食品添加物はさまざまなものに使われていますが、その分、事故も多数起きています。本稿ではその事例の一部を紹介します。
一つめは、1955年に起こった「森永ヒ素ミルク事件」です。この事件は、近畿~中国地方を中心として、赤ちゃん用の粉ミルクを飲んだ子供が発熱や下痢などの症状を訴えたものです。事件の原因は、粉ミルクに入っていたヒ素です。粉ミルクのph調整や固結防止に使用されていた第2リン酸ナトリウムの中に、ヒ素化合物が混ざっていました。当時は第2リン酸ナトリウムが食品添加物ではありませんでした。そのため第2リン酸ナトリウムについての法令上の規制がなかったことが最大の原因といえます。
二つめは、「甘味料ズルチン事件」です。この事件の原因は、戦後の食糧不足で家庭に普及した、甘さが砂糖の200~300倍もある甘味料、ズルチンの大量使用、および子どもが直接口にいれたことです。中でも1947年と1963年は子供が大量に食べたことによる死亡事故が発生しました。この事件をきっかけとして、1968年にズルチンの使用は禁止されました。また、「食品添加物公定書」」という食品添加物についての規制法が施行されました。現在では、食品添加物の規制法が多く存在します。
1880年に政府は、鉱物性染料などを食品の着色に使用することの規制を始めました。それ以降、有害・有毒な添加物のリストを公表してその使用を禁止する、ネガティブリスト方式が明治~昭和初期まで採用されていました。
第二次世界大戦の2年後の1947年に食品行政の基本である食品衛生法が施行されます。その中で、原則として添加物の使用を全て禁止して、国が安全であると判断したものをリストとして公表し、それらの使用を認めるというポジティブリスト方式が取られました。 食品添加物は2018年9月現在、455種目あります。これらは沢山の人の努力によって私たちの食べ物のなかでひそかに役割を果たしているのです。