■文字の広がり

シュメール文字は近隣諸国へ広がり、やがて続々と世界規模で文字が発生していきます。

楔形文字と文字の淘汰

こうして誕生したシュメール文字は「楔形文字」と呼ばれます。楔形文字はメソポタミア文明を支える文字となり3000年以上にわたって使用されました。

次第に楔形文字は簡略化され、アッシリア文字やペルシヤ楔形文字などが生まれました。こうして文字はそれぞれの地域や時代において、より利便性の高いものへ発達していくのです。それは決して自然に変化するものではなく、人間が必要に応じて変化させているのです。

しかしこの楔形文字も、アッシリア帝国(?〜紀元前609)下ではアラム文字の発達により、姿を消してしまいます。このように数々の文字が生まれ、必要のなくなった文字は捨てられてしまうというというのが文字の歴史ではないでしょうか。

 

▲文字の歴史の基本的な流れ

世界での文字の発生

この楔形文字(シュメール語)の発生につづいて、世界各地でさまざまな文字が発生していきます。世界史上誕生したすべての文字の基軸となった文字です。

ヒエログリフ(古代エジプト)

数ある歴史的な文字の中でも特に有名なものが「ヒエログリフ」です。楔形文字が開発された約500年後にあたる紀元前3000年頃に古代エジプト文明において発生しました。ヒエログリフの起源ははっきりとしていません。あくまでも楔形文字の影響を少なからず受けているという学者もいますが、完全に独自に生まれた物だと主張している学者もいて、研究が進められています。この時期から、文字と文字を組み合わせて漢字の部首のように文字を作る仕組みが発達してきたと考えられます。

前述の通り、文字は文明を支えるのに欠かせないものとなっており、エジプト王朝もこの文字を大変重宝しました。

▲ヒエログリフ

エラム文字(古代イラン)

上のヒエログリフと同時期にイランでもエラム文字と呼ばれる文字が発生しています。これは楔形文字の影響を受けており、楔形文字の派生であると考えられています。

▲原エラム文字

漢字(中国)

おそらく世界史上最も特異な文字である「漢字」が生まれたのはこれよりしばらく後の紀元前13世紀頃だといわれています。現在発見されている最古のものは「亀甲獣骨文字」ですが、これは私たちでも読めそうな文字が並んでいます。漢字もまたその起源がはっきりしておらず、その発生時期の遅さからも、楔形文字の影響をどこかで受けているのではないかという見方もあります。

インダス文字(インド)

インダス文明では、紀元前2600年頃にインダス文字が使用され始めました。ここから派生した文字もたくさんあるので歴史的には重要な価値を持つのですが、残念ながら未解読のため詳細は不明です。

▲インダス文字

それぞれの発展

上にあげた他にもいくつか文字の起源となる文字が世界で少しずつ生まれました。これらが幹となり、我々の使用する文字の土台になったのです。

▲文字の系統を大きく分けて整理したもの。文字のつながりがよく分かる。

(スティーヴン・ロジャー フィッシャー『文字の歴史』2005,研究社 より作成)