宝くじを選んだ場合


驚くぐらいに、何もなくなった。

最初はたまたま運が悪いくらいにしか思っていなかった。むしろ三億は当たるのだから大成功だと。
正気になればとんでもないことだとわかる。

五億に対する三億なんてたったの六割だ。半分と少し回収できただけに過ぎない。
それに気づかない俺はずるずると宝くじを買い続けた。次こそは一等が当たるにちがいない、次こそは……と。
こんなに枚数を買って当たらないはずがないとそう言い聞かせた。

年末ジャンボの一等は七億。しかしよく考えれば、それは2000万分の一の確率だ。12回五億をかけて一回当たるような確率。
六十億資産があってもプラスになるのはたったの一回だ。だが、一度こんなことに持ち金を溶かす生活を始めればもう後には引けなかった。

意地とプライドだけで宝くじを買い続ける。自分でもばかばかしいとわかってはいたが、ここでやめればそんな愚かなことに金を使った事実と向き合わなくてはならない。あまりにもむごすぎる。でもここで取り戻せばそんなことはない。儲けることができたと胸を張れる。そう言い聞かせてきた。どうしてこんなことになったのだろうか。

五億は当たった。でも五億が当たったことがいかにすごいかを分かっていなかったのだ。自分は特別な運を持った人間だと過信し、五億のすべてを失った。
宝くじは、だからこそ、あんな額を払ってもなお利益を出して続いているのだということに、俺はもっと早く気付くべきだったのだ。

【宝くじルート 完】最終所持金 0円

宝くじ解説

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