■文字の誕生

シュメールの粘土板

次第に人類は絵文字(ピクトグラフィー)を粘土板に刻むことを行いました。筆記の道具としては葦の先を尖らせたもの(=尖筆)が使われていました。

その中でも最古のものは紀元前40世紀頃のもので、ユーフラテス川下流のウルク(イラク)で見つかりました。この地域はメソポタミア文明の栄えた地域です。

会計のため(当時すでに経済が複雑であった)に書かれたもので、1500種にも及ぶ複雑な絵文字が用いられ、シュメール語に対応したものでした。

▲初期の絵文字は絵文字が対象そのものを示し、それを理解した上で発音にいたる。

(※例は絵文字・発音ともに架空のもの)

文字の抽象化

やがてそれら”複雑な”絵文字が簡略され、抽象化されました。

▲抽象化した絵文字は直接発音にいたる。(※同上)

表現の多様化

また、より詳細な事柄を伝えるために、新しい手段が必要とされました。

そのため考えられたのが、”ひとつの絵文字で異なった物事を記す”方法です。

▲関連する語を絵文字と結びつける。

また、それによって絵文字を組み合わせることも可能となりました。

▲意味を足すことで表現のバリエーションが増える。

しかし、これではこれらのルールを覚えている者しか情報を読み取れないという問題が起こりました。(ここでいうルールとは、現代の読み書きのルールではなく、上の図のようなルール(規則性)をたくさん覚えているという意味です。)

体系的音標綴字法(システミック・フォネティシズム)

そこで発明されたのが、この体系的音標綴字法です。これは少しややこしいのですが、象徴の文字と発音を対応させて、体系的に統合させるということです。つまり、今まで生産された絵文字を象徴的な「記号」とし、それぞれに発音をあてて、体系化したのです。

▲アルファベットにたとえたときの例

文字の誕生

紀元前3500年頃(諸説あり)、こうしてメソポタミア文明において人類史上最初の文字「シュメール文字」が開発されました。これならシュメール語を理解できる人なら「話し言葉」と同じように文字を読むことができるようになったのです。文字は人気を得て、またたくまにインダス川流域からナイル川流域まで利用地域が広がりました。また、現在私たちの使用している文字までのすべての文字はここから派生したと考える説もあります(※諸説あり)。ここから文字の歴史は始まるのです。

最初の文字の開発は進化によってなされると誤解されがちですが、実際は必要に応じて突発的にうまれたものだったのです。

▲シュメール文字