y 38 K 70
チャコールは木炭のこと。
消炭色(けしすみいろ)という色名は、このチャコールグレイの訳語では
なかったらしく、日本の染職人が考えた暗い灰色の名前だったようです。
消炭鼠、消炭黒ともいいます。
英語でもチャコールグレイとチャコールブラックがあり、
どちらも同じ色だそうです。

ガンメタル
C 72 M 80 Y 50 K 60
オフ・ブラックに属する暗い灰色の色名として、
英語では比較的よく知られているようで、
色彩辞典には太い大文字で記載されています。
しかし、この名前の実態はすでに歴史的記念物になっています。
ガンメタルとは、銅と錫などで作られた合金のことで、
昔は火砲の砲身をつくるために用いられた金属の名前です。
日本では砲金といわれています。
この色名は1870年代から使われ始めたものです。

フリント
C 86 M 85 Y 85 K 30
昔は日本だけでなくどこでも、火を起こすのに火打石を使いました。
フリントはその石のことで、暗灰色の石英です。
色名になったのは古く、遅くとも11世紀以前には黒に近い
グレイの名前として通用していたらしいです。
最初はフリントグレイで、1925年にただのフリントになりました。

墨色(すみいろ)
C 10 M 10 Y 10 K 100
油煙や松の根を燃やした煤を膠で固めたものが墨で、
これを硯ですった黒い液も墨といいます。
それで紙に書画を書くと、その色が墨色ということになります。
「ぼくしょく」ともいいます。
ほとんど炭素そのもののため、当然色は黒になります。

レイヴン
C 90 M 100 Y 0 K 90
日本の烏はたいてい中型の烏で、英語ではクロウ(crow)、
もちろん色名としては黒のことで、1806年から使われています。
ところがもっと古く、1600年頃からレイヴンという
黒の色名が知られていて、こちらは大型の渡り烏のことをいいます。
漢字で鴉と書くのがレイヴンのことらしいです。
濡れ烏という日本語の色名でも紫みの黒のこととされていますが、
レイヴンもクロウもヴァイオレットトーンのある黒のことだといいます。
烏の羽毛に紫みの光沢を感じるのはどこでも同じらしいです。

濡羽色(ぬればいろ)
C 90 M 100 Y 20 K 90
寄席の講談や落語で美人の決まり文句になっている、
「髪は烏の濡れ羽色」というのは、艶のある美しい黒髪のことで、
本来、黒の色名です。濡烏ともいいます。
もともと濡色という表現がありました。
土も石も草木の緑も、雨にぬれると見る見るうちに色が
濃くなり暗くなります。そんな色が濡色です。
本来、黒い烏が雨に濡れればもっと黒くなるというわけです。
濡烏は紫みのある光沢を持つ黒のことだといいます。

アイヴォリー・ブラック
C 22 M 30 Y 20 K 96
紀元前350年頃、アレクサンダー大王の宮廷画家アペレスが、
象牙を焼いて黒色絵の具を作ったのがアイヴォリーブラックの起源と
されています。
英語の色名になったのは1634年というから、
油絵の具として普及するまでにずいぶん長い歴史があったというわけです。

漆黒(しっこく)
C 70 M 50 Y 50 K 100
漆器のことを英語でジャパンというように、
日本の代表的な工芸品である漆器は、17世紀には既に
ヨーロッパ諸国でも珍重されるようになっていました。
その黒塗りの漆器は、深みのある美しい光沢を持った黒色になり、
黒の中でも最高の黒になりました。
この黒が漆黒です。