1-4. 力の合成・分解
先生 これで力の表し方はわかったね。それでは、一つの物体に二つの力がかかった場合はいったいどうなるのだろうか?
一弥 ……力の方向にもよると思います。
先生 うん、そうだね。
先生 では質問。次のように、物体に二本のひもをつなげてそれぞれ引っ張ったとき、物体の受ける合計の力はどう表せるかな?
QUESTION

(1)左右から同じ大きさの力F1F2で引く場合

(2)右側一点から異なる向きにF3F4で引く場合

(3)左右から異なる大きさの力F5F6で引く場合

柚莉亜 (1)は両側から同じ力で引っ張ってるんだよね。
一弥 ……となると、身動きが取れなくなりますね。
先生 その通り、(1)のように左右から同じ大きさの力を受けると、それぞれが打ち消しあって結局物体は動かない。
このような状態を"力がつりあっている"という。
それでは(2)の時はどうだろう。
一弥 ちょっと難しいですね……。柚莉亜さんはどうです?
柚莉亜 ええっ!
……えっと……先生、わたしもわからないです。
先生 図を見てみよう、このとき物体が受けている力はF3F4の2つだね。
この合計は『F3F4』と表すことが出来るんだ。
柚莉亜 矢印を足すんですか?
先生 そうなんだけれど、そのまま足すわけには行かないんだ。さっき方向によるって言ったね。
力の大きさはバネばかりで計ることが出来る。
バネばかり このはかりを使って実験をしたので、その解説を見てほしい。
先生 ベクトルの足し算の方法はとても簡単で、ただ向きを変えずにずらして、継ぎ足せばいいだけなんだ。
柚莉亜 向きはそのままで、スライドさせて……。
先生 そうそう。
先生 このとき、作用点とベクトルF3、『F3F4』、F4、 それぞれの先端を結ぶと平行四辺形になっているので、この足し算の方法を平行四辺形の法則と呼んだりもする。
一弥 平行四辺形ですか……。僕はそう考えたほうが理解しやすいです。
先生 そのやり方は(3)も同じで、次のようにするといい。
先生 さて、ここで注目。このように作用線が等しいと、向きが等しい時はベクトルの大きさ(矢印の長さ)を足し算、 向きが逆の時は引き算というように"大きさだけで計算が出来る"んだ。
このように計算してみた結果が0になると……
一弥 どうなるんです?
先生 ……実は(1)のつりあっている状態なんだよ。
そして、力のベクトル(大きさと向きを持つ量)を足し算することを『力の合成』、出来た力のことを『合力』というんだ。
柚莉亜 (3)は右のほうが力が強いから、物体は右のほうに動いていくってことなんですね。
先生 そのとおり。
先生 さてここで逆を考えてみよう。二つの力は合成して一つの力として表すことが出来た。
……と言うことは、一つの力を二つの力を使って表すことが出来ることになる。
そしてその二つの力の条件は、平行四辺形の法則のとおり。
一弥 さっきのアレですね。
柚莉亜 つまり、一つの力を分けて二つにしたときも、平行四辺形にして表すことができる、ってことなんですね。
先生 そう。つまり、何通りにでも表すことが出来るんだ。
こうして一つの力を二つの力を使って表すことを、『力の分解』という。
そして、この『分解』を使うと力をとっても便利に扱うことができるようになるんだよ。
まとめ

・二つの力は平行四辺形の法則を使って合成することが出来る

・二つの力の作用線が同じ場合は、大きさの足し算引き算で合成できる

・合成した結果の大きさが0の時、物体が受けている力はつりあっているという

・力は、平行四辺形の法則を使って分解することが出来る

先生 それでは力の扱い方を便利にする分解の方法を学んでみよう。

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